就職支援1万人の藤原セイが21卒NNTの学生を支援してみた(フィクション) 中編

※前編はこちら。

「志望動機のひな形」

セ:「志望動機のひな形を創る」ことだよ。

N:志望動機のひな形?

セ:結論から言おう。①自分理念 ②理念にひもづく原体験 ③自分理念と一致する企業の魅力 の3つを伝えること。

N:…今度はちょっと抽象的過ぎて不足感が…

セ:自分理念とは「自分の働く軸」のことだ。自分自身が何のために働くのかをしっかり伝えること。その考え方が出てきた原体験について話すと説得力が増す。その自分理念が、企業のこんなところと一致する。だから御社に入って、●●に貢献したい、というのが志望動機のひな形。ということで、ちょっと一緒に創ってみようか。まず、過去受けた企業の志望動機を言ってみて。

N:では、僕が好きだったあるビールメーカーの志望動機を言いますね。

「御社のビールが好きで、もっと世の中に広めたいと思ったので志望しました。私は学生時代居酒屋で働いていたのですが、御社のビールは製法に拘り抜いており、のどごしが本当に美味しいと思いました。品質No.1を掲げて日々研究開発を重ねておられる姿勢に感銘を受け、自分ももっとこのビールを世の中に広げたいと思い、志望しました」

N:…どうですか?

セ:おお、いい線いってるね!

N:…どうも(でも落ちたんだよなあ)

セ:でもこの志望動機だと面接官は魅力には感じないね。

N:うっ…どの辺りがですか?

セ:そもそもその前に。「品質No.1」「製法に拘り抜く」って、この企業の特徴の情報はどこで知り得たの?

N:会社HPと会社説明会の両方です。強調していたから絶対に入れた方がよいと思って。

セ:では、「品質No.1」や「製法に拘り抜く」という特徴は、一体どれくらいの学生が志望動機に入れていると思う?

N:あっ…なるほど…多くの学生が言っているんですねきっと。

セ:その通り。Nさんが気付いた通りで、企業の分かりやすい特徴は多くの学生が志望動機に入れている。企業としては、競合他社ではなく自社を学生に選んでほしいから、他社よりも抜きん出た特徴を説明会やHPでのアピール材料とする。そしてそれは学生にとって魅力的であると同時に、志望動機に入れる。でも、これだけだと差別化が出来ない、となってしまう。

N:…ということは、志望動機ってすごく難しくないですか?他の学生が言わないような企業の特徴を探すなんて、それこそOB訪問を重ねて入社するために徹底的に準備しないといけない。だとしたら、結果的に多くの企業を巡るということが出来なくなりますよね?

セ:差別化するのは企業の魅力ではない。あなたの考え方によってするんだよ。

N:どういうことですか?

セ:これが「自分理念」だ。あなたの仕事の選択軸が、差別化に繋がるんだ。例えば、Nさんは企業選びの軸はどんなもの?

N:えっと、大手企業で、安定していて、給料が高くて…

セ:本音をありがとう。その本音も大事だ。ただ、さすがにそれを面接の中で言う訳にはいかない。質問を変えると、仕事を通じてどんなことに貢献したい?

N:そうですね…自分は居酒屋のアルバイトをしたのも、飲みの場がすごい好きで。本音で真剣に語り合ったり、仲間でワイワイ話をするのもすごいいいなって思ったんですよね。だから、ビールメーカーだったら、そういうところに貢献出来るかなって思って。

セ:それだ!まさにそれが「自分理念」。つまり、Nさんは本音で真剣に語り合ったり、仲間でワイワイ話をするような場に貢献をしたい、ということだよね。それが「自分理念」だ。そういう軸を持っているNさんは、どんなビールメーカーだったらその理念が叶うと思う?

N:…そりゃ、美味しいビールを出すメーカーの方がいいですよね…あっ!

セ:お気づきかな?

N:(なんかむかつくな…)

セ:「自分理念」と「企業の魅力」を合致させることが出来るんじゃないかな。言ってみて。

N:はい、こんな感じでしょうか。

「私は、本音で真剣に語り合ったり仲間内でワイワイ楽しむお酒の場に貢献したいという風に思っています。その中で、製法に拘り抜き品質No.1の御社であれば、美味しいビールでその場を演出することが出来ると思ったので志望しました」

セ:いいね、これで自分理念と企業の特徴を一致させることが出来たね。ただ、まだ②理念にひもづく原体験が入っていない。これを入れることが差別化にもなるし、選考者の共感を呼ぶことにもなる。

N:共感…ですか?

セ:うん。原体験にはストーリーがある。そのストーリーを聞くと人間は共感し感情を動かされる。要するに感情移入だ。ちょっと思い出してみようか。Nさんが居酒屋でバイトしていた時、もしくは自分が居酒屋で飲んでいた時のこと。自分が心動かされた瞬間ってどんな時があった?

N:自分が利用していた時だと、サークルの打ち上げがありますかね。大学2年の末だったんですけど、大会で自分たちのサークルが準優勝だったんです。本気で優勝狙ってたんですけど準優勝で。表彰式ではみんな暗かった。泣いていた。で、その後打ち上げで居酒屋言って。みんなでお酒飲んで更にわんわん泣いて。でもその後、何が欠けてたから優勝出来なかったんだ、という話に真剣になったんですよね。お酒飲みながら。本気で本音で語り合って、その飲み会の場がきっかけとなって、今度は絶対に優勝するぞってみんなで誓ったんです。で、次の大会まで必死に練習して、優勝したんですよね。飲みの場って、そういう効果があると思ってて。それを創り出す手助けするのがお酒であり、僕も大好きなビールだなと思ってます。

セ:それがまさに「原体験」だね。それが入れば志望動機は9割完成だ。

N:えっ…長い気がしますけど、ちょっと言ってみますね。

「私は、本音で真剣に語り合ったり仲間内でワイワイ楽しむお酒の場に貢献したいという風に思っています。そのきっかけはテニスサークルの打ち上げでした。大学二年末の大会で、全員で優勝を本気で狙っていたのですが準優勝でした。打ち上げでは最初はみんな泣いていましたが、その後真剣に語り合い、次の大会まで必死に練習し、優勝が出来ました。そのきっかけになった打ち上げを創り出したのも、美味しいビールでした。製法に拘り抜き品質No.1の御社であれば、真剣に語り合うような場や、ワイワイ楽しむような場を演出することが出来ると思ったので志望しました」

セ:かなりよくなってきたね。あとは「結論を最初に言う」「本文と関係の薄いところを削る」をしっかりやってみると、こんな感じかな。

「私は、本音で真剣に語り合うお酒の場に貢献したいと考えていますが、製法に拘り抜き品質No.1の御社であればそれが実現出来る感じたので志望しました。私がその考えに至ったきっかけはテニスサークルの打ち上げでした。大学二年末の大会で、全員で優勝を本気で狙っていたのですが準優勝でした。打ち上げでは最初はみんな泣いていましたが、その後真剣に語り合い、次の大会まで必死に練習し、優勝が出来ました。そのきっかけになった打ち上げを創り出したのも、美味しいビールでした。製法に拘り抜き品質No.1の御社のビールを世の中に一層広めることで、そのような場を真剣に語り合うような場を演出することが出来ると思っており、志望しています」

セ:「自分理念を明確にし、原体験を伝え、その実現するフィールドとして御社がふさわしいと思ったので志望しています」というのがひな形だ。この考え方は、ビールメーカーの色々な企業に応用出来るよね。

N:はい、エピソードは他社でも話せます。また、エビソードだけじゃなく、考え方を応用すれば、他の業界・企業でも使えそうです!

セ:飲み込みが早い!いいね。

N:(やっぱりちょいちょいむかつくな…)

「志望動機のひな形」を活かして志望動機をスピーディーに創るやり方

N:志望動機のひな形は分かりました。でも、エントリーシートに記載する志望動機って、字数制限が会社によって異なりますよね?その場合どうすればいいんですか?

セ:鋭い質問だね。字数によって削る部分を変えるのさ。削る優先順位は原体験⇒自分理念⇒企業の特徴。先ほどの志望動機は全部で303文字。字数制限に応じて削ればいい。

N:なるほど。それは簡単に出来ますね。

セ:ただ単純にコピペしないように要注意だ。万が一別の企業の特徴を書いてしまったら、それはその瞬間にアウトの可能性が高い。

N:それは気をつけます…やってしまいそうなので。

「ガクチカ」はこのテーマで選べ!

N:エントリーシートでは「学生時代に力を入れたこと」もかなり問われています。これはどうしたらいいですか?

セ:いわゆる「ガクチカ」だね。これは言い回しこそ色々あるけれども、ほぼ全ての企業で出てくるよね。これも、ひな形がある。いや、というよりも、「企業が何を見ているか」を知ったほうが、書きやすい。

N:企業が見ているポイントって、企業によるんじゃないんですか?

セ:確かに、厳密には違う部分もあるし、共通項目でも程度差はあると思う。ただ、このご時世においてどの企業もこの二つは見るというポイントがある。そのツボを押さえるエピソードを準備するとよい。

N:なんですか、ポイントは?

セ:「主体性」と「協調性」の2つだ。

N:主体性と協調性…なんか当たり前って感じですね。

セ:言葉足らずだったね。もう少し噛み砕くと、「指示待ちではなく自ら足りないところを補う/指示されたことの改善をするための課題を能動的に発見し打ち手を打つ/ビジネス上の本質的課題を能動的に発見し率先して打ち手を打つ」のが主体性。「立場や価値観の違う人たちにも臆せずコミュニケーションを取りチームで仕事を進めるように取りはからう」のが協調性。それを満たすようなガクチカを選ぶのがよい。

N:一気に難しくなりました…

セ:と思うので、一緒に創ってみようか。どんなガクチカ言ってたの?

N:こんな感じです。

「私が学生時代に力を入れていたのは、テニスサークルの副代表です。練習の参加率が悪かったので、より多くのメンバーに練習に参加してもらうためにLINEグループを作り、メンバーに話しかけ、イベントの開催を提案し実行しました。結果、練習の参加率が倍になり、サークルも賑わうようになりました」

セ:うん、ありがちなガクチカだね

N:(…なんやねんこの人…)

セ:磨けば光りそうな感じがするよ。もう少し細かく見ていこうか。まず、参加率ってどれくらいだったの?

N:そうですね、メンバーが全部で100人くらいいたんですが、そのうちの30%くらいが常時来るメンバーでしたね。

セ:なるほど、それが最終的に60%になったんだったらそれはすごいね!ちなみに、なぜ参加率は30%だったんだろうか?

N:そうですね、「新歓の時は楽しくワイワイ出来ると思ったのに、意外と本気で練習するのに引いた」という声が多かったですね。何人かに聞いてみたんですけど、それで練習に参加する足が遠のいたということでした。

セ:なるほど。ではなぜLINEグループを作ったのかな?

N:「練習は楽しいものだ」ということを伝えたかったんです。それで手っ取り早いのはLINEかなと。

セ:どうやって「練習は楽しいものだ」って伝えたの?

N:それは、ゲーム性の高い、楽しい練習を取り入れて、参加してもらうことですね。で、それに参加してもらって楽しければ、それがLINEで拡散したらいいなという風に思ったんです。

セ:なるほどね。この一連の取組みにおいて、Nさんはどうやって関わったの?

N:イベントの企画をし、LINEグループを作ってみんなに参加を呼びかけました。

セ:他にはどんな役割の人がいた?

N:そうですね、イベントの企画は自分一人ではアイディアが尽きてしまうので、それを一緒に考えてくれる人とか、あとは全員のLINEを自分自身しらなかったので、LINEのIDをゲットして繋がるメンバーとかですかね。

セ:どうやって協力してもらったの?

N:まずはご飯に行き、仲良くなりました。仲良くなって、「練習参加率上げたいよね」という話をして、共感してくれたメンバーと一緒にやっていった感じです。

セ:それで最終的には60%の参加率になったんだね。それまでの期間はどれくらいだった?

N:だいたい3ヶ月くらいでしたね。

セ:なるほどね。一連の取組みから学んだことはある?

N:そうですね…ぶっちゃけ最初やれるかどうか不安だったんですが、仲間と一緒にやれば成果が出るのは速いんだな、と思いました。

セ:はい、これでバージョンアップしたよ、ガクチカ。

N:…えっ?

セ:こういうことだよね。

「私が学生時代に最も力を入れたのは、副代表として参加していたテニスサークルの練習参加率を、30%から60%に上げた取組みです。新歓で多くの学生が入部してくれるにも関わらず、思ったよりも練習がハードで楽しめない、ということが不参加のメンバーの声で分かりました。そこで私は、楽しんで参加出来るようにすることが重要だと考え、ゲーム性の高い楽しい練習を取り入れることを提案し、その企画と実行方法を考えました。また、参加してくれたメンバーの声を他のメンバーに伝えるために、LINEのグループを作り、感想を拡散するようにしました。このプロセスにおいて、自分一人では出来ない部分もあったため、練習参加率を上げたいと感じる同志を募るべく、一緒にご飯を食べて語り合い、同じ課題感を持つメンバーと協力し合って実行してきました。その結果、取り組み始めてから3ヶ月後に、参加率は倍になりました。この経験から、私は1人よりも多数で取り組んだほうが大きな成果を早く残せるんだということを学びました」

N:…なんか、プロジェクトっぽい仕上がりになった…

セ:そうだね。というか、プロジェクトという概念を用いなかっただけで、どんな取組みもプロジェクト化することは出来る。ちなみにまとめ方は「STAR」という手法を使った。

S:Situation ※状況

T:Task ※課題

A:Action ※行動

R:Result ※結果

STARを紹介することが目的ではないから、これくらいにしておくけど、詳しく知りたければ「面接 STAR」で検索すると出てくるよ。

N:このガクチカのポイントはなんなんですか?

セ:一連の取組みの中で「主体的に自分から課題を発見し、その解決策を打つ」ということと、「誰かの協力を仰いで、同じ目標に向けて頑張る土台を創る」ということを伝えること。今回のNさんの事例だと、参加率が低い原因をメンバーの声から分析し、その原因払拭のためのアイディアを考え実行するために仲間を募っている。これは仕事の現場においても必要な考え方で、その素養が見えやすくなるように創ってみた。

N:なるほど、だから「なぜそうしたのか?」とか「あなたはどう関わったんですか?」とか聞かれたんですね。

セ:学生の皆さんは、「成果の大きさ」を基準としてガクチカを選びがちな傾向がある。成果は大きいにこしたことはない。その分の努力の量と質は高いものである可能性が高いから。しかし仮に、「大きな成果を上げたが受動的な参加姿勢だった取組み」と、「成果は小さいものの主体的な参加姿勢だった取組み」であれば、後者のほうが評価が高い。

N:ガクチカは完全にでかい成果がないとダメだと思ってました…

セ:また、協調性というのも「仲間が沢山いる」ということが評価されると思われがちだが、どちらかというと価値観の違う人たちを一つの目標にまとめあげるということのほうが大切。よく言われるダイバーシティの世の中、同じ職場だったとしても違う価値観の人が多い。ましてや社外の取引先であればなおさら。それらの人たちと一緒に取組みを進めていくという経験は、社会人になっても生きる。だからこそ、面接官はその辺りを見ている。

N:ずいぶんと誤解していたことが分かりました。…ただ、ここまで長くお話ししてきて何なんですけど、結構大変ですね、準備するのって。

セ:…もっと簡単に準備出来る方法を知りたい?

N:え!あるんですか?ぜひ知りたいです。

(つづく)

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