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下関国際 vs 富島 どこよりも詳しく見どころ解説

大会6日目 第4試合
下関国際(山口) vs 富島(宮崎)

ともに先輩の勇姿に憧れての甲子園
宮崎の剛腕に挑む甲子園経験者軍団

2018年の夏の甲子園、下関国際は甲子園で花巻東、創志学園、木更津総合といった強豪を次々に下し、準々決勝で日大三と接戦の末敗北。
一方の富島は好投手黒木を擁して2019年の夏に甲子園出場。初戦で敦賀気比に敗れたが清々しい姿勢は甲子園に爽やかな風を吹かせた。

そんな先輩の姿を見て入学してきた世代が両チームの3年生である。

下関国際は昨年のセンバツに2年生主体で出場、初戦で健大高崎に2-6で敗退した。その試合はスタメン9人中6人が2年生という若いチームだった。彼らは3年になり、最後の夏に甲子園に戻ってきた。スタメン全員がセンバツのベンチ入りメンバーという経験値が山口大会を勝ち進む原動力となった。

一方の富島は何と言ってもエース日高の投球が甲子園を手繰り寄せたと言っても過言ではない。3年前の甲子園に出場した先輩達にあこがれて入部した彼らは、甲子園で先輩達が行っていた「相手チームをたたえる姿勢」に共感し、相手チームの好プレイにも「いいね」と親指を立てて相手をたたえる動作を富島高校の伝統として根付かせた。

投手力

両チームともに好投手がいるが、その起用法は対照的だ。

下関国際はエースの古賀、ショートを守る仲井、背番号18の松尾の3人でマウンドを守ってきた。3投手ともに球速140キロ以上と力がある。投手出身で投手育成に定評のある塚原監督も自慢の3投手だ。こまめに継投するというよりは、完投能力のある投手が3人いるといったイメージのほうが正確か。準々決勝からの3試合を完投したショート仲井はMAX146キロの速球を武器に1試合平均9.36個と三振を奪える投手で、マウンドを降りた後の守備でもチームの中心だ。エースの古賀は145キロのストレートと同じ腕の振りでスライダー、チェンジアップを投げ分け、本格派というよりも打たせて取る投手というイメージが強い。3投手それぞれに甲子園経験があるというのも大きな強みだ。

一方の富島は、今大会注目の好投手・日高の出来がチームの命運を左右する。MAX148キロの速球が何よりの武器だ。ストレートの質が良く非常にノビを感じる。打者にとっては球速よりもさらに早く見えるだろう。同じ宮崎の都城高校で活躍したオリックスの山本由伸を彷彿とさせる安定したフォームで、5試合で四死球9と非常に安定感もある。またスライダー・チェンジアップ・フォークと多彩な変化球も武器だ。データ分析でも好成績をおさめており、今大会出場校中20イニング以上投げた投手の中で、WHIPS(投手総合指標・1イニング当たりに出す走者の数)は0.72と4位。K/BB(三振が取れる上にコントロールが良い投手を見る指標)は4.22と7位の数字を残した。データ上からも好投手の条件を満たしていると言えるだろう。

※出場各校のデータ分析は下記リンクをご参照ください
       ↓↓↓↓
セイバーメトリクスで戦力分析 打力編
セイバーメトリクスで戦力分析 投手編

打力

下関国際打線ははデータ上は際立った数字を残していないが、下級生時代から活躍した選手が多く残り、非常にバランスの良い打線といえるだろう。決して長打の多いチームではないが中軸の水安・賀谷・仲井は力のある好打者だ。また赤瀬・松本の1、2番は打率こそ低いものの2人で11四死球を選んだ選球眼が光る。5試合で9盗塁とデータ上は山口大会で機動力は目立たないが、数字に表れない好走塁も多い点は把握しておきたい。本来は足を使った攻撃が得意なチームである。少ない安打でも得点する野球が下関国際の最大の強みである。

富島は打線の中心も3番を打つエース日高だ。.467と高打率を残しており、長いリーチを生かして長打力もある。ただチーム長打率は出場校中ワーストの.368となっており、チーム全体としてはやや長打力に不安が残る。それだけに日高の長打力が大きな武器となるのは間違いない。富島打線で特筆すべきは1試合平均6個の四死球を選んでいる点である。エース日高の好投でロースコアの接戦が多かったが、勝負所で四死球で出た走者を進めて得点するケースが目立った。これは接戦を勝ち抜くうえで非常に重要なポイントである。大量得点を奪うよりも「勝負所できっちり1点を取りに行く野球」が富島のスタイルといえるだろう。

この試合のポイント

両チームを簡単に比較すると
 「投手力は互角、もしくはやや富島が上。
  打力は下関国際がやや上回る。」
といった感じか。

下関国際、富島ともに投手力が安定しているだけにロースコアの接戦が予想される。まず最大のポイントは試合にどう入り込めるか、投手・守備を含めた立ち上がりの出来である。大量得点は望めない可能性が高いので、立ち上がりの制球・守備の乱れで複数失点をおかしてしまう展開だけは避けたいところだろう。

富島はボール球の見極めで走者を出したい。それだけに下関国際投手陣はコントロール重視の投球ができるかがカギとなる。

下関国際は富島・日高の速球に力負けしないよう、コンパクトなスイングで低く強い打球を飛ばせるかが重要となる。富島バッテリーとしては変化球をうまく使い、ストレートで詰まらせてフライアウトを取る配球を心掛けたいところだ。

ロースコアの接戦が予想されるため、無駄な四死球・一つのエラーが勝負を分けてしまいかねない。特に富島・浜田監督は3年前の出場時に試合中盤エラーで失点を重ねた苦い経験もあり、気を引き締めて臨むだろう。

両チームともに県大会で接戦を経験しており、拮抗した展開の中でどう打開していくか、甲子園経験のある塚原・浜田両監督の采配にも注目したい。

甲子園ラボ


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