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アットホームは聞き飽きた

これまでの仕事の中で、ドラッグストアの採用担当だったことは、以前のnoteに書いた。

僕はそういった経験がある。だから偉そうにも採用担当の仕事についてあれこれ書く。きっと未練があるんだね。

直前までは法人営業をしていた。内容は新卒採用サービス(合説、求人サイトなど)の販売。またそれを通して新卒採用が成功するように、時にはコンサルという立場で採用担当の指導をさせてもらった。

採用活動が無事に終わるためには、いくつもの課題がある。
採用担当は例えば以下のような要素を押さえる必要性がある。

①会社としてどのような人物が何人、いつまでに必要かを役員から聞き出す。(曖昧にしか言わない役員さんもいらっしゃるので。)
②予算はいくらかけられるのか
③採用担当以外に人的な応援はあるのか(現場社員と経営幹部の理解をきちんと取っておく)
④もし、採用成功したら会社はどのような成長が見込めるのか?逆に採用できなければ会社はどうなるのか?
⑤今回の新卒採用の目的は何か?単なる補充か?それとも強化なのか。

もちろんこれらは全て押さえていても、会社の都合で急転換することもある。それは会社員の一種の定め。

つまらない話はこれくらい。採用担当者は学生に自社の何を見せていくのか知恵を絞るのがやりがいのひとつだと思う。
(少なくとも僕はそう思う)

魅力はどんな会社にも必ずある。仕事が続いているというのは顧客がいる証拠。顧客はその企業に仕事をしてもらいたいから存在する。

僕はかつてお世辞にもキレイとは言えない社屋の会社に出会った。
そこは新卒採用活動をその年に初めてするという企業だった。

「当社は学生に受ける要素がないんだよね」とそこの担当者は言っていた。

ちなみに何の会社かというと、キッチンの販売会社。
正確には業務用の「厨房」を販売している。(飲食店や学校給食の厨房)
採用職種は営業職。社屋ボロボロ。社員年齢層高め。女性少ない。
給与は決して高くない。

どうだろう?ちょっと意地悪く書いたので余計に行きたくなさが出るかもしれない。
おそらく根っからの『業務用厨房のファン』は就活集団の中には存在しないだろう。

少し遠回りするが、新卒採用において大切なことを書く。
学生は得体の知らない会社の説明会には足を運ばない。たとえ合説で数名捕まえたとしても、その場限りでお別れだろう。わざわざ本社まで行かない。

その中でも奇特な学生が企業側に尋ねる。

「御社の魅力は何ですか?」

僕にとっては最高の質問。「そんなこと聞いてくれるの?」とすら思う。
しかしながら意外にも企業側はこの手の質問が苦手なんじゃないかと感じる。

理由はこうだ。(僕がたまたま見聴きしているだけかもしれないが)どの企業も自社の魅力を語れない。伝えたとしてもどの企業も理由が似ている。というよりも同じ。

「当社は風通しがよく、アットホームな関係が魅力です」

その魅力は隣の会社も、そのまた隣の会社でも聞いたことがある。
アットホーム感は多くの学生にとって魅力的だと思うが、もはや当たり前。

令和の就活生にはかつての時代の営業職風土、「ガンガン行こうぜ!」は通じないだろう。
学生は仲の良い関係性やぎくしゃくしない居心地の良さを求めているに違いない。
ただ、アットホームが一番の売りと言っている採用担当者は本来の自社の魅力を知らないのではなかろうか?
だから魅力は「強いて言えば」という感覚でアットホームを謳っているような気さえする。(これは僕の感覚)

ただ、学生は会社に遊びに来るわけではない。働きに来るはず。
採用担当は仕事の魅力を一番最初に伝えたほうがよい。

そうでなければ、この「アットホーム売り」は残念ながら採用の同質化競争で埋もれ、「新卒採用ハジメマシテ」の企業は瞬く間に●●ナビサイトの片隅に消え去ってしまうのがオチだ。

さて、厨房屋さんの話。
こちらも当初から苦戦が予想された。合説は3回のチャンスのみ。

準備期間はわずか1か月。(実は2019年新卒採用開始の1か月前から準備を始めました)

魅力は何だ??人か?商品か?仕事内容か?それとも給与か?

僕が出した答えは、「顧客と商品・サービス」を採用活動として使いこなす。ということ。

要は、会社説明会はその会社の本社会議室で行われることが多い。この厨房屋さんには顧客巡りを会社説明会のコンテンツのひとつにしてもらった。

どういうことかと言えば、会社に来てくれたお礼に交通費や昼食をふるまうところもある。この厨房屋さんも同様のことを考えていた。

だったら、自社の商品、つまり厨房を使ってもらっている顧客の店舗に出向き、そこで食事をしながら学生と話す。

さらに店長やシェフから、厨房の使い勝手や自社の評価をコメントしてもらう。

説明だけでは「自社の厨房を飲食店オーナーに販売する」ということ以外は理解できない。
この方法をとることによって、顧客の姿や導入後のユーザーの感想を実体験で感じ取ることができる。

また「業務用の厨房」について、学生はこれまで就活のキーワードに入れなかっただろう。しかし、この方法をとることで、学生は「厨房と自分」を繋げることができる。

なぜかと言えば、「厨房」は自身の日常の中には表れてこないが、その厨房を使っている例えば、ラーメン屋は自分との関係性があるかもしれない。
これは、厨房という日常的に縁がないものが、自分に関係のあるものへと変わる瞬間である。

ちなみにこちらの企業は会社説明会に10名参加し、最終的に3名の内定者を獲得することに成功した。

チャンスは目に見えない。
しかしチャンスがどこにあるか考えよる者にはそれを見つけることができる。

NORIYUKI.

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