音楽エッセー#13青い光の夜
青い光に包まれた夜の公園
光がゆっくり輝き出して、またゆっくり消えていく。生き物の深呼吸のよう。
光は近くにあるように見えたり遠くにあるように見えたり。
遠い光に向かって歩いてみる。遠いはずなのに、すぐに着いてしまった。
近い光に向かって歩いてみる。そしたら、なかなか辿りつけなくて足がもつれた。
青い光の大樹の前に立つ。
青い光を見つめながら、心の中でピアノをポーンと鳴らしてみる。
ドレミの何の音か解らないけれど。
ピアノの音は徐々に小さくなっていき、そして消えた。
公園を横切って歩いてみよう。
ゆっくり歩きながら、心の中でバイオリンを小さく鳴らしてみる。
細く、小さい音で。
弓が弦を擦る。長いため息のような。
青い光に包まれた世界。
思い思いに過ごす人々。
人を避けながら、ゆっくり進む。
通り過ぎる光。行き交う会話。
やがて、公園の出口に着く。
公園の外では、ぐるりの飲食店のネオンが眩しい。
いつしか、バイオリンの音は消えていた。
振り返って、公園の青い光と闇を見渡し、心の中で聴いていた音を思い出す。
夢を思い出すように。
耳鳴りのように響いていた音は、過去のものに変わっている。
青い光。そして青い光と共に、心の中で鳴り響いた音の手触り。
ああ。次に音楽を作る時、憧憬として思い出すだろうな。
そっと目を閉じ、光と音を心の引き出しにしまい、公園を後にした。
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