ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第63わ「天秤の均衡」
自分で歩けると強弁する相棒の抵抗は弱々しく、俺に背負われる身体は羽毛布団のように軽い。
「その、この態勢は良くないと思うんですよ」
喋る元気は残っているらしい。それでも❝本選❞とやらが始まるまでに少しでも体力を取り戻してもらわないと困る。
「無防備なダンナの首筋が視界いっぱいに広がるとですね、こう……」
心理戦を仕掛けて来たか。確かに吸血鬼の牙は恐ろしい。しかし自分で決めたことだ。やると言ったら最後までやるのだ。
「……さっきのハントマン、薄汚いズタ袋を持っていたでしょう」
そうだな。鎧はピカピカと輝いていたから奇妙な組み合わせだなと思った。武器か消耗品が入っていたのだろう。
「匂いで分かりました。あの袋にはニンゲンが入っています」
それは、つまり……狩りの獲物を入れていたということか。
「いえ、パートナーのニンゲンでしょう。四肢を捥いで持ち運びやすくしていたようです。ただの輸血袋に手足は必要ないですから」
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