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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第13わ「アキレスの泣き所」

承前

掴まれた腕。凄まじい膂力で体を引き寄せられる。
吸血鬼の凝視。迫る犬歯。
事態を察した相棒が駆け出すのが見える。
佐々木に差し伸べる手に利き手を選ばなかったのは、こうなることを無意識に恐れていたのか。座り込んだ吸血鬼に覆いかぶさる形となる。
一秒後には俺の首筋に四つの牙が突き立てられるだろう。

「ARRRRRRRRGH!」

苦痛、或いは食事を取り上げられた獣の怒りか。
俺は突き飛ばされて自由の身となる。吸血鬼は側頭部を───、俺に撃たれた左耳を押さえている。
人間の血を吸うのも結構だが、前菜に銀の弾丸など如何かな?

「同胞、容赦はしません!」

俺と入れ替わるように前衛に出た相棒が、のたうち回る佐々木(に擬態した吸血鬼だろう)に馬乗りになると右、左とパウンドを繰り返す。
こっちは片付いたと見ていいか。怪物も食事の前には油断する。そして吸血鬼も耳の穴は無防備らしい。銀玉鉄砲の銀の弾丸でもヘボナの毒汁よろしく有効だと判明した。経験値だ!

続く

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