見出し画像

そうだ、モデル化しよう。

モデル化」ってなんでしょうか?
実はあなたも日常ですでにやっています。 
――現実はとても複雑なものです。しかしたとえば、車や、家や、男、女、猫、犬…などの概念。それぞれ、個別の複雑で多様な存在たちをまとめたもの――つまり何らかの意味でモデル化したものです。当然それらの間には関係性もあることでしょう。
ね? 使ってますよね?
それをあらゆる局面でやって、考えの手助けにするのが、実は「科学的思考」の精髄だとも言えるかもしれません(たとえば物理学=現象のモデルの集合体みたいなもの)。

モデル化

あらためて言うと、モデル化とは、抽象化の一種であり、モノや出来事や状況など、何でも(図形的に)単純化して考えること、だと言ってよいでしょう。
別の言い方をすれば、単なる「図解」です!

具体例

「モデル化」とか「抽象化」とか、なんだか数学臭がして、拒絶反応が出るかもしれませんね。

しかしやっていることは、
『犬』と『猿』を考えて、『これらは仲が悪い』と言明する
ような行為にすぎません。ほら、図解だってすぐできますよね? (べつに犬や猿の絵を描く必要はありません。四角と、それらを結ぶ矢印、あとは説明の文字少々でじゅうぶんです。)

モデル化図解20200113

ちょっと訓練すれば、こんなことは簡単にできます。

まず『犬』や『猿』などの概念を切り出すこと。それには「タマと、ミーと、 にゃんちゅうと、ジバニャン…これらの共通点は、…猫!」などと考えていくだけです。つまり、個々の存在の共通点を取り出せば、(何らかの面に着目をして)とりあえず第一段階のモデル化、抽象化をしたことになります。

次に、『これらは仲が悪い』などと言明すること。そのためには、切り出した概念どうしの関係を観察したり考えたりして、表現するだけです。たとえば矢印を使って。

このように、いくつかの概念と、その間の関係性とをあわせることで、どんな現象でもひとつのモデル(図)にできます。

かの有名な構造主義は、そういった考え方を社会学の分野でやろうとしたものに他なりません。さらには、登場する概念やそれらの関係の時間変化までをも考慮しようとしたのが(本来の意味での)ポスト構造主義のはずでした、。いずれにしても、これらは単に「図解主義」と言ったほうが、実情をよくとらえていたのではないかと思ふ。

画像3

(浅田彰『構造と力』より)


構造主義のように「抽象的なものをさらに抽象化(モデル化)する」ような行為は、一段階高度なので、ちょっと訓練…というか、心がまえが必要かもしれません――いつでもモデル化してやるぞ!という。
でも、実はそれも簡単です。たとえば男と女、これを抽象化すれば人間など。猫と犬を抽象化すれば、動物や哺乳類など。
関係性だって、たとえば愛、憎しみ、情、憧れ…ときたら、「感情面での関係性」など、とりあえずはひとまとまりにくくれますよね(ひどいネーミングですが…)。
このように、いつでも、対象となる抽象的概念たちの共通点、すなわちくくれる共通項を見つければよいのです。つまり「似たもの探しをして、くくる」のがコツです。

モデル化して何がうれしいの?

さて、そんなモデル化のご利益は、すでにあなたが日常で証明しているはずです。家とか車とかペンや紙などなど、こういった「くくる概念」なしに、いったい日常生活(とくに会話)が立ち行くでしょうか? →いかないと思います!!

こみいった話だって、図解をされればわかりやすくなります。テレビ番組や、雑誌は、むずかしい話題を解説する図解の宝庫です。

画像3

(『週刊エコノミスト』2020年1月14日号より)


もしも、考えがごちゃごちゃして困ったときには、ぜひ「モデル化/図解」を意識してみてください。
きっと頭の中がクリアになっていく快感を味わえるはずです!


理数系の教養は国力の礎。サイエンスのへヴィな使い手の立場から、素敵な科学の「かほり」ただよう話題をお届けしたいと思っています。