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メスオオカミになりたい

私が心酔する心の師匠、メンターは「狼」だ。

骨も心も命も硬い草原オオカミは、オスもメスも意志が強く、最後まで血戦して、死んでも屈服しそうにない。オオカミの辞書には軟弱という文字はない。たとえメスが子どもを失い、オスが怪我をして、脚が折れ爪が割れても、その一時的な苦痛は、オオカミに報復の機会を待たせ、もっと狂気にさせるだけである。

『神なるオオカミ』姜戎著 より


オオカミを崇拝するきっかけになったのは「神なるオオカミ」(姜戎 著)という本だ。人生で5本の指に入るおもしろさだった。
観てはいないが映画化もされている。

“中国建国の父”である毛沢東により、理想の社会主義文化を創生するため1965年に始まった「文化大革命」。都会の学生を農村地で勤労させながら思想教育の強化をはかる「下放(かほう)政策」のもと、北京の学生チェンは内モンゴルへとやってきた。美しい大草原の中、伝統を重んじ、自然と動物と共存して生きる術を身につけ、喜びや苦しみを積み重ねていく。そして、遊牧民にとって最大の敵であると同時に最も崇拝する“神なる動物”オオカミと出会い、深く魅了されてしまったチェンは、危険を冒してまでオオカミの赤ん坊を育てようとするのだが…

ソニー・ピクチャーズ サイトより  あらすじ

日本にも黄砂が飛んでくるモンゴルの草原オオカミというのは、同じアジアに生きるものとして、心理的にも近しさを感じる。

この本では本編のあとに、「知的探索 ―オオカミ・トーテムについての講座と対話―」 として5章設けてある。
そのなかの、 中国の龍トーテムの起源は遊牧民族のオオカミ・トーテムではないか 、という考察がとても興味深い。その理由はいくつかあるが、 ひとつはその飛び方だ。
龍の起源とされているヘビやワニなどの爬虫類は体を横にくねらせる。 しかし龍は、縦にうねらせて飛ぶ。 これはオオカミがジャンプする動きと同じである、と。
龍には翼がない。 オオカミも翼がない。オオカミは翼がなくても飛べる、と信じられていた。 (西洋のドラゴンには翼がある)
カッコイイの双璧であるオオカミと龍が同じ起源だったらおもしろい。

オオカミの本でもう一冊面白かったのは、

「哲学者とオオカミ
愛・死・幸福についてのレッスン」
マーク・ローラーンズ

哲学者である著者が五百ドルでオオカミの仔を買い、11年間共に暮らす事で分かったことについての考察が語られている。学生より若くオオカミを連れて講義する、人間嫌いのイケメン大学教授の人生レッスン。人間とは何かという問いの、今までで一番納得できる答えがあった。オオカミって飼っていいの?という疑問にも答えている。

ブレニンにとって文明社会に居場所がないのは、彼がこれほど危険な動物だからという理由からではない。本当の理由は、ブレニンが危険さや不快さの点では、文明に遠く及ばないからだ。

哲学者とオオカミ より

日常の中でなにか見失ったような気がするとき、私は骨も心も命も硬く、死んでも屈服しない、メスオオカミになった自分を夢想するのだ。



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