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「がんと移動の関係を考える インタビューvol.1 〜抗がん剤治療中の電車移動、ヘルプマークはつけてるけど〜」


CancerXとしてスタートするnote. 記念すべき記事の一本目はモビリティチームからです。モビリティチームでは、がんに関わる方々に「がんと移動」をテーマにお話を伺います。第一回の今回は、35歳の時に乳がんを発症、治療後に肺転移がわかりステージ4と診断され、現在も通院治療を継続しているふみさんにお話を伺いました。

普段は車で通院しているふみさんですが、抗がん剤治療中は運転ができません。治療後は、朦朧としている状態で電車に乗り込み、立ったまま寝ることもしばしば。とてもつらい症状があっても、がん患者さんは「見た目は元気」なのでちょっと厄介。ヘルプマークのさらなる周知が課題です。

運転も楽じゃないが電車を使うよりはよっぽど


―― 通院など、普段の移動はどのようにされていますか?

もっぱら車移動ですね。通院も車です。
今も通院中ですが、病院まで車で約1時間、運転して通っています。

例えば、電車で病院まで行こうとすると1時間半かかります。乗り換えも多いですし。外来の予約時間がちょうど通勤通学ラッシュにぶつかることもあって、とてもつらいです。
もちろん体調がすぐれない時の運転は本当に大変ですが、それでも電車を使うよりはよっぽどマシです。マスクしなくて良いですし、自分だけの空間という安心感もあって。

―― 運転できないくらい体調が悪い時もあったんじゃないですか?

本当に体がだるくて、めまいがしたり、運転が危険と思うこともあります。でも家族で運転できる人がいないので自分で行くしかなくて。なんとか這いつくばる感じで車に乗り込んで、気持ちを切り替えるためにコーヒーを飲んだりして気合を入れています。本当にダメな時は病院に電話して延期してもらっています。

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―― 例えば、術後の痛みやしびれがある中で、車の運転が大変だなとか、操作が難しいなと感じることはありましたか?

普通の国産車に乗っていますが、運転操作に特別苦労を感じたことはないですね。例えば関節痛があったり、指先とか、部分的にしびれがあるんですが、運転を難しく感じたことはないです。術後にフラダンスの動きでリハビリしていたこともあって、身体を動かすことに前向きなので、運転自体をリハビリと捉えているところもあるかもしれません。足に症状はないですし。

抗がん剤治療中の電車通院、つらくても立って寝ていた。

抗がん剤治療を週に一回していた時は本当につらかったです。眠気がひどいので車の運転はできませんし、電車で通院していました。それが一番しんどかったです。ふらふらで、お酒にひどく酔ったような感じ。帰り道の記憶がないくらいで。電車ではずっと寝てましたね、立って寝たり。

気づいてもらえなくても諦めずに、ヘルプマークが見えるように

ヘルプマークはずっとつけていましたが、朝は通勤ラッシュで座ることができませんでした。運良く座れた時にはもう「譲るのは難しいです!」って、ヘルプマークを外に向けて、頭を抱えて何も見ないようにうずくまっていました。

―― 通院や移動で大変な思いをされている時に、「こんな助けがあったら」や「気遣いが嬉しかったエピソード」などはありますか?

ちょっとしたアドバイスや心遣いがとても嬉しい

左乳がんの手術の後、身体の左側がもう全部ダメなんですね。電車の中で人に当たったりしたら激痛ですし。ヘルプマークをつけていても見た目は健康そうだったりするので、誰にも気づいてもらえない。そんな時に主治医の先生が親身になって相談に乗ってくれたことが嬉しかったです。「包帯巻きなさい」って言われました。それくらいしないと周りの人は気づかないって。その後も些細な通院中の苦労を相談したりしていました。

以前ヘルプマークをつけて歩いていたら、二十歳くらいの男性が「大丈夫ですか?」って言ってくれたことがありました。びっくりしました。「ぼくもヘルプマーク以前つけてたんです!」って。彼もヘルプマークが全然周知されてなくてつらい経験をしたそうで、もっと周知させないと!って思いました。たとえ気づいてもらえなくても、諦めずにずっとつけています。

がんのつらさは目に見えない

この5年間でいろんなことがあって、症状も様々でした。足は動くといっても全身倦怠感がひどかったり。身体が重くて、子泣きジジイが乗っかっている感じというか。特に階段の上り下りは本当に大変です。エレベーターがあれば良いのですが、やたら遠いところにあったり、これに乗ったら一体どこに着くんだろう?ってわかりづらかったり。
優先されるべき理由が見てわかる方々が多いと、目に見えない課題を抱えた私はどうしても遠慮がちになってしまいます、見た目は普通なので。がん患者で「いまつらい」ってわかってもらえないんです。

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例えば、車椅子マーク、妊婦マークって、貼っていると入口に近いところに駐車できたりするんですが、がん患者シールってないんですよね。
妊娠中に「入口近くに駐車したい」って思ったことはありませんでしたが、がんになってから利用したいシーンがたくさんありました。
なので、優先駐車スペースの枠に入れてもらえるようなマークがあったら良いなって思います。まあでも、がん患者が乗ってます!っていうのもちょっと抵抗はあるんですが。

―― がんと認知されることに抵抗があったりしますか?

がんっていろんな症状があるので、説明するのが複雑で。いまがんの治療中ですって言うと怖がられることもあります。そんな時、がん教育ってやっぱり必要だなって思います。

利用している電鉄さんに相談したらヘルプマークの啓蒙シールを貼ってくれた

私は神奈川県でも乗降数が多い駅を普段から利用しているのですが、もっとヘルプマークが周知されたら良いなと思っていました。がん患者さんも多く利用されているので、電鉄さんに「ヘルプマークの周知を促してー!」とお願いしました。なんとそれから車内にヘルプマークの周知を促すシールを貼ってくださって、電鉄さんには感謝してもしきれません。

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最近保育園が駅ナカにあったりするんですが、それと同じように、「障害がある人向けのコミュニティスペース」を駅ナカに作ったらどうかなと思っています。がんに限らず、多様な課題を周知したり、考えるきっかけにもなるんじゃないかなって。なかなか利益につながらないものですし、どんな形がいいかなと電鉄さんと相談しています。

インタビューを終えて

このインタビュー後、ふみさんは一件お出かけする予定があるとのこと。予期せぬものを買ったり持ったりすることを考慮してもちろん車で。1Lくらいのペットボトル一本でも持つのがしんどいそう。ちなみにカバンは斜めがけか肩掛けタイプ。リュックは便利だけど重力が偏るので使いづらいと。ふみさん、お出かけ前にお話を聞かせていただきありがとうございました!

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ふみさんのご紹介 

40歳(2020年12月現在)。
AYA GENERATION + group(アヤジェネレーションプラスグループ 愛称:アグタス)代表。小学生のお子さん3人(上の子は双子)のシングルマザー。趣味はフラダンス。
フラダンスは乳がんのリンパ浮腫、術後のリハビリにも良さそうで、積極的に取り入れている。お母様がフラダンスの先生で、ご自身もがんになってから本格的に始めたそう。







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