#007 MBA留学が教えてくれたこと -その1
おはようございます。7日目です。よーし、なんとか1週間続けられました。バッジももらえて嬉しいな。
さて今日からは、「#005 31歳からの留学あれこれ」でご紹介しましたビジネススクール Hultが僕に教えてくれた価値観のうち、7年たった今でも大切にしていることを書きます。
※内容はソフトスキル中心です。マーケ、会計、戦略といったハードスキルに関する内容ではありませんので悪しからず。それらテーマは専門家の皆様にお譲りしまして。。
1. チームで成果を上げる
Hultでは、チームワークの精神をこれでもかと言うくらいにたたきこまれます。席に座って参加する授業(とはいえ、座学とは違い対話型)だけでなく、Cohort ―コホート: 仲間 と言われるチームが1年間に6回も組成され、チームで、レポート作成やプレゼン、協働作業(例えば、いかだを作ったり、ビジネスゲームをしたり)を行います。
それ以外にも、授業中に突然、ティーチングアシスタント(TA)からその授業内だけのチームが発表され、1時間以内にケーススタディに関する質問についてディスカッションを行い、チームの見解をまとめ、パワポを作って即興で発表というものもあります。もう、あの手この手を使ってチームワークの場に生徒を放り込んでいくわけです(笑)
また、Hultの成績評価の基準もチームワークに重きが置かれています。なんと、個人の筆記試験・レポートに対する評価が合計点に占める割合は35%程度。それ以外は、2. Team Assignment(チームで提出する宿題)35%、3. Class Participation(授業中の発言の回数・内容)20%、4. Peer Evaluation(チームメンバーからの評価) 10%といった感じです。
つまり、チームワークに積極的に参加して、その中での貢献を仲間に認めてもらえれば最大45%の評価を得られます。逆に、あなたがいくら優秀でも一人で満点取るだけじゃだめよ、ということですね。実際、僕も、優秀だけども意見を全く曲げないチームメンバーが一人がいて、チーム内で喧嘩ばかり起こし、チームが空中分解してしまい、、質の低いプレゼンを行うこととなり、最低のグレードを教授からくらった経験もあります。要するに、チームで成果を出しなさい、ということです。
2. 混沌は自然現象として受け入れる
これは1つ目とも大いに関連することですが、チームにおける個人の衝突、さらにその中で沸く不安、否定、怒りといった個人の負の感情は、パフォーマンスが高いチームに進化する過程において当たり前に起こる自然現象と考えること。そして「そんかもんだ」と状況を受け入れることから、メンバーの相互理解と自分の理解が始まるということです。
MBAへ入学するような人達なので、皆、何かしらの際立ったバックグラウンドがあり、個人のスキルと経験に自信を持って意気揚々と入学します。そんなメンバーがチームを組むわけですから最初は必ず衝突が起こります。さらにHultは、職種、国籍、年齢(同級生で20歳以上離れていることもある)も多様となると尚更です。
学校もこれを実践と内省を通じて教えます。
入学後、一番最初のチームで2週間を終え、多くのチームが混沌としているころ、突然、僕らは大教室に集められます。「課題の締め切りがもう3日後に迫っているのに全く作業が進んでいない、、」とか、「あいつとあいつはいつも喧嘩している」とか、「あいつはいつも遅刻してくる」とか、半分ぐらいの生徒はもうこの世の終わりみたいな表情をして、疲労困ぱいです。
で、そんな生徒達を見て、教授が笑いながら聞くんですね「どう、うまくいっている?」と。そうすると「もうナーバス。意見がまとまらない。絶望的。」と生徒が答えます。すると教授は「ほう。で、課題は終わりそう?」と聞くと、生徒は「努力するが、不確実だ。」と応えます。
すると教授は「だよねぇ、はは。今年も同じで良かった。君たちにとっては特別かもしれないけど僕にとっては毎年見ている光景から特別じゃない。つまり、予期できること。今、君たちの目の前に起こっていることは健全なこと。今の感情とその過程で起こる感情の変化ををよく記憶に残しておきなさい。」と言い、さらりとこんなスライドを見せて、話し続けます..
「これはチェンジカーブ。チーム、特に個人が強いチームはみなこの過程を歩む。最初は必ず衝突する。そして、一時的にパフォーマンスがグンと落ちる。各個人は、その状態を見て絶望的は気持ちでいっぱいになる。でも、それは予期できること。重要な挑戦は、そういった変化をマネージして不確実な状況を乗り切ること。その先にはパフォーマンスが上がり始める瞬間が必ずあるから。」と。
そして、ぽちっとレーザーポインターのスイッチを押して次のスライドを見せて淡々と続けます。
「こっちはチームの進化におけるチェンジカーブ。今君たちはまだ個の集団(Group of Individual)だ。でも、今の混沌とした状況(Storming)を乗り越えれば必ず、チームにまとまりのようなもの(Forming)が生まれる。そして、共通の規範が出来上がり、個人が自走し始め、互いの関係は安定化する(Norming)結果、成果が生まれる(Performing)」と全てお見通しかのように説明されます。で、皆な冷静になる。
この成長過程ってその通りなんです。僕は、ビジネススクールを卒業したあと企業文化も事業内容も起業規模も異なる複数の会社でチームを立ち上げて/仕立て直してマネジメントしてきましたが、面白いぐらいにどのチームもこの過程をたどります。もちろん、メンバー構成、組織の生い立ち、企業文化によって起こる事象の内容と各過程に要する時間は異なりますが、歩む過程は同じなんです。
だから、自分がマネジメントを行う立場であれば、メンバーとの対話やオペレーションを観察しながら”チームはいまどの過程にいるか” を洞察し、「さて次はなにしようかな」と考えます。例えば、皆、お行儀が良すぎたり、おたがいを慮りすぎて表面上のやりとりに終始している状態なら、あえて僕が嫌われ役になって混沌を起こすこともあります(ごめんなさい)なぜかといえば、その混沌を経ないとお互い分かったふりで仕事をする個人の集団を超えられないからです。さらに、その先の組織化、自立×自走の規範を整備することも僕の大切な役割です(それは別のテーマなので別の機会に)
また、個人としては、なかなか難儀な状況に出くわしたら、上記の図を見ながら過去に起こった事象を思い出して「まっ、これって自然現象だよね。変化に対して自分の心が抵抗しているってこと。今目の前に起こっていることはあくまでパフォーマンスを生むための一過程。」と割り切って、さっさと自分の心の状態を受け入れちゃいます。そして寝る、起きたらもう忘れている(これまたごめんなさい)
大切なことは、自分の負の感情とそれを引き起こしている事象とすこし距離をおいて、それらを客観視し、分析し、今は将来に向けた過程である、と考えて現状を受け入れることだと思います。それをせずに、過度に自己肯定したり、逆に目の前の事象から逃げてしまうと、チームでパフォーマンスを上げる経験を得られないまま歳を重ねてしまいます。キャリアにおいては、所謂「負けぐせ」が付いてしまったり、ある年齢を超えたときに個人の力を超えた仕事ができずに給与が伸び悩む、そんなことが起こります。
..あっ、またあっという間に長文に。。端的に書く力を身につけないと。。今日は、MBAが教えてくれたことのうち、特にチームに関わることを中心に、ちょっとキャリア論のスパイスも混じえながら書きました。つづきはまた明日に!
>次回はこちら
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