痕跡をめぐる【Reborn-Art Festival 2021-2022】@宮城県・石巻
常磐道を北上して、三陸自動車道へ。
しばし高速でひた走るとPAや道路標識に現在の放射線量数値を示す掲示板が見え始める。
何マイクロシーベルトから危険なのかさえ忘れてしまった私でも、この場所が確実に被災地であり、今でも苦しんでいる人たちがいることを改めて知る。
東北に行くきっかけをいつも作ってくれるのがこの芸術祭。
作品を鑑賞しに行くことと街の状況を見に行く目的で、毎回この芸術祭に足を運んでいる。
何も被災地のためにできない私の、唯一被災地のためにできることが、この芸術祭を通して街を見て、ささやかでもお金を落とすだと思っている。
道中はいつも不安な気持ちになる。
復興後の街は、区画整備が計画的すぎて、最近作られたまちという印象がどうしてもついて回る。
ああ、ここも流され、崩れてしまったのか。
走りやすすぎる長い直線の道路や、真新しい信号、一階部分に居住部を持たない住宅を見ると本当に痛々しい気持ちになる。
最初に復興記念公園を訪れた。
目[mé]の作品鑑賞プログラムを予約していた。
古民家の縁側のような構造物を積んだトラックに乗って、町の中を見ていく。
おばあちゃんの家の匂いがする車内から見える被災地は、新しくなった部分と傷ましさを抱えた部分が二分して見えた。自分ごとではなく、客観的に見てしまって映画やドラマのようだった。
園子温監督の「ひそひそ星」を思い出す。
これは惑星間を郵便物を運ぶお話。
荒れた土地にも要望があれば荷物を運ぶ。
その撮影地は被災地であった。
強いメッセージ性があるわけではないが、忘れられない作品。
作品の強さが際立ったのは、アイコンにもなっているこの作品。
元魚の加工工場の冷蔵庫に降り立ったこの作品は、サーフィンをしているスタイルだが、サモトラケのニケと同じ衣装を纏う。
サモトラケのニケは勝利の女神であり、頭の幾何学形態は違う世界や他次元への乗り物を表すものである。
この像は、人々を希望へと誘う象徴なのだろう。
この芸術祭は、いつも街を見せる。
作品だけではなく、風景をみせ、町をあるかせ、東北の空気を鑑賞者に感じさせるような構成をしている。
観光ではなく、祖父母の様子を見に行くような気持ちで。
次は大事な人を連れてこよう。
そう友人と話していた。
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