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お店とお客様の関係を超える!「本屋を拡張する」青山ブックセンターコミュニティー支店 #コミュフェス

青山ブックセンター(以下:ABC)は、表参道駅から徒歩5分の立地にある本屋です。デザイン・広告・写真・アートといったクリエイティブ系書籍をはじめ、「青山ブックセンターならでは」の選書にファンが多く、「SNSにも強い」本屋というイメージを持つ方も多いかもしれません。

2019年12月、本屋としては初めてのオンラインサロン「青山ブックセンターコミュニティー支店」を開設しました。

今回は、ABC本店の山下店長と青山ブックセンターコミュニティー支店長の松下大樹さん、発酵デパートメント支店長のまーちんさんにご登壇いただき、活動内容やコミュニティと共に歩んでいく本屋の未来をお話いただきました。

<Profile>

山下優
青山ブックセンター本店 店長
アルバイトとして青山ブックセンター本店に入社、2018年11月に社員登用と同時に店長に就任する。「本屋を拡張する」をテーマに、これまでの本屋のスタイルを超えた施作を行い、Twitterを通じたお客様との関わり方が業界内外からの注目を集める。その一つとして青山ブックセンターコミュニティーを設立。
松下大樹
青山ブックセンターコミュニティー支店長
青山ブックセンターのいちファンとしてお店に通っているうちに、コミュニティ設立を知り参加する。運営メンバーとして活動していたが、コミュニティの方針をメンバー中心型に変化させていく中で、青山ブックセンターコミュニティー支店の「支店長」となる。
まーちん
発酵デパートメント支店長
コミュニティ参加直後に行われたイベントにて、青山ブックセンターが書籍棚を監修する下北沢の調味料専門店「発酵デパートメント」の運営担当となる。

「本屋がお客様と共にお店を創る」コミュニティ

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店長の山下優さんは、SNS上でのお客様とのコミュニケーションを大事にする書店員として、業界内外から注目を集めた方です。「お客様とつながる」ことにこだわった彼はなぜ、コミュニティを持とうと考えたのか。その経緯から、対談は始まりました。

山下:書店員としてSNS上でお客様と交流することは日常となっていましたが、もっと直接的に関わることはできないかな? と、ずっと考えていました。

「本屋を拡張する」をテーマに、慣習に囚われない活動をしてきましたが、「コミュニティを持つことで新たに実現できるものがあるのでは」という期待はありましたね。明確な活動内容や目的があったわけではないですが、何かが変わるきっかけになればと。コミュニティは、そこに集まる人によって変化していくものです。だから今も、活動をしながらどんどん形は変わっています。

松下:12月で、開設からちょうど1年ですね。せっかくなので、青山ブックセンターコミュニティーの活動を、ご紹介いただけますか?

山下:コミュニティーメンバーが集うFacebookページに日々投稿がされたり、お店を使ったイベントの企画・実施など、ABCを起点としたコミュニケーションを行える場になっています。

山下:コミュニティに入ってくださったお客様とは、より距離感が近くなったと聞きますね。同じ常連さんでも、「どんな方でどんな本が好きか」まで理解できているのは大きいですよね。メンバーとの交流を通じて、他のお客様との関わりのヒントにもなりますよね。

松下:なるほど。それでは、お客様との関わりを深めるために山下店長はTwitterを積極的に使っていたんですか? Tweetへの反応速度、めちゃめちゃ早いじゃないか。 例えば僕が「ABCでこれ買いました〜!」ってつぶやいた時の、「いいね」や「リツイート」の速さたるや。

山下:たまにbotですか? って言われるんですけど、手動でやってます(笑)

まーちん:めちゃめちゃ早いですよね…(笑)

山下:純粋に、お店に来てくださった方の反応が見えると、嬉しくて手が動いちゃうんですよね。「お客様目線のABC」が、他のお客様に伝わることもメリットだと思います。口コミのような形で客観的な意見をいただく。時には辛辣な意見もありますけど、それに対する姿勢までを見てもらう感じですね。

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松下:なるほど。最近は、山下さん以外の書店員さんもTweetする機会が増えましたよね。いちファンとしても、書店員さんの顔と名前がわかるだけでも親しみやすいし、お店に行った時に信頼感が増します。

山下:これまでABC=山下だったのが、最近では他の書店員への取材も増えてきたんです。それがすごく嬉しくて。素晴らしい棚づくりをするスタッフは、自分以外にもいっぱいいるし、あくまでその集合体がABC。近年自分の色が出過ぎていたので、いい意味で色が重なり合う状態になってきたなと感じています。

松下:青山ブックセンターコミュニティー支店というのは、山下店長にとってどんな存在ですか?

山下:お客様が何を求めているかが、より深いレベルで感じられる場所ですね。店頭に置いてあるアンケートとか事務的なものじゃなくて、集まる人々から自然に感じ取れる。この後話に出てきますが、監修しているお店の棚の管理をメンバーさんにお願いできたり、お店のスタッフだけでは手が回らないことを、コミュニティのみなさんに支えてもらっています。本当に大きな存在です。

ABCからメンバー起点へ、大きく舵を切った理由

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コミュニティ開設当時は、山下店長を中心に活動していた青山ブックセンターコミュニティー支店。2020年9月に「支店長制度」を採用し、メンバー主体のコミュニティへと変化を遂げます。そのきっかけとは、何だったのでしょうか。

山下:ABCのコミュニティと言いつつ、開設当初は僕の発信や稼働がメインになりすぎていることに少し悩んでいたんです。コミュニティ作りの先輩であり、運営を手伝ってもらっている前田デザイン室の前田さんに相談して、メンバーが自発的に動ける組織にしようと決めました。

そもそも、お店とお客様という関係でい続けたかったわけではなくて、メンバーと一緒に何かを取り組みたかったんですよね。

松下:そして、僕が運営から「支店長」という役割に変わりました。

山下:あだ名が「委員長」で他のメンバーからも慕われていたので、そのまま「支店長」に変えてもらって(笑)役割につく人は交代もするだろうし、いい意味でその人の色でコミュニティが変わっていくというのも、面白そうですよね。

まーちん:そもそも、松下さんはなぜ青山ブックセンターコミュニティー支店に入ったんですか?

松下:もともとABCのファンだったので、山下さんのTwitterでコミュニティーが始まることを知って入りました。信頼している本屋さんが新しいことにチャレンジするなら、その姿を近くで見ていきたいじゃないですか。

まーちん:私はまだ入って2ヵ月なんですけど、この1年間で、どんな取り組みをしてきたんですか?

松下:最初のイベントが、長野県松本市にある印刷所の立ち合いツアーですね。ABCによる出版プロジェクト『発酵する日本』の、印刷を見に行くという貴重な経験をさせてもらいました。

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山下:ギリギリコロナの影響の前だったんですよね。ちょっと見学して松本観光でもするのかなと思っていたら、みなさん興味津々で、長い時間お世話になりました(笑)でも藤原印刷さんも読者との新しい距離感を喜んでくれましたよね。

松下:だって、あんな機会ないじゃないですか! いくら本が好きだとはいえ、突然印刷所に行っても、専門用語はほとんどわからないんですよ。でも、間近で見られることで体感して理解できるというか。

山下:いろいろ落ち着いたら、もう一度やりたいイベントですね。刷り上がったものを販売するまでにまたいろいろ作業があるんですけど、それもみなさんが手伝ってくださって。

松下:出版前から制作風景を見ていたメンバーが勝手にTwitterで発信して、それが宣伝になって。少しは自分たちも売上に貢献できるのかなって、楽しかったんですよね。

山下:これは通常の出版社さんとはなかなか実現しにくい企画なので、なんでもOKにしてくださった著者の小倉ヒラクさんに感謝ですよね。面白い取り組みになりました。

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松下:その後は、神保町での古本屋ツアー。10件回って、それぞれがずっしり買って帰るとか。その時も藤原印刷の東京支社にお邪魔して、印刷についてみっちり教えていただいたんです。ありがたいですよね。

もっと気軽なものだと、ABCに行った後に、近くの居酒屋で本をつまみに飲むとか。これが結構面白くて、人が集まりましたよね。

山下:この後コロナになって、オンラインメインになったんですよね。リアルの楽しさをどうオンラインに持っていくか? コロナ=なんでもオンラインは違うなとは思っているので、ABCならではのイベントを、みなさんが安心して過ごせる状況を作りながら、オフラインも少しずつやっていきたいですよね。

松下:一番最近の取り組みは、「コミュニティで選んだ選書コーナー」です。この間までは一人のお客さんだったのに、いまや自分たちが選んだ本がABCの棚に並ぶんですよ!

山下:これがね、しっかり売れるから面白いんですよ。書店員じゃない方がポップを作るのに、お店との深い関わりがあることが伝わるんでしょうね。お客様が、手にとってくださるんです。

松下:書店員さんになるか、このコミュニティに入るか以外では、なかなか経験できない体験ですからね。ぜひ2回目、開催したいですよね。

「発酵デパートメント支店」そして、新たな展開は?

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メンバー主体のイベントも増え始めた頃、もう一つの支店が立ち上がります。それは、ABCが棚の管理を任されている下北沢の発酵専門店「発酵デパートメント」支店。支店長に名乗りをあげたのは、入会直後のまーちんさんでした。

まーちん:私は9月に入会したんですけど、初めて参加したのが下北沢のBONUS TRACKにある「発酵デパートメント」でのイベントだったんです。その時に、ABCが選書を担当しているということと、その棚の担当者をコミュニティから決めたいってお話がありました。私はもともと本屋さんになりたくてこのコミュニティに入ったので、経験はないけど、やれるならやってみたい! と手を挙げました。

山下:「発酵デパートメント」は、『発酵する日本』の著者でもある小倉ヒラクさんが手掛けるお店です。月2回ABCから選書を送っていて、その品出しやお店でのフェアの企画も一緒に手がけてもらっています。

まーちん:イベントへのゲストのアサインも「この人呼びたい!」って意見を出して、調整したり。来年は開催できるといいなと思いつつ、状況を見ながら進めています。

山下:発酵デパートメントでの本の取り扱いは、以前は調味料が並ぶ一角に小さく展開されていたくらいなんです。でも、コロナの影響で周りの書店がどんどんん閉まり始めた時期から少しずつその面積が大きくなって、今はかなり大きな棚です。すごく貴重な場になっていますよね。

まーちん:ヒラクさんは「何をやってもいいよ」って任せてくださるので、すごく面白いです!

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山下:「書店員にはなれないけど体験してみたい」という方には、おすすめですね。だんだんお客様のニーズも掴んできたので、今後は分析をしながら選書もしたり…そこでメンバーそれぞれの強みを生かしてもらえたらと思っています。

松下:これ、結構本格的な活動ですよね。

まーちん:大体、隔週金曜日に行っています。この出会い自体もコミュニティに入っていなければないですし、まず挑戦してみる場所があるって、素敵なことですよね。「やる or Do」の精神です(笑)山下さんがいらした時に、本棚の作り方を教えてくださったりもするんですよ。「次の興味を呼ぶのが、棚づくりの醍醐味なんですよね」って話してくださって。

山下:ここまでマンツーマンで話すこと、スタッフにもないかもしれないです(笑)

松下:実際に棚を触りながら教えてもらえるって、すごい贅沢じゃないですか!

まーちん:貴重な体験をさせてもらっています。私普段エンジニアなので、本棚も小売も関係ない職種なんですよ。会社で過ごす以外の時間で、コミュニティだからこそできる経験をさせてもらっています。

松下:これから「発酵デパートメント支店」を、どんな風にしていきたいですか?

まーちん:これも山下さんに教えてもらったんですけど、「人の顔・人格が見える棚」になるといいなと思っていて。「調味料屋さんなのに何これ?」って引っかかる本が置いてある棚って、面白いじゃないですか。

本って気軽にAmazonでも買えますけど、やっぱりリアルで見て、偶然手に取る経験が楽しい。その体験を、なぜか調味料屋さんでやる。それが面白いよなって思っています。

松下:青山ブックセンターという基盤があるからこそできる、他業種とのコラボですよね。その運営にコミュニティメンバーが関わる。「本屋を拡張する」という目的を少しずつ実現していきますね。

山下:勝手に動いている感じがしていて、この「勝手に」がいい意味でいいですよね。これから、発注の部分も任せていけたらいいな、なんて思っています。

まーちん:それはいよいよ、本屋さんですね!

松下:コミュニティを起点に、ABCの支店をどんどん増やしていきたいですよね。

まーちん:まずは、「発酵デパートメント支店」の売上をあげます! コミュニティメンバーで施策を考えて、結果を出して喜び合えるような場にできたら嬉しい!

松下:僕としては、青山ブックセンターコミュニティー支店は、あくまでABCの支店。ABCを好きな人が集まる場所であって欲しいし、ABCのことをまだよく知らない方には、知るための一つのきっかけになれたら嬉しいですね。

山下:最後に宣伝になっちゃうんですけど、もうすぐ2冊目ができます! 12/13(日)発売予定です。状況により、サイン会やイベントも予定しています。これ、著者の方がたまたまコミュニティメンバーだったんですよね。

実は錚々たる著者さんが、このコミュニティに入ってくださっているんですよ。そのつながりもあって、本の発売からイベント企画までを、裏側から覗いていただくこともできます。普段はなかなか見れない光景なので、青山ブックセンターコミュニティー支店、まだまだ面白くなるんじゃないかなと思います!

青山ブックセンターコミュニティー支店がおすすめする本は?】

『発酵する日本』 / 小倉ヒラク

青山ブックセンターが手掛ける出版プロジェクト・Aoyama Book Cultivation第1弾!著者である小倉ヒラクさんが訪れた、47都道府県の知られざる発酵文化をまとめた写真集。
「写真がとにかく綺麗なので、是非手にとってみてください(山下)」

12月13日(日)発売!
『ALL YOURS magazine vol,1』
https://aoyamabc.stores.jp/items/5fa0e622b00aa369a0d2ce12

Aoyama Book Cultivation 第2弾!
「雑誌と本の間のような一冊。章ごとにテーマが変わり、色々な角度からALL YOURSについて知ることができる本になっています(山下)」

「青山ブックセンターコミュニティー支店」への参加はこちら
https://community.camp-fire.jp/projects/view/207496

執筆/ 柴田 佐世子
編集/ 柴山 由香
写真/CAMPFIRE Community
バナー制作/伊庭詩音

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