嘘つき

父がくも膜下出血で倒れた。
救急車で運ばれ、開頭手術をしたが未だに意識が戻らない。
目を瞑り管に繋がれた父の側で5日が経った。
出血が酷く目を覚ます可能性は低いらしい。

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これは私が作った嘘だ。

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病院から電話をもらった時は動揺した。
わけもわからず涙が出た。
今は不思議と冷静で食事だってとれている。
こんな時でもお腹は空くし食べ物は喉を通っていくものなのだなあ、
なんて他人事のように思ったりする。

夜はあまり眠れない。
すぐに目が覚めて細切れの睡眠になるため、昼夜の境がなくなってしまった。
明るく元気に過ごせる時と、不安が押し寄せて鬱々となる時とが交互にやってくる。
これはとても疲れることで、なかなか参っている。

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これも私が作った嘘だ。

「70代 多い病気」
「高血圧 病気」
「脳梗塞 入院」
「くも膜下出血 手術」
「くも膜下出血 意識不明」

Googleで検索をかけ、よりリアリティのある嘘を作り上げる。
仕事を休むことにして30分足らずでここまでの嘘が完成した。

勿論一気に全ては話さない。
職場に泣きながら電話をかけ、父が倒れたと伝える。
その日の夕方に詳細な状況を伝える。
あとは少しずつ、自分の心身が追い込まれていることを含ませながら現状を伝える。
そして、退職の意を伝える。

自分を守るためにここまでの嘘を瞬時に練り上げる。
嘘の内容や今後の流れまでもが一瞬で頭に思い描かれるのだ。
高校生の時から、私の嘘つきは始まった。
何度大きな嘘をついてきただろうか。
毎度罪悪感で苦しむ姿は滑稽で、
手間暇かけて嘘を作り込む時間はバカバカしい。
それでも自分に迫り来る不都合から1番楽に逃げ切るために私は嘘をつく。

これからも、きっと誠実には生きれない。

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