子どもが好きな人は児童養護施設職員にならない方がいい

【子どもが好きな人は児童養護施設の職員にならない方がいい】


これは、はっきり言ってそうです。


まず、子どもが好きな人は、なぜ子どもが好きなのか考えてみて下さい。


多くの人が抱く子どものイメージは、「無邪気」とか「無垢」ではないでしょうか。


そういう子は、児童養護施設にはほとんどいません。いても幼児さんぐらいでしょう。


児童養護施設にいるほとんどの子が、保護者から何らかの虐待を受けて入所しています。虐待を受けていない場合でも、不適切な養育環境だったことは間違いないでしょう。


安心できる環境で生活していたら、児童養護施設には来ません。不適切な養育環境で育った子どもたちは、基本的には「大人は自分の嫌なことをする人」と思ってます。無理もないです。嫌なことをされてきたんだから。


そういう子は、大人の言うことを信じません。


期待もしません。


彼らにも、無邪気で無垢な時はあったと思います。


その時に、適切な愛情を注がれていないので、適切な愛情にどう接していいかわかりません。


不適切な養育環境で身につけた生き残りの技術を、彼らは施設でも存分に発揮します。


大人の顔色を注意深く観察したり、どれだけ悪い子になれば怒られるのか試したり、大事な人はいつか自分を捨てるのだから先に捨ててしまおうとしたりします。


たまに来る実習生にすぐ懐く子も、基本的には同じことです。誰でもいいから実習生に甘えます。


職員ときちんと信頼関係が築けている子は、実習生に擦り寄ったりしません。


そういう、顔色を見る子や怒らせようとする子、大人と信頼関係を築くことを避けている子を相手にするのです。


その中で、子どものことが好きだという気持ちが、どの程度長続きするでしょうか。まぁ長くは続かないでしょうね。


私は、「子どもが好き」というだけで職員を長く続けられるとはまったく思いません。


職員を長く続けるためには、単純に仕事を辞めない忍耐力と、自分に対する自信、すなわち高い自己肯定感が必要です。


それがない人に限って、「子どもに必要とされること」を生きがいにしがちです。


「子どもが好き」の背景に、「子どもに頼られることで安心できる」という気持ちや、「誰かに必要とされたい」という気持ちが隠れていませんか?


そういう職員は、まず長続きしません。


子どもに見抜かれて、利用され、捨てられます。


子どもたちは、自分を保護してくれるはずの保護者から、虐待を受けています。それでもその環境を生き抜いて、児童養護施設に保護されてきたのです。いわば生存者です。


子どもたちは、生き残りにかけてはプロ中のプロです。


脆弱な自己で対応しては、精神的に持ち堪えることは出来ません。

では、どういう人が児童養護施設職員に向いているのでしょうか。


【児童養護施設職員に向いている人】


①正直で誠実な人


これはどの仕事でも言えることですが、「正直で誠実な人」です。


子どもとの関わりで失敗した時、きちんと、「失敗してしまいました。」と言えない人がいます。


子どもの問題性は訴えるが、自分の対応の悪さを認められない人です。


そういう人は、成長の機会を失うばかりか、信用も失います。


自分に自信がない人ほど、そういう傾向があります。


友人や家族に、「頑固者」と思われていませんか?そういう人は、本当に自分が譲れないものを真剣に考えて見てください。


あなたが必死に守ろうとしているものを、考えてみてください。


私の経験では、世の中に見られる頑固者が守ろうとしているものは、99%以上が自尊心です。


いわゆるプライドですね。これがまた厄介なんですよ。


実績に基づいた自信は大切です。自信を持つことはとても重要です。


ただ、実績や信頼がない人の自尊心は、はっきり言って邪魔です。


プライドが高い人にかぎって、他者からの注意や指摘はまったく受け付けず、自分はバシバシ人に注意や指摘をします。


そして、他者を褒めたり、他者に良い評価をしたり出来ません。


あなたが思い浮かべられる、最も親しい人間について、良いところと悪いところを考えて見てください。


良いところの方が多かった人は安心ですね。これからも楽しい人生を送ってください。


悪いところばかり思い浮かんだ人、要注意です。


自分で自分のことを大した人間じゃないと思っているが、他人にはそう思われたくないただの小心者です。


なぜか、児童養護施設にはそういう小心者が職員として流れ込んでくる印象があります。


まず、子どものお世話をする前に、本当の意味での自尊心を取り戻してもらいたいといつも思います。


②日常を楽しめる人


もう一つは、子どもとの日常場面の些細なやりとりを楽しめる人です。


好きな映画の話やアニメの話で盛り上がる子どもと楽しめるか。


楽しく世間話をしながら食事が出来るか。


散歩中の会話が楽しめるか。


そういう些細な日常を楽しく送れない人は、施設職員になると注意ばかりする人になります。


要するに、注意や指摘をすることが子どもとの関わりになってしまっている人です。


子どもにルールを守らせることが第一になっている、まるでプールの監視員のような職員は、結構います。


子どもたちに必要なのは、監視ではありません。子どもたちも気づかないような彼らの魅力に光を当て、子どもたちが自分を大事に出来るように大事に扱うことが必要です。


ルールを守れる、日常生活が正常に送れるということはとても大切なことですが、子どもたちが「ルールを守って暮らしたい」「より良く生きていきたい」と思うことの方が大切です。


子どもたちにルールを守らせるためには、ルールを守りたいと思えるほど日常生活を大切に思わせられるかどうかにかかっています。


施設や職員が大好きな子は、施設のルールを破ろうと思いません。


職員が大好きな子は、職員が悲しむことをしません。


まぁ上記は理想論ではありますが、大事な前提です。


日常生活が楽しければ、楽しく過ごすために自分たちでルールを守ろうとします。


その、子どもたちが大切にしている日常生活に職員が入っていなければ、それはそれで問題です。


子どもたちの世界は時に残酷で、無慈悲だからです。


子どもたちの日常に職員が入り込み、一緒に楽しむ。


これが出来ないと職員としては適していません。


素晴らしい職員は、管理職になればなるほど、子どもと関わる時間を大切にします。


子どもと関わらないように勤務する職員を目にすることがありますが、何のためにこの仕事に就いたんだろうと思います。


③大切な人がいる人


これは家族でもいいし恋人でもいいし、自分自身でもいいと思います。


児童養護施設の仕事は、激務です。


施設によっては退勤時間が全く守られず、休日出勤もある施設もあります。


そういう場所で、自分の事や家族のことを大切に出来ない職員は、どんどん仕事を自分でもらってしまいます。


やることは無限にあります。どこかで線を引かなければなりません。


これがまったく出来ない職員が、やはりいます。


仕事が生きがいというのは結構なことですが、仕事に依存し始めるとろくなことがありません。


仕事は、常に自分の期待通りに動いてはくれません。


しかし、なぜか児童養護施設職員には、子どもが自分の思った通りに動いてくれないと怒る人がいます。


そういう人に限って、他に大切な人がいなかったりするんですよね。


とはいえ、施設だけで人生が完結してる職員でまともな人は、実は結構います。


レジェンドと呼ばれる人たちは、施設職員として人生を全うした人です。


私が尊敬する石井十次も、子どもたちのために尽力した人です。


そういう次元の人たちは、多くの凡人と一線を介することを理解しましょう。


多くの凡人が、奉公滅私に限界があることを知りましょう。


よく美談で、子どものために尽くす親の話を例に出す人がいます。施設職員も同じように子どもに尽くすことを美徳と捉えるような話をする人もいます。


私は、それぐらい子どもたちのために尽くしたいなら、養育里親やファミリーホームをするべきだと思っています。


自分の責任で子どもを養育出来るシステムが日本にはあります。それが養育里親であり、ファミリーホームです。


しかし、すべての子が上記のような環境で育ててはもらえません。


養育里親やファミリーホームは一般家庭で子どもを養育するので、虐待を受けて深刻な課題を抱えた子どもや、障害を持っている子は基本的に委託されません。


そういう子どもたちは、児童養護施設で養育するしかないのです。


私の私見ですが、愛情ではどう考えても解決しないレベルの課題に苦しんでいる子どもたちはいます。せっかく児童養護施設に入所できたのに、大人や社会への信頼が回復できずに施設からいなくなってしまう子たちです。

そういう子どもたちを、「私がなんとかしないと。」と思う職員がいますが、大抵は辞めていきます。子どもの課題に職員が押し潰されてしまうのです。


だからこそ、私たち凡人がしっかりとプロとして子どもと向き合うために、児童養護施設の仕事を最優先にしてはいけないのです。


大切な家族を守るため、自分の人生を楽しむため、そのための仕事として、やりがいのある児童養護施設の職員を選んでいる。そういう職員が最後はいい仕事をします。

子どもが好きな人は、せめて、養育里親を目指してください。そして、その先にあるファミリーホームの運営を目指してください。きっと、素晴らしい出会いが待っていると思います。


それでも児童養護施設で働きたいという方、そこまで言うなら、ぜひ一緒に働きましょう。


ここまで言ってなんですが、働き続けるとやりがいのある仕事です。


1人でも多くの方が、職員を目指してくれることを願います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?