ふうこ

文字や文章、言葉が大好きです!

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最近の記事

私の嫌いなもの

昨日の夜、犬の散歩をしながら 新築のマンションの前を通った。 真っ白な壁、同じ玄関扉に同じ照明が 規則正しく並んでいて 「ああ、素晴らしい」と思った。 私は無機質で、かつ清潔感のあるものが好きなのだ。 全てが同じつくり、個性なんて欠片もなく 情感に訴えてくるものが何も無い物体。 最高だ。 この感性に、東京生まれ東京育ちの自分のルーツを感じる。 私の嫌いなものは、 古いアパートや団地、趣のある一軒家、 商店街、古い喫茶店や床屋、 昔からある銭湯、フォークソング、 夕暮

    • ガザ日記

      ついこの間までジェノサイドという言葉の意味を知らなかった。 “民族浄化”これは戦争じゃない。 イスラエル軍によるガザ侵攻について、初めて意識を向けたのは去年の11月頃だった。 「ある医師が、自分の息子の脚の切断手術を麻酔せずにおこなった。痛みによるショックで彼は亡くなった」というニュースをツイッターで見た。 また戦争か、酷い話だ。と思った。 それからも、ちょくちょくSNSでガザの話を目にしたような気がするけれど、自分の生活に必死なうえに、関係ないと思っていたから正直あま

      • 最近のこと

        最近の私は、いつになく充足感で満たされている。 何か特別なことがあったわけではないが、満たされている。 朝起きて、心に負担を感じることなく仕事に向かい(これは私にとって奇跡に等しい)、バタバタと目まぐるしく業務を終え、退勤する。 帰り道はいつも、今日の仕事を思い、少し嬉しくなる。 「仕事が嫌じゃない」 「仕事にやりがいを感じる」 これは現代社会で生きる社会人にとって、最も素晴らしいことではないだろうか。 仕事に精を出す一方で、私は最近 不要な人付き合いをスッパリと辞め

        • 嘘つき

          父がくも膜下出血で倒れた。 救急車で運ばれ、開頭手術をしたが未だに意識が戻らない。 目を瞑り管に繋がれた父の側で5日が経った。 出血が酷く目を覚ます可能性は低いらしい。 ーーーーーーーー これは私が作った嘘だ。 ーーーーーーーー 病院から電話をもらった時は動揺した。 わけもわからず涙が出た。 今は不思議と冷静で食事だってとれている。 こんな時でもお腹は空くし食べ物は喉を通っていくものなのだなあ、 なんて他人事のように思ったりする。 夜はあまり眠れない。 すぐに目が覚め

        私の嫌いなもの

          夕暮れ

          ひぐらしが鳴いている。 虫の声と、スピーカーから流れるジャズピアノの音が、 森の中夕暮れの空へと吸い込まれていく。 猛暑と言われる今年の夏も、山の中だと随分と涼しい。 お盆休みのちょうど中盤に、 風子は恋人の清水と愛犬のなるを連れ、山小屋へ一泊のキャンプへ来ていた。 タープを立て、家から持ってきたターンテーブルとミキサーをテーブルに置く。 それを清水が真剣な顔でいじっている。 ミュージシャンである彼は、こと音楽に関しては少しうるさいのだ。 スピーカーの位置を丁寧に調節して、

          飛行機

          飛行機は苦手だ。 遠いところへは行きたいのに、本当にこればかりはどうしようもない。 国内線jal2408便、窓際の席に座り、目をぎゅっとつぶって、 風子は吐いたりしないようになんとか気を紛らわそうとしていた。 鹿児島に住む兄夫婦の間に、第一子となる女の子が産まれたため、 一目会いに向かっているところだった。 「気の持ちようだわ、なんてわくわくするのかしら」 暗示をかけるように明るく前向きな言葉を頭の中で必死に唱える。 しかし心臓はどうしてもバクバクと高鳴り、 頭はクラクラし

          カルコ2

          「生まれてくる時代を間違えただけ。 時代が時代なら、カルコはとんでもなくすごいことをやってのけただろう」 「私が悪かった。家庭を持たせた私が、 父親をやらせようとした私が間違っていた」 「いい音楽や本当に美しいものをよく知っている人、カルコの審美眼は本物」 母から聞く父の話は酷いものばかりではなく、 心から尊敬していることが伝わる話もよくしてくれた。 父がしてきたことを考えれば、母に課された多大な苦労と、そうやって話せる母の懐の深さにこそ驚くようなものだが、 当時の私は

          壊したいギター

          私の恋人はミュージシャンだ。 今年で結成27年を迎える、結構有名らしいジャムバンド。 そのギタリスト兼リーダーを務める私の恋人は、 ギタリストらしく、暇さえあればギターを弾く。 私はそれが嫌でたまらない。 ミュージシャンの恋人として、 一緒に暮らすパートナーとして致命的だった。 交際を始めると同時に一緒に暮らしはじめた。 ちょうど今月で1年と半年になる。 付き合って最初の一年は、彼がギターを弾く姿を見るのはライブかスタジオ入りした時くらいのもので、 家でギターを触ること

          壊したいギター

          カルコ 1

          私の父親の名前は、カルコという。 勿論あだ名なのだが、 母が父のことをずっとカルコと呼んでいたので つい数年前まで父の本名を知らなかった。 あだ名を本名だと思い込むくらいには 私と父との関係は希薄なものだった。 というより、私は父についてほとんど何も知らない。 カルコというあだ名は、昔父が経営していたジャズ喫茶の名前が由来のようで、 父を古くから知る友人たちは、みんなカルコと呼んだ。 カルコは、私が小学一年生の時に私達との家族関係を終了することとし、多額の借金を残

          カルコ 1

          電話

          電話を取れなかった。 1月21日のお昼頃、私が指定した時間だ。 携帯も手に持っていた。 なのに、取らなかった。 バイトの面接の日程を決める電話のはずだった。 仕事を探し、面接を受け、働かなければならないと、そう思っていた。 着信音が鳴る。 動き出したいのか、まだ動きたくないのか、 気楽な生活をしたいのか、何か自分にとって意味のあることに没頭したいのか、 わからないまま、着信画面を伏せて机に置いた。 電話が苦手だ。

          ギターの音

          午前0時をまわった頃、一階からギターを爪弾く音が聞こえる。 しばらく指鳴らし程度に弾くと、今度はシールドがエフェクターに繋がれたようだった。 一階の音は二階へ良く響く。 カチャカチャというコードを電子機器に差し込む音が、階下の行動を全て察知させてしまう。 これは長くなるな。 今日もまた、明け方の空が白み出すころ、布団の右隣に人の気配を感じて目を覚ますのだろう。 そして私は、右隣から聞こえるいびきを聞きながら、なかなか寝付けないでいるに違いない。

          ギターの音