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Ellen Reid SOUNDWALK Kronos Quartet

Ellen Reid SOUNDWALKは、GPS(現在位置情報)を利用し、自然の中で音楽を楽しむパブリックアート作品として、アメリカ出身、ピューリッツァー賞受賞歴もある若き作曲家、サウンドアーティストのエレン・リードによってコロナ禍に立案・製作され、欧米を中心に数々の著名な公園(ニューヨーク・セントラルパーク、ロンドン・リージェンツ・パーク&プリムローズ・ヒル等)で実施されています。ご利用される皆さまそれぞれが歩いた場所や経路によって、ヘッドフォンやイヤフォンから聴こえてくる音楽が変化する、新しい音楽体験です。

心地良いアンビエント音楽が聞こえてきます。大気に充ちるEのコード。コーラスとシンバルのアクセント。
心地よいCDのジャケット写真が、ゆっくり動いているような感じがします。



電子音のパルスが次々と現れ駆け上がります。歩みを進めるとハーモニーもゆっくり変化します。



森の木陰の道を進みます。流れてくる音楽は、日向の広場での音楽と明らかに違います。
RPGのゲームの中にいる様です。


都会の生活には幾何学模様がたくさん。生楽器の音と電子音のコントラストもモダンです。
突然、チェロの力強いアグレッシブなフレーズが登場。意識が切り替わります。
Ellen Reidはカナダ生まれとのこと。鳥居はミステリアスでエキゾティックでしょう。
漢字、梵語、幟(のぼり)もミステリアスです。
パゴダ(仏塔)もミステリアスです。フルートのコーラスのハーモニーに、お琴が句点を打ちます。
見慣れた看板も、縁日のデコレーションも、新鮮です。
綺麗な夕焼けのグランドビューとなりました。オーケストラが全員で1つの大きなメロディを奏でます。
再び森に戻ります。音が少なくなり不穏なハーモニーが現れました。日没後の演出でしょうか。
再びスタート地点のエリアまで戻って来ました。再び心地よいEのコードが流れて来ます。
先ほど現れた不穏な響きもまだ小さく残っています。

今回体験した音楽が目指していたものは、音楽を超えた新しい総合的な感覚体験でした。池、蓮、ベンチの人影、散策の人影、街の灯、ビルの灯り、ビルのシルエット、上空の飛行機、ノイズ、会話の音、それらが耳から流れる音楽と溶け合い、映画のワンシーンを鑑賞している様でした。

この音楽体験を振り返って、以前私が、カルミナというユニットで「鳩市」というフリーマーケットで野外で音楽を生演奏させていただいたこと、また今年5月のアートイベントのクロージング・パーティでのDJ体験を思い出します。お客様は、飲んだり食べたり会話したり個別の行動をしながらも、全員が同じ空間にいて、共通して私の演奏を一斉に聴いていました。しかしこの音楽企画の場合は、ユーザーが全員上野公園というエリアにいるという点は共通ですが、個別に音楽鑑賞のモバイル端末を持ち(個別にヘッドホンを持ち)、個別の行動をすることで生まれる個別GPSデータよって、個別の音楽を鑑賞しています。その大きな違いが特徴的です。
現代音楽は、旧来の音楽とは異なる新しい音楽を模索しますが、その考察の延長には、聴衆のあり方、また聴衆同士の関係性のあり方の定義の見直しや、再構築が新しい切り口を切り開いていくかも知れません。


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