【怪奇ファイル011】呪いのワラ人形により一家崩壊した話

　その日も我々4人はパチ屋の行列に並んでいました。たまにはラーメン屋さんにも並んでみたいものです。もうずっとパチ屋の開店前と閉店後しか食事をとっていません。私も行列が出来るほど美味しいものが食べたい。

　そういえば大学生の頃はよく飲食店に並んでいました。だってお昼休みの時間が決まっているから。吉野家でさえ行列でした。もういっそうのこと吉野家でもいいので行列に並びたいです。

　と言うとでも思ったか吉野家め。そんな一時的な感情で無意味な行動をとっていたらギャンブラー失格です。アツくなって投資がかさむのが一番オーソドックスな負け方だと思います。

　真のギャンブラーは負けているときほどクールに立ち回るもの。美味しいものが食べられないなら安いものを食べる。時間が出来た瞬間に有名店で高い料理を食べるのだ。

　少ない時間で少しでも美味しいお店を探しいたら、値が張るだけで大したことがないお店しか見つかりません。ハズレの連続で後悔しっぱなしとなるでしょう。パチ屋の閉店後に開いている美味しいお店などない。

　それはまるでパチスロです。設定がいい台に座った時に当たりを狙って全ツッパ。設定が悪いときはクールに去る。決してアツくなってはならない。続行してもハズレの連続で後悔しっぱなしとなるでしょう。

　という理論を私は相棒の二人に説明していました。なぜなら昨日は二人とも10万負けたからです。アツくなって全ツッパしてしまいました。何を隠そう。私も全ツッパしました。7万負けです。

　だから反省会をしています。こうやって毎回反省会を開くことが次の勝ちにつながるわけです。そして昨日のMVPの私が司会です。なんとかそれっぽいことを考えて説教しているところです。

　するとパチスロは打たないけどなぜか一緒にパチ屋の行列に並んでいる仲良しの花売りの娘のイライザが「アンタも負けたんでしょ？」と言いました。「アンタもクソ負けでしょ？」と言いました。

　痛いところを突かれました。私の心にロンギヌスの槍が刺さります。キリストを処刑した神殺しの槍です。つまり人間の私には耐えられない代物でした。死んじゃうかもしれない。ヒドイ女だ。

　すると相棒の一人のダンキチが’「これがオレたちのルールだ。女子供は黙ってな」と言いました。私をかばうなんて珍しいことです。嬉しくて心臓が止まりました。そして私は死にました。

　それから三日後。無事に心臓が動き出して私は生還しました。

　日を改めまして。その日も我々はパチ屋の行列に並んでいました。たまにはラーメン屋さんにも並んでみたいものです。もうずっとパチ屋の開店前と閉店後しか食事をとっていません。私も行列が出来るほど美味しいものが食べたい。

　だから旅行でもしようかしら。海が見える温泉宿に泊まって美味しいお魚が食べたいです。何を隠そう。実はわたくし。焼き魚が好きです。お肉も好きですが焼き魚が一番好きです。

　でもホントは場合に寄ります。お肉は一緒にご飯が食べたいです。お腹が空いているときに無言で大量にパクパク食べたい。焼き魚は一緒にお酒が飲みたいです。時間をかけてみんなとワイワイやりたい。

　だからみんなと海が見える温泉宿に泊まって焼き魚が食べたい。これが結論です。さっそく提案してみようと思います。幸い仲間は全員パチ屋の行列に一緒に並んでいます。

　だから言います。この説教が終わった後に。私は現在説教を食らっている途中でした。なぜなら前日に10万負けたからです。アツくなって全ツッパしてしまいました。

　するとイライザが「アンタまたクソ負けしたの？　学習しないわねっ！」と言いました。「どうせ今も違うこと考えているんでしょ？　また同じことやりそうね」と言いました。

　痛いところを突かれました。図星です。私の心にグングニルの槍が刺さります。北欧神話の最高神オーディンの槍です。決して的を射損なうことなく、敵を貫いた後は自動的に持ち主の手もとに戻る槍です。

　だからグングニルの槍は私を貫いた後にオーディンの手元に戻っていきました。とはならず。飛び立つ槍をイライザがパシってとりました。運動神経よくてビックリ。活発な娘だとは思っていたけど。

　そしてイライザは懐からワラ人形を取り出して「セクハラ店長死ね！」と言って壁に突き刺しました。そして槍は自動的にイライザのもとに戻ってきました。グングニルの槍の所有者は今日からイライザです。

　ちなみに後日談を先に書きますと。セクハラ店長はその日。階段から転げ落ちて右足を骨折しました。そして会社業績が悪化して社長の脱税がバレて会社が倒産しました。

　さらに息子が飲酒運転でバイクで人をひいて慰謝料が2憶で刑務所入りです。さらに娘がカード破産してクスリに手を出して精神科に入院しました。一家崩壊。嫌な事件でしたね。

　でもそんなことはどうでもいいです。ようやく説教が終わったのでさっそく旅行の提案をしました。みんな結構アクティブな性格なのできっと喜んでくれることでしょう。今から旅行が楽しみです。

　すると「お前反省してないだろ」と言われました。まさかの展開。でもそう言われるとそんな気もする。説教終了直後に旅行の提案をするなんてどうかしてます。

　つまり。私の提案は却下されました。もう少しで美味しいお魚が食べられるところだったのに。口元まで箸を持ってきていたのに。直前で猫がかっさらっていきました。

　ムカつくから私の比喩表現に登場したこの猫に名前を付けてやろうと思います。変な名前を付けられて一生後悔するがよい。今の私たちにできる小さな反抗です。

　そしてその名前はズバリ『Kera-Ma-Go』です。moonというゲームの中のアイドルが歌う曲名です。読み方は多分『ケラマゴ』です。英語ではないはず。意味もないです。つまり意味のない名前を付けてやったぜ。

　「今日からお前はケラマゴだ」と言ったらケラマゴは「にゃー」と言いました。納得してくれたようです。理解が早くて助かります。

　その夜。具体的に言うとパチ屋の閉店後。私はまだ美味しいお魚を諦めきれずにいました。そのときです。ランコが「なんか食って帰ろうぜ」と言いました。そして電話でイライザも呼ぶみたいです。

　お分かりでしょうか。これはチャンスです。私が『みんなとワイワイ美味しいお魚を食べたい』と思っていた矢先にこの提案です。こんな偶然あるのでしょうか。運命かもしれない。

　するとダンキチが「この時間なら焼肉だな」と言いました。そしてランコも「焼肉屋は遅くまで開いているからな」と言いました。何ということでしょう。あっという間にお肉に2票入ってしまいました。

　急いで私は「お魚！お魚！」と言いました。2回言ったので2票入ってもおかしくありません。これで勝負が分からなくなりました。あとは遅れてやってくるイライザに運命をゆだねることとなります。

　するとダンキチが「2対1で肉だな」と言いました。そしてランコが「先に店に入ってようぜ」と言いました。つまり私のお魚連呼はカウントされませんでした。私の負けです。

　しかし諦めるのはまだ早い。「イライザがお魚を食べたいって言うかもしれない……」とボソッとつぶやきました。名付けて『ボソッと作戦』です。こいつらノリがいいので雰囲気を出すと乗ってきます。

　そしたら見事反応アリ。肉屋へ向かう二人の足が止まりました。そして振り返ったランコが「お魚って言うな。魚と言え」と言いました。そこかよ。

　やはり私の負けです。観念して肉屋に行こうとしたその瞬間。私が脳内で飼っている猫のケラマゴが「にゃー」と鳴きました。でもボク、ネコ語分かんないです。無視して先へ進みます。

　とはならない。なぜなら表情で言いたいことが分かったから。言葉は分かりませんが顔でビビッと来ました。ケラマゴはネコ語で「お魚が食べたいにゃー」と言っています。

　なので「お魚って言うな。魚と言え」と言ってやりました。そして肉屋へ向かいます。と思ったその瞬間。ビビっときました。私は気づいてしまったのです。2票目が入ったことに。私とケラマゴでお魚が2票になりました。

　すぐに伝えないと。勝負が分からなくなったことを。肉屋に入る前に。その瞬間。ランコが電話を切って「イライザも焼肉でいいってさ」と言いました。勝負アリです。3対2で焼肉の勝ち。

　その後。焼肉屋のメニューにお魚があったのでお魚を焼いて食べました。ケラマゴにもあげました。お肉も食べたよ。ミノとハラミとギアラ。