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アニーはどこにいった
『アニーはどこにいった』C.J. チューダー
「陰気で、冷淡で、愛想に欠ける。閉鎖的でよそ者を歓迎しない。—————町にやってきたものを睨みつけ、去るときには憎々しげに地面に唾を吐く。」
そんな片田舎の元炭鉱町に、悲痛な過去を背負った男が戻ってくる。その目的は。そして、男が戻って来る直前にこの町で起きた痛ましい事件との関わりは。。。
最初の1ページまで最後の1ページまで、ぞわぞわと邪悪な空気が始終漂うエンタメホラーミステリー。
読み進むとなんとなくストーリーの軸は見えてくるのだが、それでもテンポ良く現れる謎や不穏な過去にぐんぐん引き込まれ、最後まで飽きない。
ストーリー展開の面白さに加えて作品の魅力を倍増させているのが、キャラクター造形がくっきりとした登場人物たち。主人公の男の愛想のかけらもないながらも人間味のある人物像をはじめ、同僚教師の女性や美人の殺し屋など、キャラクターが光る。
不穏な通奏低音と凄惨な残虐シーンにも関わらず、全体として軽く乾いたタッチを感じる。主人公と脇役(と思わせ重要なキャラクターだったりもする)達との軽妙なやりとり、また随所に散りばめられる主人公の厭世的な皮肉が良い味付けになっているためだろう。
スティーヴン・キングが「わたしの書くものが好きな人ならこの小説が気に入るはずだ」と賛辞を贈ったというが、まさに、スティーヴン・キングのホラーを読むようなドキドキゾワゾワ体験を約束してくれる小説である。作家本人がスティーヴン・キングの大ファンだということで、上質なオマージュ作品としても楽しめる。
キング作品と同じように、映像化にもってこいの作品。映画よりドラマ向けかな。