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Ⅺ)キャリア理論をキャリコンの現場でどう使う?~その2~

キャリアコンサルタントの松岡澄江です。
キャリアコンサルタントをめざす方や資格を取得したばかりの方の参考になればと、自分の経験や考えたことなどを綴っています。
(こちらのマガジンでまとめて読めます↓)

キャリアコンサルタントになるための養成講座で私たちは、たくさんのキャリア理論を学びます。学んでいる時は試験のために『覚えねば!』という意識しかなかったのですが、実際にキャリアコンサルタントの仕事についてみると、各種理論のありがたみを実感しています。

その1はこちらです。

前回に引き続き、キャリア理論の活用例(理論の詳細は解説していません)をお伝えします。今回のテーマは『転機』です。

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キャリアの相談は転機とともに

転機の定義はいろいろありますが、私は『転機とは、その人の環境や仕事や生活や人間関係が大きく変化するタイミング』と説明しています。進学・就職・転職・転居・結婚・出産等々、キャリア(人生)はまさに転機の連続です。私たちは、転機が訪れると『どうしよう・・・』『どうしたら・・・』と不安になったり、『どっちがいいのか』迷ったりします。答えがあればいいのですが、人生に正解はないですし、人によって答えが違ってきます。キャリアカウンセリングのクライアント(相談者)は、転機にさしかかっている、もしくは転機の真っただ中にいる方が多いです。

例えば、大学生の就職支援。大学1~2年生が将来を見据えて有意義な学生生活を送りたい、キャリアを考えたいと相談に来ることもあります。でもそれはごく少数です。やはり3年生のインターンシップが始まる頃、周りの雰囲気に押され、「就職考えなきゃ!」と思い始め、少しずつ相談が多くなります。就職という予定されている転機に向けての準備が始まります。

一方で、自分が転機を起こすこともあります。就職して何年か経つと、中には『このままでいいのだろうか・・・』『他にも自分に合う仕事があるのではないか・・・』『これはやりたい仕事なのか・・・』と自分を見つめ始め転職を考えるのは、自分が起こそうとしている転機です。

他にも、自分が意図していないタイミングでの異動、今回のコロナ禍のようなパンデミックや災害で仕事や働き方が変化するなど、予期しない出来事もあります。

自分あるいは周辺の環境が大きく変化する時は、キャリア(人生)を考えるタイミングです。

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ノンイベントの悩みは深い(シュロスバーグ)

キャリコンが「転機」と聞いて最初に思い出すのは、やっぱりシュロスバーグの4S。転機の乗り越え方として4つのSを考えましょう!という理論ですよね。4Sと一緒にイベントとノンイベントも習いました。人生には、自分が予期している・予期していないにかかわらず何かが起こる「イベント」と、予期していたことが起こらない「ノンイベント」がある。こういう考え方は、当時の私にはとても新鮮だった記憶があります。

若い世代にキャリア研修やキャリア面談で未来を考えてもらうと、比較的直線的な未来を描く方が多いなと感じます。私自身も若い頃はそうでした。「~~になりたい」「〇〇の技術に関わる仕事をする」「海外で英語を使って働く」等、やりたいことやなりたい自分を前面に掲げてそれに向けて邁進する姿は、若い人の特権だし応援したいなと思います。

しかし、思っていた企業への就職ややりたい仕事への配属が叶わなかった、希望が通らなかった、こんなはずじゃなかったと、自分が予定したことが起こらないことも現実としてあります。人生にはノンイベントがあるということです。描いた未来があるだけに、ノンイベントを目の当たりにすると、どうしたらいいのかわからなくなりますよね。ノンイベントの方がクライアントの悩みが深いです。ノンイベントの対処は、気持ちを整理するためにもキャリアカウンセリングの支援が重要になります。

イベントもノンイベントも、その人の人生の転機として表に現れてきたことです。4S(状況・自己・支援・戦略)を使って、起こっている(起こらなかった)事象や自分自身をしっかり点検する支援をしていきます。研修やカウンセリングで使えるワークシートを作成し、4Sの各項目を書き出してもらうワークもいいと思います。

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何かが終わると何かが始まる(ブリッジス)

転機の理論にはもう一つ、ブリッジスがあります。実は私、養成講座で学んだ記憶がないんです。私が覚えていないだけかもしれませんが・・・。資格取得後、転機を学びたいと思ってこちらの書籍を購入していました。

転機のプロセスには3段階あり、「何かが終わる」ことで転機が始まり、その後「ニュートラルゾーン」に入ります。いろいろ自分のことを考えたりこれからに向けて動いた後、「何かが始まる」んですね。

『終わりから始まりへ』

ここでは、何かを手放すことが何かを得ることに、何かが終わることが何かの始まりにつながっています。それは役割の変化だともいえます。

例えば、独身だった時の一人の暮らしが終わり、二人の暮らしが始まるのが結婚。就職して社会人になると、学生の自分が終わったことになります。自分の意思で終わらせることもあれば、しかたなく周りに押されて終えることもあるでしょうし、突然心の準備もなく終わることもあります。

何が終わったのだろう?それをどう感じているのだろう?ほんとはどうしたかったのだろう?これからどうしたらいいのだろう?・・・

思いがけない終わりが来ると、心は混乱します。新しい始まりに目を向けるためには、まず自分と向き合って考えることが必要です。本人がその転機で終わったことに対し心の整理がつけられれば、また前を向くことができますよね。

ニュートラルゾーンの6つの行動の中から、ご本人が取り組めそうなものを選んでもらうのもいいと思います。あるいはキャリコンがいくつか選んで質問を投げかけてみて、心の整理のお手伝いをします。本人の気持ちが落ち着いて、新しく始まることに目を向けられるようになれるといいですよね。

例えば企業研修なら、就職時の「リアリティショック」、管理職になった時、ポストオフになった時等、役割が大きく変わったタイミングで気持ちの整理をするために使っています。あるいは、キャリアデザインの中で、「新しく何かを得るために何かを手放すとしたら?」と、多角的に自分を考える視点として問いかけています。

今回は転機の理論2つについて、キャリアコンサルタントの仕事の中でどう使っているのかをご紹介しました。こちらの連載はコツコツ継続していきます。お楽しみに。


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