バブルの頃#173:SE小僧の感性

ソフトウェア開発の会社に転職して企業文化の違いを感じたのは、高度情報技術者集団の下部組織である小僧たちの感性でした。日常の言行は、ロジックとしては間違いないのですが、どうも違和感があります。

会社が初めて、新規顧客開拓を目指して大きなイベントを開催したときのことでした。400万円ほど費やして、500人のお客さまをご招待、米国から著名な情報工学の博士を招聘してホテルでセミナーを実施しました。株式公開に向けた、事前IRの第一弾でもありました。集客、セミナー内容、接遇など問題なく終了しました。ところが、大きなそして意外な落とし穴がありました。

事前IRですから、当日のセミナー風景や、主要なお客さまと博士とのスナップ写真などをプレスリリースするのですが、当時はまだデジカメがメガピクセルではなく、とても記録写真にはならない解像度でした。以前からある会社の銀塩カメラを使って撮影をしました。その撮影を担当した小僧の話が今回のテーマです。

この子は、一流大学の理系を卒業し社歴3年で、経営陣は同期の中でトップクラスの評価をしています。若手が担当する社内報の編集委員のリーダー格で、本人は今回のイベントでは、記録係としてカメラを担当しました。2日待っても写真が届かないので、本人に問い合わせたところ、全部露出不足で、修正を試みたが記録写真として使えないという返事でした。

2日もたつと、営業部門からはお客さまと博士のツーショットの写真を要求されるし、経営陣からは、プレスに写真をまだ渡していないのかというチェックが入るという状況です。仕上げの段階で大失策となりました。

ところが、記録を担当した小僧はお咎めなし。本人のコメントは「会社のカメラが壊れていた。修理が必要。」会社が提供したカメラが壊れていたので、それを知らずに使った小僧には過失はないということです。そして、壊れたカメラを提供した総務と、それを使うように指示したイベント実行委員会の責任者が責めを負いました。

もちろん、この子は大人たちにごめんなさいの一言も発せず、日常業務に戻りました。正しい。小僧はこれを使えと渡されたカメラのシャッターを押しただけです。大人としては、小僧に何を言ってもだめな写真は良くならないので、せめて一言「ごめんなさい」と言われたかったということです。

反省。
記録用機材はダブルで用意し、事前に動作確認をすること。ごめんなさいが言えない小僧や小娘には、仕事を任せないこと。

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