ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第9わ「待ち伏せ」
(承前)
雑居ビルの屋上。刺すように冷たい夜風、狂ったように赤い月。こんな夜は何が起きてもおかしくない。星の無い夜空、深夜零時。❝マンハント❞が目を覚ます時間だ。
「肩の力を抜いてください。❝ゲーム❞は早朝六時まで続きますので。ほらほら、紅茶でも飲んで落ち着きましょう?」
相棒の言うことも一理ある。水筒の蓋を受け取り、紅茶(※淹れたのは俺だ)が注がれるのを眺めながら深呼吸。一口すすって、更に深呼吸。緊張と弛緩の波が交互に訪れるのを自覚する。集中力は十分だ。
「このビルの利用者は既にゲームから❝除外❞されていますので巻き添えを被る心配はありません。ご安心を」
除外。せめて人払いと言って欲しかったが。誇らしげに胸を張る相棒を見ると、そんなことを言う気も消え失せた。我々ニンゲンは吸血鬼どものゲームの駒(トークン)でしかない、とは聞かされていたが。そうやって俺の両親も❝除外❞されたのだ。……どうか無事でいてほしい。
(続く)
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