ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第10わ「いざ対峙する時」
(承前)
「……マンハントの気配が強くなりました。近いようです」
相棒の声で意識が現実に戻される。雑居ビルの屋上に立つ自分を認識する。無意識に時刻を確認する。0:11。現実逃避は数分で済んだらしい。人間狩りとの対面は近い。ここで待ち構えればいいのか?それとも気配とやらを探って打って出るべきなのか?
「気配を探るのは難しいですね。そういう技能に長けた同胞もいるのですが……」
おぞましい咆哮。そして耳を塞ぎたくなるような悲鳴。おそらくは、怪物と女性の。近隣住民がマンハントに襲われているに違いない!
「こうやって声の出処を目指すことになるケースが殆どですね。ささ、掴まってください」
つかま、え?どういうことなの……。何が起きたか理解する間もなく、俺の背中と膝の裏が相棒の細腕に抱きかかえられていた。
「下に参りまぁす」
俺を抱えた相棒が!屋上から!舞い降りる!自由落下の恐怖。迫る地面への畏怖。「頭身の毛も太る」とは、この事か。
(続く)
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