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極限の中で

アラスカの収容所から脱走した2人の囚人。

迫り来る追っ手を振り払い、やれやれと乗り込んだ貨物列車は、止めることの出来ない鉄の塊と化した暴走列車だった…

映画『暴走機関車』(原題:Runaway Train  1985年  アメリカ)

この列車内の女性乗務員と2人の囚人。
列車がどんどん加速し、もはや止める術はなく、谷に転落して死を待つのみの極限状態に置かれ、精神的に追い詰められていく3人。

喧嘩を始めた囚人2人に対し、女性が思わず叫ぶ。

「ケダモノ!」

それに対する年配の囚人のセリフ。

もっと悪い。人間だ。

この映画の核となっているのは、ラストに出てくる下記の文章。

"No beast so fierce but knows some touch of pity."
"But I know none,and therefore no beast." 
Richard Ⅲ ─  William Shakespeare

獣でさえ哀れみの心を持つ。
それさえ持たない私は、獣ですらない。
『リチャード三世』 ウィリアム・シェイクスピア

『リチャード三世』


人間は、時と場合によってはケダモノ以下になる。
それを、極限に追い詰められた人間の心理を通して描かれている作品。

列車内でさらけ出される人間の本性と、それを優しく包み込みかのような雪原の美しさ。

どんな悲劇も受け止めてくれるかのような真っ白な大自然の中に、まるで暴走機関車が吸い込まれていくかのようなラストシーンが印象的。


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