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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第114わ「選ぶべき道は」

(承前)

インセンス❞はパートナーに対する切り札らしい。確かに❝ゲーム❞が進行すれば強力な銃火器を手にするプレイヤーも続出するだろう。吸血鬼でも戦力としての人間を無視できなくなるということか。

「そういうことではないです。パートナーと言うのは敵性ハントマンのパートナーのことではありません。私にとってのダンナのことですとも」

また相棒が要領の得ないことを言い出した。仮に俺が幼児退行したり発狂したり、もしくは判断力を麻痺させたりして、何か相棒にメリットがあるのだろうか?……メリットばかりじゃないか。

「ですです。好きな時に好きなだけダンナの血をご馳走になれますし、手足を縛って袋にでも詰めて放置しておけば、戦闘に於いてもダンナを守りながら戦う必要もありません。まさに一石二鳥。やらない理由がございません」

しかし、一回の❝ゲーム❞につき一度しか支給されないという❝インセンス❞は狂った俺を元に戻す為に使ってしまったのだ。現在のピンチを脱して将来のリスクも消えたのだから、まさに一石二鳥といったところだ。

「ですよね。ところで私の手元には『理性を消し飛ばすインセンス』『本能を破壊するインセンス』『人格はそのまま記憶だけを失わせるインセンス』が残っているのですが」

……何故?

「何故って、ヴェテランの私には❝インセンス❞を温存したまま終わった❝ゲーム❞が何度かあるので。ですけど今回ばかりは勝っても負けても私にとっての最後の戦いになりますし。この国には『宝の持ち腐れ』なる警句もあるでしょう?とりあえず、この場で試しに一つ使ってみようと思うのですけれど、どれがいいですか?」

ふざけるのもいい加減にして欲しい。全部イヤに決まっているだろう。

「手始めに記憶を手放してみては如何です?目の前で同級生を死なせた苦しみも、右目を手放す羽目になった後悔もスッキリ消えてなくなると思いますけど。それとも一気に全部イっちゃいます?」

(続く)


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