見出し画像

1on1が待ち遠しくなる上司の面談力(5)認めて受け止める

キャリアコンサルタントの松岡澄江です。

せっかく1on1をやるなら、上司と部下にとっていい時間になって欲しい!そんな願いを込めて、この連載では「上司の面談力」についてお伝えしています。過去記事はマガジンにまとめていますのでこちらをご覧ください。

今回は、承認することについて考えます。


多様な価値観を持った社員同士がわかり合うために

そもそも、上司と部下は違う人間です。そして年齢も育った時代も環境も経験もすべて違います。ただ一つ同じなのは〇〇会社の社員であるということ。だからコミュニケーションは「違う」からスタートします。違うのだから、お互いを知り、認め合うことが大事なんですよね。

昭和の時代は「社員は家族」という価値観が一般的でした。長時間労働もその上に成り立っていました。家族だから一緒にご飯(ランチ)を食べ、仕事終わりには飲みに行き、休日もゴルフ・・・。多くの時間を共有するから、意志疎通ができていました。でも今は、違います。多様な価値観を持つ人たちが、コミュニケーションを介して協働する時代へと変化しています。

画像1

1on1を導入する企業が増えているのも、多様性を認め合いながらより良い関係性をつくることが期待されていると思っています。今は在宅勤務も増えているので、時間と空間の共有が極端に少なくなりました。離れた場所で、限られた時間でも、お互いを理解する必要があります。

・・・・・

スタートは認めることから

上司が部下を「認める」って、どんなイメージでしょう。「認める」は「承認する」にもつながる言葉ですから、仕事を任せるようなシーンが浮かぶ人もいるかもしれません。

認めていることを表現する一番シンプルな行動は「あいさつ」です。

「は?」「そんなこと?」って思った方もいるかもしれません。でも、大事なスタートなんです。私たちは透明人間にあいさつはしません。相手がそこにいることが目に入った(認めた)ことで、「おはよう」なり「おつかれ」なりの言葉が出るわけですから、コミュニケーションは相手を認めることが始まりなのです。

1on1では、すでに相手がそこにいるわけですから、きちんと目を合わせて「おつかれさま」とか、「最近どう?」とか、「今日はどんなことを話そうか」と声がけをしてあげてください。ホントに何気ない声がけが「あなたを認めていますよ」という大切なメッセージを含んでいて、そこからお互いの信頼関係をつくっていきます。

画像2

何度か研修で訪問したある企業での経験です。執務室の中はとても静かで会話はほとんど聞こえないし、廊下で社員同士がすれ違ってもあいさつしているのを聞いたことがありません。みんな目を伏せて歩いています。それは「私はあなたを認めたくありません(あいさつしません)」と全身で表現しているかのようです。その企業では離職やメンタル不調者が増えていることが課題でした。単に礼儀だけでなく、あいさつは社員のメンタルにも作用します。

上司からの声がけは、部下がそこにいると認めていること現れです。まず自分から、相手の目を見て声がけしてください。

・・・・・

受け取って受け止める

20代・30代に理想の上司像を聞いた調査では、上司に期待することの第1位は「意見や考えに耳を傾けてくれる」ことでした(エン・ジャパン「上司と部下」意識調査より)。部下は、上司に耳を傾けて欲しいんですね。「だから1on1もやっているじゃないか」と思うかもしれませんが、1on1で「耳を傾けて」いるかどうか、少し振り返ってみてください。

マネジメント研修や部下後輩指導などで、「承認力」の大切さを学んだ方も多いと思います。承認とは、認めること、聞き入れることなのですが、1on1でもそれを発揮して、耳を傾けていることを表現して欲しいのです。

「そうはいっても、部下はまだ経験が浅いし、視野も狭い。意見もアイデアも穴だらけだから受け入れるわけにはいかない」

そんなホンネもあるとは思います。私もなんでもかんでも「そうだ、そうだそのとおり」と承認のハンコを押してくださいと言っているわけではありません。1on1で聴いた話は、一回「受け取って受け止めて欲しい」ということです。

画像3

部下の意見には、すぐに修正点を指摘したくなる気持ちはわかります。が、1on1ではその気持ちをおさえて「そうか、〇〇さんはそう考えたんだね」とひとまず受け取ってみます。受け取るとは、承認してGOを出すことではなく、「意見を聞いたよ」と伝えることです。

その上で、「~~のポイントはどうとらえたの?」と、自分がその話を理解するための質問をいくつかしてみます。そうすると「興味を持ってもらえた」と相手に伝わります。

質問の答えを聞きながら、「そういうことなんだね」と受け止めます。

このやりとりが、部下にとっては「上司は自分の意見に耳を傾けてくれた」と思えるものなのです。

アドバイスはこのあとに、「私の意見も言ってもいいかな?」と前置きし、意見に対するポジティブな感想に続いて、もっとこうしたらいいのではないかと思う点や考えるポイントなどをアドバイスします。そして最後に、「アドバイスについてどう思う?」と聞いて欲しいのです。

こうすべき、ここがだめ、ここが足りない

仕事では不足を指摘されることが多いので、意見を言うことを恐れたり、どうせ聞いてもらえないとあきらめてしまう若手がたくさん生まれています。ここは一度認めて、受け取って、受け止めてもらえると、上司のアドバイスもすんなり入りやすくなります。

意見を受け止めてもらえることが心理的安全性につながって、意見を言う土壌が創られていきます。

画像4


1on1の時間が、部下の成長を支援し、組織を活性化するカギになっていくのです。ぜひ、いい時間にしてください。


・著書紹介


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?