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愛着を描く名手【伊庭靖子】

「リアル」に感情のフィルターを重ねる

つるりとした磁器の表面
ベッドリネンのシワ
木漏れ日のような光の写り込み
日常の何気ないものを描く彼女の作品はスーパーリアリズムのようだけど、愛着や慈しむ感情が対象に重なって見える。

《untitled》2009

彼女は対象をアクリルに入れた状態で描くこともあり、確かに対象の色だけではなく周りの景色や光の色の写り込みまで描かれている。
モチーフが置かれている空間や、作家の生活が垣間見える瞬間である。
またレースカーテン越しのような描写もあったりと、なんだか実家のソファに寝転んでカーテン越しに庭を眺めるようなそんな懐かしさまで届けてくれる。

《Untitled 2018-01》2018


《まなざしのあわい》

度々グループ展で見ていた作家だが、東京都美術館で開催された個展《まなざしのあわい》であらためてその温もりを感じた。一室に展示されたつるっと輝く磁器が描かれた絵画に見入ってしまったのを覚えてる。
ただの写実ではない絵画の形を彼女の絵画が教えてくれた。

《untitled12-2009》2009

まるで、本当にそのもののよう、と言ったら語弊がある。
写真ではなくて、そのときの風や温度、触感すらも身体でわかってしまう、という「そのもののよう」。つるり、さらり、ひんやり。
展示会場からは触りたいね、というこどもたちの声が聞こえてきた。

作家紹介

■伊庭靖子
1967京都府生まれ

※記事中の展覧会


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