人形狩り人形と魔窟の主(#18)
(承前)
来た時と同じように、黒いワゴン車は周囲の人間を蹴散らす勢いで急発進、そして急旋回。
「飛ばすぜ、ご両人」
運転席に探偵。後部座席を倒して確保された荷台には相棒。
必然的に僕は助手席に座ることになった。
「しかしな。あんたら、二人して遺跡荒らしの真似事かい?」
車内での会話───、正確には私立探偵の独り言は「鬱陶しい」の一語に尽きた。
「物理学者と、その助手なんだろ、なぁ」
ワゴン車は荒廃した灰色の市街地を走り続ける。
「朝からとんでもねえ騒音で目が覚めたぜ。あれも旦那の仕業なんだろ?」
この町の空は今日も灰色だ。
「うちのビルに、あんた方がやって来たときから怪しいとは思っていたが……」
相棒も黙り込んでいる。僕も口を開くべきではあるまい。
「何とか言ったらどうなんだ?日本語が分からないか?」
「私立探偵に話せるようなことは無いね」
「小僧、口の利き方に」
私立探偵は言い終えることが出来なかった。頭が弾けてしまったのだ。
(続く)
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