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介護福祉士国試対策(5)問題の出題形式

▼介護福祉士国家試験の問題文には、いくつかのタイプがあります。これを知っておくと本番で気が楽になると思います。なお、問題文のタイプ分けは私が勝手にしたものですが、特に奇をてらったものではなく、出版各社も同じようなタイプ分けをしています。

1.問題文の種類

▼すべての問題は5択で、問題文は「正しいもの」「適切なもの」「最も適切なもの」を「1つ選びなさい」もしくは「2つ選びなさい」という文章に統一されています。
▼近年は、専門用語に英語名称を追加したり、ルビを振ったり、わかりやすい表現を使ったりするなど、外国人受験者向けの配慮が充実しています。
▼さて、問題文には以下の各パターンがあります。

(1)通常問題:以下の2パターンがあります。

①名詞もしくはそれに近いものを選ぶ問題:
例)問題28 次のうち,眠りが浅くなる原因として最も適切なものを1つ選びなさい。
1 抗不安薬
2 就寝前の飲酒
3 抗アレルギー薬
4 抗うつ薬
5 足浴

②正しい文章を選ぶ問題:
例)問題16 社会福祉法人に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 設立にあたって、所在地の都道府県知事が厚生労働大臣に届出を行う。
2 収益事業は実施することができない。
3 事業運営の透明性を高めるため、財務諸表を公表するとされている。
4 評議員会の設置は任意である。
5 福祉人材確保に関する指針を策定する責務がある。

(2)組み合わせ問題:
▼2つのキーワードを横棒で結び、その組み合わせが正しいかどうかを問う問題形式です。
例)問題38 介護福祉職が行う身じたく・整容の支援と使用する道具の組合せとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ベッド上での口腔ケア ――― ガーグルベースン
2 浴室での洗髪 ――― ドライシャンプー
3 総義歯の洗浄 ――― 歯磨剤
4 耳垢(耳あか)の除去 ――― ピンセット
5 ベッド上での洗顔 ――― 冷水で絞ったタオル

(3)空欄埋め問題:
▼問題文に文章や法律の条文などがずらずらと書いてあり、ところどころが空欄になっていて、空欄にあてはまる単語を選択肢から選ぶという問題形式です。この問題形式は、第22回問題5で出題されて以降は出題されていません
例)問題5 社会保障給付費に関する次の記述の空欄A,B,Cに該当する語句の組み合わせとして,正しいものを1つ選びなさい.
 平成12年度と平成18年度の我が国の制度別社会保障給付費の構成比を比較すると,(A)は平成12年度50.1%,平成18年度51.4%となっており,最も高い割合で推移している.次いで高い割合を示している(B)も18.7%から18.6%とほぼ同水準で推移している.また,老人保健は,13.4%から11.6%とその割合をわずかに低下させている.一方(C)は,4.2%から6.7%と,その構成比を増加させている.
   A         B         C
1 年金保険 --- 医療保険 --- 介護保険
2 年金保険 --- 介護保険 --- 医療保険
3 介護保険 --- 年金保険 --- 医療保険
4 医療保険 --- 介護保険 --- 年金保険
5 医療保険 --- 年金保険 --- 介護保険

(4)短文事例問題:
▼事例文が比較的少なく、また一つの事例に対して1問のみが出題される問題形式です。
例)問題1 Aさん(78歳、女性、要介護3)は、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用している。72歳から人工透析を受けている。透析を始めた頃から死を意識するようになり、延命治療を選択する意思決定の計画書を作成していた。しかし、最近では、最期の時を自宅で静かに過ごしたいと思い、以前の計画のままでよいか気持ちに迷いが出てきたので、訪問介護(ホームヘルプサービス)のサービス提供責任者に相談した。
 サービス提供責任者の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「この計画書は、医療職が作成するものですよ」
2 「一度作成した計画書は、個人の意向で変更するのは難しいですよ」
3 「意思確認のための話合いは、何度でもできますよ」
4 「そんなに心配なら、特別養護老人ホームに入所できますよ」
5 「この計画書は、在宅ではなく病院での治療を想定したものですよ」

(5)事例問題:
▼事例文が比較的長く、かつ一つの事例に対して2問以上が出題される問題形式です。
例)次の事例を読んで,問題 109,問題 110 について答えなさい。
〔事 例〕
 Aさん(75歳,女性)は一人暮らしで,身体機能に問題はない。70歳まで地域の子どもたちに大正琴を教えていた。認知症(dementia)の進行が疑われて,心配した友人が地域包括支援センターに相談した結果,Aさんは介護老人福祉施設に入所することになった。入所時のAさんの要介護度は3であった。
 入所後,短期目標を「施設に慣れ,安心して生活する(3か月)」と設定し,計画は順調に進んでいた。Aさんは施設の大正琴クラブに自ら進んで参加し,演奏したり,ほかの利用者に大正琴を笑顔で教えたりしていた。ある日,クラブの終了後に,Aさんは部屋に戻らずに,エレベーターの前で立ち止まっていた。介護職員が声をかけると,Aさんが,「あの子たちが待っているの」と強い口調で言った。

問題 109 大正琴クラブが終わった後のAさんの行動を解釈するために必要な情報として,最も優先すべきものを1つ選びなさい。
1 介護職員の声かけのタイミング
2 Aさんが演奏した時間
3 「あの子たちが待っているの」という発言
4 クラブに参加した利用者の人数
5 居室とエレベーターの位置関係

問題 110 Aさんの状況から支援を見直すことになった。
次の記述のうち,新たな支援の方向性として最も適切なものを1つ選びなさい。
1 介護職員との関係を改善する。
2 身体機能を改善する。
3 演奏できる自信を取り戻す。
4 エレベーターの前に座れる環境を整える。
5 大正琴を教える役割をもつ。

(6)総合問題:
▼これは(5)事例問題の一種ですが、一つの事例に対して必ず3問出題され、3問のうち1問は医学系の問題、1問は介護系の問題、1問は制度系の問題がそれぞれが出題されることになっています(実際は、介護系2問+制度1問のこともあります)。
例)(総合問題 3)
次の事例を読んで,問題120から問題122までについて答えなさい。
〔事 例〕
 Dさん(38歳,男性,障害支援区分3)は,1年前に脳梗塞(cerebral infarction)を発症し左片麻痺となった。後遺症として左同名半盲,失行もみられる。現在は週3回,居宅介護を利用しながら妻と二人で生活している。
 ある日,上着の袖に頭を入れようとしているDさんに介護福祉職が声をかけると,「どうすればよいかわからない」と答えた。普段は妻がDさんの着替えを手伝っている。
 食事はスプーンを使用して自分で食べるが,左側にある食べ物を残すことがある。Dさんは,「左側が見づらい。動いているものにもすぐに反応ができない」と話した。
 最近は,日常生活の中で,少しずつできることが増えてきた。Dさんは,「人と交流する機会を増やしたい。また,簡単な生産活動ができるようなところに行きたい」と介護福祉職に相談した。

問題120 Dさんにみられた失行として,適切なものを1つ選びなさい。
1 構成失行
2 観念失行
3 着衣失行
4 顔面失行
5 観念運動失行

問題121 Dさんへの食事の支援に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 食事の量を少なくする。
2 テーブルを高くする。
3 スプーンを持つ手を介助する。
4 バネつき箸に替える。
5 食事を本人から見て右寄りに配膳する。

問題122 介護福祉職は,Dさんに生産活動ができるサービスの利用を提案したいと考えている。
 次のうち,Dさんの発言内容に合う障害福祉サービスとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 就労継続支援A型での活動
2 地域活動支援センターの利用
3 療養介護
4 就労定着支援
5 相談支援事業の利用

2.図表の問題

▼図表の問題は、これまでにご紹介した各種の問題文の中に添えられます。図表の問題がはじめて出題されたのは第27回試験で、あまりよく覚えていませんが「今年度の試験から図表の問題を出します」みたいな予告があったような気がします。
▼第27回試験以降の図表問題の出題実績は次のとおりです。毎年必ず出題されていることがわかります。

  *第27回試験 ― 2問
  *第28回試験 ― 3問
  *第29回試験 ― 5問
  *第30回試験 ― 3問
  *第31回試験 ― 5問
  *第32回試験 ― 2問
  *第33回試験 ― 2問
  *第34回試験 ― 1問
  *第35回試験 ― 4問
  *第36回試験 ― 2問

▼次に、出題される図表は、だいたい以下の内容に分類することができます。これらのうち、ピクトグラムと洗濯物表示など以外は、図そのものを暗記する必要はなく、要点を文章として暗記していれば解答できると思います。

  *ピクトグラム(車いすマークなど)
  *介護技術の様子を図示したもの
  *福祉用具や補装具の構造・機能を図示したもの
  *JIS規格や洗濯物の表示
  *身体構造を図示したもの(脳の断面図など)
  *データのグラフ

3.事例問題の出題率

▼出題科目の大改訂、つまり第24回試験以降の事例問題(短文事例問題(1~2行程度のものは除く)+事例問題+総合問題)の出題率を計算してみました。

  *第24回試験 ― 25問/120問=20.8%
  *第25回試験 ― 27問/120問=22.5%
  *第26回試験 ― 31問/120問=25.8%
  *第27回試験 ― 28問/120問=23.3%
  *第28回試験 ― 33問/120問=27.5%
  *第29回試験 ― 29問/125問=23.2%
  *第30回試験 ― 32問/125問=25.6%
  *第31回試験 ― 33問/125問=26.4%
  *第32回試験 ― 35問/125問=28.0%
  *第33回試験 ― 31問/125問=24.8%
  *第34回試験 ― 36問/125問=28.8%
  *第35回試験 ― 38問/125問=30.4%
  *第36回試験 ― 38問/125問=30.4%

▼これらのことから、総出題数に占める事例問題の割合は増えているといえるでしょう。

▼今回は、問題の出題形式を取り上げてみました。過去問の推移をみる限り、国家試験をやる側は明らかに介護福祉士の合格者数を増やしたがっています。
▼近年の合格率の向上は、難易度が大幅に下がったのではなく、最低得点率の基準を下げたことが大きいと思われます。難易度を下げ過ぎると国家試験、国家資格としての体(てい)をなさなくなるため、今後はいま以上に見やすさ、わかりやすさ、伝わりやすさに配慮した出題形式になっていくのではないでしょうか。

⭐⭐⭐次回は『力だめし』です。よい週末を⭐⭐⭐

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