ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第38わ「自由の代価」
(承前)
「見たところ君はパートナーに一度たりとも血を吸わせていないね。それに❝初回サービス❞も利用していないじゃないか。彼女とは長い付き合いになるぞ?顔だって声だって、体型だって君の好きなように変えられるというのに、なぜ使わない?」
その答えならば既に出ている。
相棒を着せ替え人形にする気は無いからだ。
あるいは、着せ替え人形を相棒にする気は無いからだ。
どちらも同じことだが。
「それに……君には相当な❝点数❞があるのに、パートナーに何か気の利いた贈り物をしている様子も無いじゃないか」
武器は要らない、防具も着けたくない。
そんな相棒に何をプレゼントすればいいのだろう。
「そんな君が、自分のパートナーを大事にしないニンゲンが、ハントマンに対抗する為の武器を求めて聖域を訪れた。私は心配だよ。君のパートナーは私の旧い友人でもある。君の銃口が、いつか彼女に向けられる日が来るのでは無いか、とね」
俺が相棒を裏切らないという確証が得られるまでは銃器を与える気は無い、ということか。これ以上は時間の無駄のようだ。家に帰ろう。人間狩りが蠢く時間が訪れるまでの間、少しでもリラックスして過ごす方が有意義だ。
「……考えを改める気は無いようだね」
凄まじい殺気。それがどうした。
何が❝ゲーム❞だ。
何がハントマンだ。
うんざりなんだよ。相棒の言葉を額面通りに受け取るならば、魔女が指を鳴らせば俺の首は飛ぶらしい。
ならばそれでいい。それで何もかも終わらせてくれればいい。
「そんなことはしない。そんなことをしても楽しくないからね。ゲームマスターの楽しみは───、調子に乗った家畜を大人しくさせてやることさ」
高らかにシスターの指が鳴る。一瞬、右目に激痛が走る。それだけだった。何も起きない。───俺の右目が床に落ちたこと以外は。こぼれた右目が傾斜も無い床を転がる、転がる。転がった先に満面の笑みを浮かべたシスターが立っている。俺の右目が潰された。
(続く)
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