「不適切な保育」の予防は、日々の言葉かけとかかわりから
「不適切な保育」をめぐる報道
ここ数年、保育所等での保育者による園児への「不適切な保育」をめぐる報道が相次いでいることは記憶に新しいところです。園児に対する具体的な行為もさまざまに報道されたので、「これも不適切?」と思われた方も多いのではないでしょうか。
国も全国調査に乗り出し、2023年5月にはこども家庭庁より「保育所等における虐待などの防止及び発生時の対応等に関するガイドライン」が公表されました。本ガイドラインでは、虐待と不適切な保育の定義づけを明らかにし、保育所等での組織的な対応、自治体による対応を示しています。
「不適切な保育」はなくならない?
それでは、ガイドラインに書かれた対応をすれば、「不適切な保育」は起こらないのでしょうか? ガイドラインでは「現場で運用していく中で、工夫すべき点など、様々な意見が出てくることが想定される。」と書かれています。虐待や不適切な保育に該当するか否かは、時代が保育に求める内容にも左右されるのかもしれません。反対に、子どもの権利という原理原則から「これだけは譲れない」という基準から考えていくことが大切かもしれません。
いずれにしても、現場で試行錯誤を重ねながら、少しでも不適切な保育を減らしていくことが望まれます。
日々のかかわりが不適切な保育を生み出す
現場で試行錯誤を重ねていく中で大切なのは、「自分たちは大丈夫」という思い込みをなくすことです。日々の言葉かけやかかわりが一つでも子ども中心という軸から外れ、保育者都合になってしまうと、その行為が日常化・エスカレートして「不適切な保育」につながることは容易に想像されます。
ですから、日々の振り返りでは、自分たちの保育が子どもの権利を侵害していないか、エスカレートするとどうなるのか、という想像力を働かせることが大切です。
「不適切な保育」脱却のススメが目指すもの
ここまで、「不適切な保育」を生まないためには日々のかかわりが大切であることをお伝えしました。ここで、2023年9月に刊行された『言葉かけから見直す「不適切な保育」脱却のススメ 保育者の意識改革と園としての取り組み』を紹介しながら、現場で求められる保育について考えてみます。
本書では、日々の言葉かけやかかわりにこそ、不適切な保育の芽があると考え、保育者の日常的なかかわりを見直そうという提案をしています。書籍の詳細は以下のリンクからご覧ください。
主な執筆は、こどもの王国保育園の菊地奈津美先生と、こども発達実践協議会の河合清美先生。お二人ともSNSなどを通じて、日常的に保育現場の質の向上を訴えています。今回の不適切な保育をめぐる報道についても、保育者が自分事としてとらえるためにはどうすればよいか、書籍を通じて、できる限りの提案をしています。
自分を意識する。まずはそこから変えていく。――保育士野郎
本書の帯の推薦文は、インスタグラムで高い人気を誇る保育士野郎さんにお願いしました。保育士野郎さんは、自分は大丈夫と思っている保育士にこそ読んでほしいとも言います。一連の報道も、ひと段落すれば保育現場は日常に戻りますが、常に自分たちは子どもにとってどのような存在なのかを問い続けていくことこそ、保育の専門性といえるのかもしれません。
アンサーブック『10のスキルで防ぐ!「不適切保育」脱却ハンドブック』発行
2024年9月、『言葉かけから見直す「不適切な保育」脱却のススメ 保育者の意識改革と園としての取り組み』のアンサーブック、『10のスキルで防ぐ!「不適切保育」脱却ハンドブック』が刊行されます。前作が日々の保育の見直しに、不適切保育を止めるヒントがあると伝えましたが、本作では、具体的にどのように防いでいくのか、園内外の研修で使えるワークを紹介しています。
また、10のスキルとして、次の10の意識づけを提案しています。
根気よく
落ち着いて
演じる
問いかける
環境設定
共感
肯定的な言葉
小さな声
少しだけ
こどもまんなか