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『ボーコーエンから見た景色』season1:奴のコードネームはT・H・S

薄ぼんやりの春が明け、ようやっとの初夏です。ようこそ、コントラスト!といってる尻から、今日は大雨ざーざーぶり。いいんです。春が明けただけでいい。
こんにちは。イラストレーターの林です。

さて、前回前々回と「ヤムが喰った喰わぬ」やら「ジミツウ関節痛」と、図らずも〝きょうの健康〟めいた話題つづきとなっておりますが、たまたまの方も再訪の方も、お立ち寄りいただきありがとうございます。
ささやかながらタイトル画像に、お礼の気持ちを込めました。

そして、こちら全体画像です ↓ ↓↓

写真は18歳当時のヤム。
現在ヤムは21歳。
人でいえば100歳界隈。


はいっ。では今回も
こんな感じで、れっつごー。

目下、ヤムは膀胱炎の治療中。
発症から、かれこれ、ふた月を前にして終息の気配を漂わせている。

かしこみかしこみ 膀胱炎さま〜
このまま静かに おさまりくだされ〜

実はヤムさん、昨年4月に初の膀胱炎の症状が出た。
まあ、その時のしつこさったるや。
〝ぶり返す〟という言葉を、これほど憎々しく唱えたことはない。

その日、ヤムは、いつものようにトイレに行き、いつものように用を足し

「にゃ〜」と報告。
訳:おしっこ出たでトイレかたづけてやトイレ砂ちゃんと平たく慣らしといてなそれ終わったらこっちきて撫でて

いつものように情報量多めの「にゃ〜」を背に受け、トイレそうじを始めたわたしの元へ、再びヤムが戻ってきた。

はてな?

そこからヤムの熱心なトイレ参詣が始まった。出ては入り、入っては出てを繰り返し、やっとのことで落ち着くも、次回のトイレタイムから、また詣で始める。

そして出た。わずかな尿とともに出たよね。血片(けっぺん/血のかたまり)が。

(ひえ〜!)〝初の血片インパクト〟にあげる悲鳴を最小限に抑え、わたしは、それを(カシャッ!)とスマホにおさめた。わずかな量だが採尿成功。タクシーを呼ぶよね。ヤム in キャリーよね。

「GO pay で、お支払いします!」

便利よね。

れっつごー!========

15分後、ヤムとわたしはP動物病院診察室にいた。

P先生を前に、スマホの[画像_血片]を開こうとするわたしの右手に、謎のビニール袋が握られている。

(なにこれ?)中には、トイレシーツに包まれた〝血片そのもの〟が入っていた。

・・・覚えていない。
覚えていないが、あるんだよ。現物を持ってきていたんだよ。

時に不安が、おかしなテンションを誘うと、こうなる


「・・・P先生。こちら、先ほど出た血片です。」


もちろん、現物の方を渡すよね。

『あー、ちょうど尿道のカタチで出ていますね。』

「にょ、にょうどう……あっ、尿道。
 えっ、先生、ねこの尿道って、こんなに細いんですか?」

目をこするくらい細いよね。

『そうなんですよねー。猫の尿道は他の動物に比べても細いんですが、その中でも男の子は女の子と比べて、もひとつ細いんですよねぇ。これが尿路系トラブルにもつながりやすい原因でもあるんです。」

『血片でも血尿でも、おしっこが出ていればよし ♡ 』

と、P先生はヤムの頭をポンポンと撫でた。

おおらかだ。
その〝おおらか〟は膀胱炎に限らず、高齢のヤムとわたしにとっての〝この先〟に、とても大切になものにみえた。その症状に対してパーフェクトな処方が、ヤムにとってパーフェクトとは限らない。病気だけを凝視しない。ヤムをみる。

さてさて、そんなこんなで〝ヤムの〟膀胱炎治療の幕があけた。ハイシニアになった今、かかりつけ獣医の存在は、尚いっそう、大切で心づよい。
さぁ、れっつごー!

さてさて。ふだんのヤムのトイレ(おしっこ)は、1日に2〜3回。膀胱炎になると1回で出す量が減り、回数が増える。頻尿。炎症を起こしている膀胱壁は、腫れぼったく厚みが増す。厚くなっている分、硬くなり柔軟性がなくなる。結果、尿を貯めれる場所が小さくなっているのだ。
・・・うまくお伝えできたのか甚だ疑問だが、先へ進みます。れっつごー。

幸い、ヤムは尿道閉塞(おしっこが出ない)は起こさなかったが、安定して症状が治まっている日々が続き、次回で治療を終了できるかな〜と思いきや、再発。長引く症状からエコー検査もして、ヤムは慢性膀胱炎の診断が出た。そんなこんなを繰り返しながら、ぴたりとひと月。昨年5月、ようやく症状がおさまった。

よかったね、ヤム。よく、がんばった。

それから、まる一年。慢性膀胱炎など存在しないかのような、すこやかトイレライフを満喫していたヤムだが、今年4月。こういう時に限って〝動物病院休診日〟という、ありがたくもないオプション付きで、あの憎々しい奴のお出ましとなった。

ジャジャ〜ン!


膀胱炎カムバック in 2023。
・・・のぞんでいない。呼んでいない。
ほっっっんと、勘弁してやってくれ。

膀胱炎というと、真っ先に細菌が膀胱に入ったのかと想像するが、ねこの場合は然にあらず。細菌〟由来もないことはないが、少ないらしい。
では結石・結晶由来か?
ねこと暮らす方の多くが、一度は耳にしたことはないだろうか。ストラバイト結石・シュウ酸カルシウム結石。この結石や結晶が膀胱粘膜を傷つけたり、尿道に詰まったりして膀胱炎になる。細菌にしろ結石/結晶にしろ、尿検査をすれば〝尿沈渣〟という項目にプラスが出る。前回も今回もマイナスのヤムは、結石由来も消えた。

さて・・・。

ここで真打ちの登場となる。ねこの膀胱炎の約6割を牛耳るといわれる、あいつ。
その名は・・・

〝特発性膀胱炎〟


特発性。突発性ではなく特発性

〝特〟ってつくから、さぞや特別な理由が!!!

と、前のめりで「正解!」のピンポン音を待ったが、特発性の意味するところは、わたしの想像の斜め上だった。

検査をしても〝特に理由もないのに〝発する〝性

ということだそうな。

T(とく)H(はつ)S(せい)
膀胱炎界きっての大物フィクサー。幅は効かせるが素性は明かさない。

調べてみると「ドライフードのみの食生活」「お水を飲む量が少ない」「トイレが気に入らない」などなど、環境の変化やストレスが原因ともいわれているようだ。わたしもよく考えてみたのだが、ヤムの場合、このあたりに思い当たることはなかった。
今現在〝ねこの特発性膀胱炎〟の原因は、まだよくわからないというのが現状のようだ。

見えぬけれども あるんだよ
見えぬものでも あるんだよ

金子みすゞ 「星とたんぽぽ」より

そうだ。あるんだ。
金子みすゞの詩は、いつだって普遍だ。

ヤムの膀胱炎発症時、前回と今回に共通していることを考えてみた。

4月 春 季節性なのか?
・・・ならば、花粉 黄砂・・・いやはや、これ以上、浮かびませぬ。

ただ、〝ねこの宿命〟といわれて久しい腎臓病も、2017年、進行をゆるやかにする薬が出た。何より、宮崎徹先生の【AIM発見】のおかげで〝治療薬〟完成間近と期待されている。特発性膀胱炎の原因も「見えたよ〜!あったよ〜!」と、5年後10年後、そんな声が聞こえてくるかもしれない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
本日は、これにて〜!

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