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75歳の母、はじめてのキャンプ旅行。

母子キャンプ、なんて言葉がある。文字通り、母と子がキャンプを楽しむことなのだけど、幼い我が子と母親が思い出の旅に出る微笑ましい姿を思い浮かべることが多いでしょう。僕自身もそうだった。ところがつい先日。というか、GWの前。ふらっと立ち寄った実家でビールを飲んでいると、突然、母が「キャンプやってみたいわね」と言い出した。何事かと思って驚いたけど、どうやら近年のキャンプブームに影響されたようで。年配の方が楽しむ姿をテレビで見かけたらしい。

結論、キャンプを楽しんでくれたみたい。

75歳にもなると、老後の話から、死後の話をするようになる。葬式はどうする、墓はどうすると。うちは母子家庭で、近くに頼れる親戚がいるわけでもなく。お盆的な行事なんてないし、年末年始に親戚が自宅に押し寄せるようなこともない。人の生死に関わる行事に関わることのない、ある意味自由な家庭で育ったのだけど、一般の家庭を見て面倒くさそうに感じていた「その家のしきたり」が、この時ばかりは少し羨ましくもある。考えなくても答えがあるから。

あと何年生きられるかわからないから、やれるうちに。なんて話す母がいうワガママには、なるべく付き合ってやろうと思うのである。

母は高知県の山奥育ち。飼っていた鶏を締めて食し、ヤギの乳を飲んで育った。通学路は「にこ淵」の脇にあった整備されていない山道。にこ淵とは、仁淀ブルーで知られる仁淀川の源流です。国土交通省が発表している「水質が最も良好な河川」に過去8回も選出されているほど美しいのが特徴です。

そんな山奥の木々に守られていた「にこ淵」も、今ではすっかり整備されおり、誰でもその美しさを拝むことができる。観光案内には「水神様の化身の大蛇が住む神聖な場所」と書いてある。母もその伝説は幼少期から聞いていたそうで、「にこ淵には近づくな」と大人たちから大変厳しく教えられていたそうだ。「あんなに怖かった場所が、今じゃ観光地だもの」と驚いている。仁淀ブルー観光協議会のWEBサイトがあったので、リンクを置いておきます。


そんな、山を愛し、山に愛された母を連れて、キャンプへ出かけることにした。場所は、三重県の「かぶとの森テラス」。

かぶとの森テラスはオープンから5年ほどのキャンプ場です。管理棟も綺麗だし、トイレも清潔。事前に予約すればシャワーもつかえる。炊事場でも温水を使えるので、冬キャンプでも安心して利用できるとても良い場所。どこからが「高規格キャンプ場」というのかわからないけれど、そう言われても頷ける充実っぷりです。

右側の建物が管理棟。山の中にあるのどかなキャンプ場。

目的に応じたサイトが複数用意されている中で、選択したのは野営サイト。本当は区画サイトを予約しようとしたのだけど、GWの混雑もあって予約でいっぱいでした。野営サイトはその名の通り、整備された区画サイトとは少し異なる趣。杉林の中、よりワイルドに自然を感じられるサイトです。山での生活を楽しんでくれるんじゃないかなと期待した。

ここが野営サイト。杉の木がたち並ぶ、自然を感じられるサイトです。
この道のり。2人分の荷物を運ぶには、なかなかハードです。

野営サイトは駐車場から離れていたので、2人分の荷物を運ぶのはちょっと骨が折れたけれど、設営してからひといきつく時間は格別。少し肌寒さが残る気候。母の体に負担がないか心配したけれど、特に問題なし。どっしりと椅子に腰掛けて、おいしいビールに舌鼓。「はぁ〜、いいわねぇ」とリラックスできているようで、とても安心した。年寄りを連れてキャンプをするには、かぶとの森テラスはとても良い場所だと思いました。

やりたかった経験を済ませ、パズルゲームをしながらくつろぐ母。

陽が落ち始めたら、焚き火の時間です。その前に、焚き付け用の薪をつくるために、薪割り。斧を振り回させるのは危険なので、より安全に楽しめるバトニングを。子供みたいにはしゃぎながら「やりたい!やりたい!」とせがむ母に、ナイフの持ち方、刃の向き、そして実際に割る姿を見せる。それから、そばについてやらせてみる。パカっと割れた時の気持ちよさはやっぱりクセになるみたいで、疲れるまで夢中で楽しんでいました。

はじめてのバトニング。子供の頃は薪でお風呂を炊いていたそうです。

焚き火を始めたころには、2本目のビールが空いていました。焚き火をすると、普段できない話ができる、なんていうけれど、特にそんなことはなく。丸亀製麺が美味しいとか、思っていたよりキャンプが楽しいとか、ハマったらどうしようとか。母が遠足みたいに買い込んできたお菓子を食べながら、そういう他愛のない話をしながら焚き火を楽しんだ。

ファイヤーブラスターを「火吹き竹」という母。楽しそう。

キャンプ飯は、僕のお手製ビーフシチュー。最初は「レトルトでいいよね」なんて話していたけれど、キャンプらしいなにかを食べさせたくて、作ることにした。簡単な料理だけど、それでも立派に美味しい。外で食べるといつもと違うね、なんて話しながら、雲に隠れる星を眺めるのでした。

おしまい

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