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【句集紹介】山嶽 山口誓子句集を読んで

・紹介

俳句を少しでも嗜んだことがある人ならば、下記の2句はどこかで聞いたことがあるであろう。

夏草に汽缶車の車輪来て止まる
ピストルがプールの硬き面にひびき

山口誓子。ホトトギスの4Sの一人にして、水原秋櫻子と並び新興俳句運動の指導者的存在なった人物である。

誓子の作風は、一般に、都会的であったり、知的で即物的であったりと言われている。小生もそのような考えを持っていたが、今回紹介する句集「山嶽」を読んでみると、誓子の違った一面も垣間見ることができる。

山をテーマにした句集だからなのか、とにかくスケールが大きい句が多い。また句の中に、「孤高」と言っても差し支えないほどの格調高さがある。

ホトトギス時代の写生的な眼をしっかりと持ちつつ、花鳥諷詠以上の、生命に対する尊厳や、神聖的な自然への賛美。悠久の時の流れなどが、本句集めるが感じ取れた。

そして、どこか本句集からは一貫した感じとして、誓子の「悲哀」というものが感じ取れる。誓子というか山に対したときの人間の「矮小」さとでも言えるだろうか。

興味のある方は是非一読していただき、誓子の俳句を堪能していただけたらと思う。

・厳選10句

山焼きや賽の河原へ火のびたり

降るとき雪岳天に群立す

秋山に秋山の影倒れ凭る

猫歩く枯山中にみごもりて

唯一人冬山下り來るに會ふ

高嶺下りそこより又も下り下りる

北方に遠祖の如き雪の嶺

吾が降りし夜の雪嶺に残る者

全山を葡萄の棚が青くする

大文字は消えたり魂を送り終へ

・作者略歴

明治34年11月3日生まれ。山口波津女の夫。俳人。本名、新比古 (ちかひこ) 。第三高等学校を経て1926年東京大学法科卒業。在学中の 22年に水原秋櫻子らと東大俳句会を結成。28年には『ホトトギス』同人となり、秋櫻子、高野素十、阿波野青畝と並称されて四S時代を形成した。その後『ホトトギス』の写生偏重を批判し『馬酔木 (あしび) 』に拠った秋桜子と行をともにして新興俳句運動を推進。近代的素材の摂取、消化に努め多くの影響を後進に及ぼした。 48年、西東 (さいとう) 三鬼,秋元不死男,橋本多佳子らに擁されて『天狼』を創刊。物の根源にきびしく迫る態度を持した。句集『凍港』 (1932) 、『七曜』 (42) 、『和服』 (55) など。平成4年文化功労者。平成6年3月26日死去。92歳。(デジタル版 日本人名大辞典+Plus、ブリタニカ国際大百科事典等参照)

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