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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第60わ「終盤戦」

(承前)

「あと二秒です!いいんですか!?あと二秒しか猶予はありません!」

そんなことを言っている間に十秒はとうに過ぎているのだが。相棒の顔に僅かな焦りが窺える。付け入る隙はある。この駆け引きの主導権は俺にある。

「残り一秒です!私が一人で先に帰ったらどうなると思いますか?取り残されて、ここで働いているニンゲンに捕まれば親御さんにも学校にも連絡が行きます!警察も動くかもしれません!非常に面倒なことになると思います!いいですか!?今すぐ直ちに即座にこの場で首を縦に振らないなら一人で先に帰りますからね!」

屋上の縁に立つ相棒に近付くと、俺は全力で抱き着いた。俺の答えはこれだ、それだけ告げて俺は相棒と一緒に屋上から飛び降りた。

「ええー!?ちょっと、それは……!!」

失敗すれば単なる無理心中だ。しかし相棒とて命は惜しいだろう。つまり落下する直前に何らかの手段を講じる筈である。ついでに俺の命も助けてくれるに違いない。

(続く)

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