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詩、短歌、短編小説などの創作物

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#詩

【詩】雨上がり

【詩】雨上がり

窓の外は土砂降り

激しく打ちつける雨音の中に

わたしの耳は捉える

猫の鈴が

… ちり

と 鳴るように

あなたのポケットの鍵が

チャリ …

と 鳴る

視線を上げる事なく
わたしの全細胞が
その音を捉える

ベルが鳴り

長い旅を終えて

あなたは

自分の部屋ではなく

わたしの部屋に来たのね

癒されたくて

あなたがわたしのベッドで

丸くなって眠った後に

ずぶ濡れの

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年下の男の子

年下の男の子

出会いは夏の海水浴場
こんにちはって声かけてきた
夜には花火で笑いあったね
そのまま付き合い始めたけれど
わたしハタチできみジュウハチ

花火大会の帰り道
きみはわたしの手首つかんで
人混みに押されずんずん進む
普通に手つなげないのかな
わたしハタチできみジュウハチ

ダブルデートはディズニーで
クライマックスのパレードは
きみと並んで見たかったのに
なんで男同士で見てんだよ
わたしハタチできみジ

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磁気嵐

磁気嵐

今宵 あなたと

オーロラの海

小舟にのって

出かけましょう

光のカーテン

くぐってかぶり

ベールにしましょう

とくべつな夜

あなたは笑って

三日月の目で

わたしを見つめ

唄うでしょう

星屑たちのコーラスが

天にこだまし祝福の

粒子を降らせ

踊るでしょう

【詩】CMYKRGB

Keiさんの「白と黒」からインスピレーションを得て書かせていただきました。

C 曰く 今日も爽やかで参っちゃうなーオレ

M 曰く 桜も藤も、アタクシがいませんとね

Y 曰く 濁りを加えてやろうか

Kは無言

R 曰く このハイヒールにひれ伏せ

G 曰く 趣味は読書と映画鑑賞です

B 曰く ここにあったグラス知りませんか

CとMとYが集まって粒になり、
天地創造を表してのち、すべて混ざ

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【炭酸刺繍】未完のタペストリー

【炭酸刺繍】未完のタペストリー

ひとつの泡は戸惑い
ひとつの泡は怒り
ひとつの泡は素知らぬ顔で
ひとつの泡は薄ら笑い
ひとつの泡は深刻な顔で
ひとつの泡は壁に張り付き
ひとつの泡は虚無に陥る
ひとつの泡は消えてなくなり
ひとつの泡は新たに生まれる
ひとつの泡は渦巻いて上り
ひとつの泡は隣とくっつく
ひとつの泡は涙を流し
ひとつの泡は親密に震える
ひとつの泡は静かにまどろみ
ひとつの泡は激しく咆哮する
ひとつひとつの泡の
どれもひ

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【返詩】ようよう白くなりゆくは

【返詩】ようよう白くなりゆくは

山根あきらさんの詩「ようよう白くなりゆくは…」に勝手に返詩を書かせていただきました。

咲いてこの世を 謳歌せん

散りて刹那に 酔う桜

見上げし人も 去りて後

花柄 紅き絨毯に

柔肌の下 紅き血の

潮の涙も かくあらん

穢れを纏う 雨垂れの

止みて 光の舞い踊る

ようよう白くなりゆくは

我が戯れの心ひとひら

【炭酸刺繍】危険物

【炭酸刺繍】危険物

for your eyes only

わたしの言葉は危険物なので

取扱いには厳重注意してください

誤った扱いをすると

あなたを破滅させる恐れがあります

取扱説明書は

読んだら泡になって消滅します

私の言葉は発したそばから

あなたの真心に刺繍されます

あなたは赤い糸と青い糸の意味を

決して間違えないこと

溶けて消えれば極楽

朽ちて残滓となれば地獄
#炭酸刺繍 三作目の参加

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【炭酸刺繍】 星と太陽

【炭酸刺繍】 星と太陽

☀️

イイコトしよう

きみとぼく

生まれたままの姿で

ソーダ水の海の中

太陽が嫉妬するくらい

イチャイチャしよう

⭐️

イケナイコトしよう

夜のとばりに縫い留められた

星たちが騒いでる

月に言いつけようったって

あいにく今夜は新月さ

☀️ ⭐️

イイコトしてたら怒られた?

構わないさ

自由なきみとぼく

イケナイコトって誰が決めたの?

太陽は身悶え輝いて

星はほ

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【炭酸刺繍】 ××××

【炭酸刺繍】 ××××

怖かったら目を閉じて

痛くないからだいじょうぶ

目に見えるのは輝きだけの針に

微かに泡の弾ける音がする糸を通し

口に咥えて両手の指を

あなたの全身に這わせて

××××を探す

透けた肌の下のもっと奥に

あなたの××××が眠っている

あなたが声をあげたところに

見つけた

あなたの××××をそっとなぞり

咥えていた針を持ち

刺す

弓なりの針を舞わせて

歌うように

リズミカ

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春の雨

春の雨

土砂降りの朝の道

傘にあたる雨音も激しい

その手に伝う衝撃がふと止む

頭上を線路が走る高架下に入ったのだ

向こうから来た男子高校生

高架下を通過するわずかの隙に

傘を傾け溜まっている雨水を落とした

軽く振ってまた傘をさす

さりげない仕草

何を意味するでもない

雨足が強い時に

傘の上にも雨水が溜まっていること

傾けると雨水が落ちること

高架下の一瞬のひと心地に

傘をはらう

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愛という名の毒

愛という名の毒

好きの反対は 無関心

無関心より毒なのが 愛

愛という名の

支配

暴力

愛より尊い 無関心

邪魔シナイデ

邪魔シナイカラ

けれど助けを求められたら

全力で救いにいく

命懸けても

それは愛ではなく

ただ

そうなっているから

宝物

宝物

小箱の中に

そっとしまわれて

忘れられているものは

たとえば

小学生の頃に読んだ星占いで

向いている職業の中に見つけた

探偵

ということば

だったりする

イリュミナシオン

イリュミナシオン

台形の陰を抜けると

まだ 力の弱い 透明な光が

優しく前髪に触れる

朝日とキス

前方を 湯気を吐きながら

ゆっくりと左折する車

賑やかなシジュウカラを

耳で見て目で聴く

掃き清められた道路

おはようございます

いいお庭ですね

おはようございます

いってらっしゃい

今度は木の枝の隙間から

ウインクしてくる

少し強くなった光

薄青い空に

ザリガニみたいな雲が

陽気に

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【返詩】蝋梅

【返詩】蝋梅

ingotさんの詩「蝋梅」がとても心に響いたので、勝手に返詩?を捧げます。

蝋梅

下り坂の途中で

ふいに記憶を呼び覚ます

甘い香り

あの日

決して変えようとしない日課で

古いレコードをかけていたあなた

突如 飛んだ針が

次の音へと着地するまでの

一瞬の永遠に

すべての嘘と

ひとつの真実が

香りの中に溶け込んで

詩を編んだ

裁く者などいない

裁かれる罪などない

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