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*お仕事記録* 引越しは最大のモノ減らしチャンスなのに

月に1〜2回程度、引越しの梱包作業の現場に入ることがある。ひとくちに引越しといっても、いろいろなパターンがある。若い世代のお客様は、赤ちゃんが生まれる(た)・子どもの成長で手狭になったという理由で、今より広い部屋や戸建へ引越しということが多い。一方、60〜70代のお客様は、戸建からバリアフリーのマンションやサ高住、家の建替やリフォームで仮住まいへ、という暮らしのダウンサイジングのパターンが多い。

前者は“とにかく全部詰め”すればよいので梱包作業は大体早く終わるが、後者は残業しても終わらないことも多々あり。作業前に処分するもの・置いていくもののヒアリングをするのだが、それだけで1時間近くかかったこともある。そして「これは持っていく」と言われたタンスの引き出しの中は、何年も袖を通していないような服(ナフタリンの空袋散乱)や使い古したタオル(押入れには新品の箱入りタオルが山積み)。鏡台にはあと少しだけ入った化粧品の瓶やコンパクトがずらりと並び、引き出し一段は試供品でパンパン、もよくある話。

「これ新居でも絶対使わないよな……」という気持ちは封印し、ただただお客様の要望に従って迅速かつ丁寧に梱包することに精神を集中する。積み上がった段ボールと空になった引き出しで達成感は感じられるが、新居で段ボールの山に囲まれ、その山を崩すために使わないであろうモノを出してまた同じ場所にしまうお客様の労力と時間を考えると、つらくなる。

引越しは、自分の持っているモノ全てと向き合うめったにない機会だ。私も過去に2度経験があるが、その時に自分に問うたのは「これを新しい家にも持っていきたいか?新しい暮らしで本当に使いたいか?」答えがNOなら処分。

段ボールに【迷ったモノ】を入れるポイント
「捨てるかどうか迷ったら、保留」が原則
・迷ったモノだけ入れる段ボールを作り、新居でそのモノが必要になった時に、そのモノだけ取り出す
・シーズンオフの衣類も、シワを気にしないものならば段ボールに入れたまま置き、着たいと思ったものだけ取り出す ※防虫剤は入れておく
・ハンガーかけの衣類は、着たものを常に手前にかける(自分が取り出しやすい方に)→着ない服はどんどん奥へいく仕組み

モノの取捨選択には判断力と瞬発力、そして大量のモノに向き合う持久力と体力がいる。
高齢者のお客様にそれらを求めるのは酷な話だということは分かっている。だからこそ、梱包の前段階としてその判断を一緒にする時間があれば良いのだが……。
レシートや洋服タグなどおそらくゴミであろうモノも私たちの一存で捨てることはできないので、基本的には全部一緒に詰める。不要なモノを包んで運ぶ費用と時間を、先に不要なモノを取り除く部分にかけてもらえたらなあ、と切に思う。
梱包作業にお客様が支払う金額は知らないけれど、決して安くないだろう。それをポンと出せ、そもそも溢れんばかりのモノを買う財力があり、さらに大量のモノを置ける広い邸宅があることは裕福である証なのだけれど……。引越しという大きな節目でさえモノと向き合えない、いや、向き合う気力がわかないのだろう。

私が今まで行った「めちゃめちゃモノがある現場ベスト5」では、不思議なことに「モノ・ゴミの多さ」と「人の良さ」が比例していた。そして、見た感じ、家族仲も悪くない。そんなモノにも他人にも優しいお客様の要望に応えて、今の私はただひたすらに梱包した段ボールを積み上げていくのだった。

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