人形狩り人形と魔窟の主(#17)
(承前)
黒いワゴン車から降り立ったのは見覚えのある胡散臭い青年であった。同じビルに事務所を構える私立探偵(やはり家賃を滞納している)だ。
「よっ。人形使いさん、怪我は無いかね」
「何故あなたが此処にいる?」
僕は❝人形使い❞ではない。我が一族は十八世紀の神秘、機械人形に仕えることを存在理由とする……しかし説明している場合でもないから割愛する。
「何故って?管理人さんから頼まれたのさ。あんたらが途方もない戦いに巻き込まれているのが心配になったんだと。金にならない荒事はゴメンだが帰りの足ぐらいは用意してやっても罰は当たらないと思ったのさ」
そうだったのか。管理人さん、僕はあなたに助けられてばかりだ。
「ささ、四本足の旦那も早いとこ乗り込みな。さっきから包囲網を狭めようとしている盗掘家どもを蹴散らして自力で帰投できる余力があるなら話は別だがね」
「では大家のご厚意に甘えることにするか」
素直じゃないねえ、と探偵は呟く。
(続く)
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