ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第61わ「地面のベッド」
俺と相棒は県庁の屋上から地面に向かって自由落下していた。殺すつもりの全力で抱きしめる。離れる時は、死ぬ時だ。
「嗚呼!もう!本当にどうしたら……」
相棒のブラウスを破って背中から黒い翼が生えてきた。コウモリのソレを人間大サイズにしたような立派な翼であった。いかにも吸血鬼の翼である。
「あなたって人は……いつもいつも!」
無論、背中から翼を生やすだけで空を自由に飛べるようならライト兄弟の名前も歴史に残ることは無かったであろう。瞬く間に、相棒の四肢が同じようにコウモリの翼に変じていた。
「見ないでください!……見ないで!」
相棒が六枚の翼で必死に羽ばたいて重力に抗おうとしている。だが十分ではない。背中から更に四枚の翼が生えてきた。更にこめかみからも二枚。
「もう地上です!歯を食いしばって!着地します!」
遂に運命の瞬間か。死ぬのは怖いし死を美化する気も無い。それでも後悔は無かった。俺は死に方を選べたのだから。
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