社労士の泣き言
今、飲んでる。飲んでも、書かないと眠れそうにないので書く。眠れそうにない理由は、昼間の某ハローワークでの出来事だ。私は顧問先を退社する人の離職証明書を提出した。私にとっては、生まれて初めての解雇された人の離職証明書だった。
ご存知の方も多いと思うが、離職証明書には過去数か月の賃金額を書く欄がある。その欄にはA欄とB欄があって、A欄は月給制の場合に書く欄であり、B欄は日額制等の場合に書く欄である。A欄とB欄では、B欄の方が、基本手当(昔の失業手当)が多額になることがある。なぜなら、日額制等の方が不利なことが多いので、B欄には最低保証がついているからだ。
今回提出するのは日給月給の人であったから、私はA欄に記入した。日給月給とは、月額が決まっているが休んだ日は欠勤控除されるしくみのことであり、私の理解では月給制に含まれるためA欄に記入したのだが、それを見たハローワークの若い職員は、「この人は出勤日数が少ないので、事実上日額制としてB欄に書くべき」と言ってきた。
私だってB欄に書いてあげたいのはやまやまだ。だって、B欄に書いてあげれば、その人がもらえる基本手当が高くなる可能性があるのだから。しかし、労働契約では日給月給である人を、社労士の独断で日給制としていいわけがない。社労士はあくまでも事実を書面に落とさなければならない。だから「直すならそちらの裁量で直していただけますか?」と言うと、それはできないと言う。「それだったら、どういう時に事実上日額制としてよいのか、判断基準の根拠条文を教えてください」と頼んだ。政令でも通達でもガイドラインでもいい。何か拠り所があれば、私だってB欄に直してあげたい。でも、それもないのに勝手に直してしまったら、恣意的な行為になりはしないか。私の職責が問われるのではないか。
その職員は根拠条文を探し始めた。しかし見当たらないようで、周囲の職員に「こういう場合はB欄ですよね」と同意を求め始めた。しかし、同意を求められた職員は口をそろえて「A欄でしょう」と答えるので、その職員はどんどん上席の方に同意を求めていき、しまいには一番偉そうな人に「A欄でしょう」と言われてしまった。それでも腑に落ちなかったのか、今度は(おそらく)厚生労働省に電話をかけて同意を得ようとしたものの、そこでも「A欄でしょう」と言われ、結局A欄で落ち着くことになった。その職員は「いろいろな解釈があるので」と言って私に謝ってきた。
ここで私が書きたいのは、「ほ~れ、見ろ。私の言ったとおりだろうが」ということではない。実に、実に、後味が悪いのだ。その職員は、解雇された人に支払われる基本手当が少しでも高くなるように、懸命に、懸命に、動いていた。まったくもって稀有な貴重な公務員なのだ。それに対して私は、私の思いとは関係なく、私の職責を果たすことで頭がいっぱいだった。当然のことであるし、当然のことであるのだが、眠れない。飲んでも、それだけでは眠れそうにないのだ。だから書いてみたというわけ。
最後まで読んでくれた貴方、ぐだぐだに付き合ってくださってありがとう。