ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第62わ「物種」
肺の中の空気が全て排出されるような途轍もない衝撃と激痛。覚悟があっても痛いものは痛い。そして激痛は続いている。つまり、俺は生きているということだ。少なくとも、今のところは。
「だ、ダンナ、ご無事ですか……?」
地面から声が聞こえる。相棒の声だ。まさか大地と一体化したのだろうか。恐る恐る瞼を開くと、どうやら相棒の身体は俺の下敷きになっているようだ。冷たくて薄くて硬いから分からなかった。
「ぐぐ……すみません。十全な状態ならばダンナを背負って自宅まで一足飛び出来るのですが、太陽が空に昇れば体力を取り戻すのもままならず……」
どうやら相棒も死なずに済んだようだ。背中とこめかみから生えた翼も今は見る影も無い。翼に変じた四肢も既に元通りになっている。ただ、体力の消耗だけが深刻らしい。ならばどうするか。俺が背負って帰るしかあるまい。
「え?いや、あの、何です?自力で歩く体力ぐらいは残ってます。大丈夫ですから!」
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