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【ものづくり】友人の新たな門出に物語を贈った

大学時代の友人が結婚。
週末に招待いただいた挙式は本当に素敵でした。おのずとものづくりをしてきた人たちが沢山集まったこの日、「はらっぱ展」と冠された参加者有志による作品展示会も同時開催。新郎新婦より出された<ピクニック>というテーマでそれぞれが作品を持ち寄りました。私はそこで物語を展示することに。

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ピクニックとはなにか

ピクニックというお題が意外にも難しかった。自然とか気分転換とかパッと出るキーワードだとつくりたいものが浮かばず、起源とかもたいした話じゃないから形にしにくい。すごく模索して色々歩き回った結果、タコと鉢植えの花のカップルの何気ない日常に落ち着きました。

きょうも、あしたも。

「少し出かけようか」
「私はひとりで歩けないから、あなたの負担になるのはいやよ」
「そう遠くへ行くわけじゃないさ。ピクニックだと思って、ね」
男は彼女をそっと抱え上げ、キッチンへと向かった。

「きみに内緒にしていたんだけど、この食器棚の奥に僕の好物をかくしていたんだ」
「まあ、私の背が届かないのをいいことにずるい人ね」
彼女はいたずらっぽく笑った。
男は困ったように笑い返し、「夜中にマヨネーズをかけて食べるのが好きなんだ」と言った。
「それじゃあ出かけよう」

ふたりは近所をぐるりと歩いた。
見慣れた道をただゆっくりと。

鉢植えの花は言った。
「ねえ、これがピクニックなの?どこもよく知っている場所だし、この道は昨日も来たわ」

男はしずかに言った。
「僕は今日ね、見たことのない景色をきみに贈ろうと思ったんだ。海で生まれた僕と、大地で育ったきみとの暮らしのなかには、いつも〈きみと見るはじめて〉が詰まっていると伝えたくなったんだよ。キッチンの戸棚の奥にも、近所のコンビニや街灯の隅なんかにも」

「ずるい人ね」
鉢植えの花はそう言って笑った。
緑道の葉が色づきはじめていた。

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ピクニックとはなにか(再)

きみに見せたい景色がある。きみと見たい景気がある。だから一緒に出かけよう。
シンプルにこれかなと思った時にふと、海の中に出かける話はどうかなと思ったのです。それで、海にピクニックにいくなら何を持っていくかなと妄想しているうちに、海のひとと土のひとが出かけるならどこかなに発展して、最後は結婚という特別な瞬間にいただいた機会だったので、一緒に生きている者たち同士の話になりました。ちなみにタコと鉢植えの花との出会いはインスタ。タコの好物はツナ缶。鉢植えの花が自力で歩いているシーンがここにはないけれど、この後自作モーターと車輪でどこにでも爆走するようになります。

企画者の想いが詰まった時間だった

新しい人生の門出に少しでも花を添えられたら。本当は昨春に式を挙げるはずが1年以上延期し、色々葛藤しながら迎えたこの日に精一杯を尽くしたいと思っていたけれど、細部に至るまで企画者、つまりは新郎新婦の愛情に溢れた時間と空間でした。

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出展者の制作の様子を1つの動画にして展示会場で流してくれていたのですが、それもまた素敵だった。(髪の毛長い自分久しぶりに見た)

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会場の看板はそれぞれが花を描かせてもらえてうれしかったの。

大切な友達に、末長く幸あれ。

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