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1on1が待ち遠しくなる上司の面談力(2)面談で何を話そうか

キャリアコンサルタントの松岡澄江です。
1on1が待ち遠しくなる上司の面談力として、前回は「目的と時間」について考えました。

1on1では、上司と部下が定期的に30分前後の面談を行っているところが多いようですが、みなさんの会社ではいかがですか?1on1の時間が短ければ「限られた時間で何を話そうか?」、長ければ「そんなに長い時間何を話そうか?」と悩みます。1on1の時間が、上司にとっても部下にとってもいい時間になるために、今回は「面談で何を話そうか」について考えてみましょう。


思ったより話してくれない部下

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上司の立場からよく相談されるのはこんなつぶやきです。

「部下が話してくれない」(泣)

「部下が話してくれない」とは、どんな状況なのでしょうか?

上司と部下の信頼関係が、面談の良し悪しに大きな影響を与えるといわれています。でも普段は部下とコミュニケーションが取れているし、関係も良好となれば基本的な信頼関係はあるはずです。それでも部下が話してくれないのはどうしてなのでしょう?

原因はいろいろ考えられますが・・・
上司と1対1で就業中に業務以外の話をすることに慣れていない、もしくは抵抗がある人もいます。話すことが苦手な人もいます。話しにくい内容なのかもしれません。さらに、1on1に対するお互いの意識がすり合っていないことも考えられます。

上司は・・・
「1on1の時間を持てば、部下は相談したいことや自分の考えなどを話してくれる」と思っている
部下は・・・
「1on1で何を話したらいいかわかんないから、質問されたことに対してだけ答えておこう」と思っている

お互いの意識にこんな違いがあったら、せっかくの1on1がもったいないですね。よい時間にするためにどう相手の話を引き出していくのか、考えてみましょう。

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話しやすいのは過去のポジティブなできごと

下の図は、私がカウンセリングで質問を投げかける時に意識していることを図式化したものです。横に時間軸、縦に感情軸を置いています。

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時間軸では「過去~いま」はそもそも顕在化した事実があるので話しやすいです。「未来」は自分が想像力を働かせる必要があるので、考える時間が必要ですし、正解がないので話しにくい領域です。感情軸では、「ポジティブ」なことは比較的話題にしやすいですが、「ネガティブ」なことは内容によっては話すのをためらうこともあるかもしれません。

そうなると、もっとも話しやすいのが『B』の領域。過去起こったよかったことや成功体験は、部下も安心して話すことができます。

【質問例】
入社して一番よかったことは何?
これまで経験した仕事で楽しかった時は?
どんな時に自分の成長を感じた? 等

質問の答えが出たら、「どうしてそう思うのか?」「何が一番影響したのか?」「結果から自分が変化したことは?」「自分がやるとすればどんなことをする?」と質問を展開していくことで、話が広がっていきそうです。『B』領域の情報交換ができるようになったら、他の領域の話に展開していきます。

『D』
は、過去のネガティブな出来事なので、ここは感情と事実を分けて冷静に客観的に分析する手伝いをする気持ちで質問を工夫します。
 「これまでで一番くやしかったことは?」
 「どんな要素があったらよかったんだろう?」

アドバイスというよりは、本人が気づきを得たり次につなげられるような答えを導き出す手伝いをすることが大切です。

『A』の領域は未来のポジティブな事柄ですから、これからどうなりたいのか?といった自分のめざす姿や仕事での目標等の話が中心になります。ここは答えがない分、考える時間が必要になります。何回かに分けて一緒に考えてもいいテーマです。

『C』未来のネガティブですので、何か心配していること、先に対する不安、業務のリスク等が語られると思います。相談事はまだ漠然としていることが多いのですが、何らかの根拠があるものなのでじっくり話を聴いていくことが重要になります。

さらに4つの領域に加えて、話の対象をどうするかによっても、話し方が変わってきます。話の対象は主に二つ、『業務のこと』と『個人のこと』です。対象が『業務のこと』ならば上司とは話しやすいですが、『個人のこと』だとどこまで話そうかと迷う人も出てくるかもしれません。

4つの領域×話の対象2つ=8パターン。

8つのパターンの中から、部下と話すテーマを考えたり、部下と一緒に今日はどこを話すか話し合ってもいいでしょうし、部下によって変えてもいいかもしれません。1on1を上司の感覚だけで話すのではなく、領域を考えて部下の話を引き出していくことを意識してみてください。

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上司の自己開示が話の呼び水に

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それでも話してもらえない・・・

そんな時の部下の気持ちを考えてみます。
 上司は何を求めているのだろう?
 何を話せばいい(評価される)のだろう?

そう考えているかもしれません。用心深い人ならなおさら上司の受け止め方や評価を警戒して、話してくれない可能性もあります。

こんな時は少しだけ、上司自身の話を入れてもいいと思います。

質問例:「入社して一番うれしかったことは?」
部下(どんな話を求められているんだろう?)
上司「自分の場合は、入社式で社長が名前を呼んでくれたことかな」
部下(あ、そんなことでいいのか)
  「私は〇〇さんにほめてもらった時です」

上司が自分の話をしたことで、どんなレベルの話を求められているかがわかり、ホッとして自分の話ができるようになることもあると思います。

上司が自己開示したことで、部下の心も開きやすくなっていきます。話の呼び水として自分の話をしてみるのもいいですね。ただし、前回言ったような『上司が8割』話してしまうことのないよう、ご注意ください。


※「上司の面談力」の連載は不定期ですが、具体的な面談手法をお伝えしていきます。よりよい1on1のためにご活用ください!

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