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川の辺りの小さな家 - ダーウィン カレッジ

ケンブリッジのカレッジは閉鎖的で、中がどうなっているか想像がつきにくい。内部はGoogle Mapsで見れないし、観光では外庭や一部施設しか覗けないし、Youtubeにカレッジの紹介動画があるにはあるが正直よくわからない。ということで、今回は写真で巡るダーウィン・カレッジ(Darwin College)のヴァーチャルツアーを試みた。

まずは、カレッジの歴史を少し紹介しよう。カレッジの母体となっているのが、19世紀後半に、チャールズ・ダーウィンの息子、ジョージ一家が移り住んだ「ニューナム・グレンジ」という家。1964年にダーウィン家からこの家を引き取って設立されたのがダーウィン・カレッジ。ケンブリッジ大学初の大学院生専用のカレッジ

時の王や貴族によって設立された古いカレッジと違い、ダーウィン家が住んでいた「家」がカレッジの母体となっているのが最大の特徴だと思う。チャペルや回廊といった厳かな建築がなく、まさしくアットホームな雰囲気となっている。周りの風景が19世紀当初からさほど変わらないので、タイムスリップをしたような気分を味わえる。興味がある方は、チャールズ・ダーウィンの孫娘、グウェン・ラヴェラがこの家で過ごした幼少期を記した「ダーウィン家の人々(邦題)」を読むと良い。

さて、まずは大雑把に全体像を捉えよう。下の地図の通り、道に沿ったL字の敷地がカレッジのほぼ全て。多くのカレッジが四角いレイアウトとなっている中で、ダーウィンはL字状であるために、人の流れが制限されていて、人とすれ違う機会が多い構造となっている

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では、早速ツアー開始ということで、道に面した外観をみてみよう。

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(画像:地図①地点からの撮影)

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(画像:地図②地点からの撮影。道に面している家が学生の住居)

どうだろう?ホグワーツからは程遠いことがよくわかるだろう。では次に川岸からのアングルをみてみよう。

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(画像:地図③地点からの撮影)

川岸の向こうからみるカレッジはなかなか幻想的だ。ダーウィン家が住んでいた頃から変わらない景色なんだろうと思うと、ワクワクする。

さっそく中に入ってみよう

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(画像:地図④地点からの撮影)

扉を抜けると、騒がしい道路の音が遠のき、静寂な空間が待ち受ける。手前の近代的なハグリッドの小屋は多目的室。奥のレンガの建物は、かつて穀物を保管していたOld Granary。今は生徒の住居となっている。

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(画像:地図④地点からの撮影)

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(画像:地図⑤地点からの撮影。川に浮いているのはカレッジ所有のパント)

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(画像:地図⑤地点からの撮影。冬季にテントを張ったため、芝生が枯れた。)

小さな庭だが、季節ごとに様々な花が咲いていて、勉強で疲れた心を癒してくれる。なお、他カレッジにみられる立入禁止の芝生エリアはなく、全てが学生に開放されているのも特徴。

続いて、建物の中に入ってみよう。

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(画像:廊下)

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(画像:読書室。写真はダーウィン家がここで撮影したもの)

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(画像:旧図書室。コロナ禍で学生の学習部屋になっている)

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(画像:食堂へ向かう階段。階段の下の板塀の奥が学生バー。現在は使用禁止)

このほか、コロナ禍で入室できず、撮影できなかったが、(本当に)小さなジムバー寛げる居間のような部屋(parlor)、セミナー室などがある。

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(画像:食堂)

これまたホグワーツの大食堂とは程遠い内観。コロナ禍ではさらに残念なレイアウトとなっている。なお、他カレッジでは、教授陣が食事をするための一段高くなったHigh tableがあるが、ダーウィンでは、大学院生と教授を対等と見做すために、High tableがなく、平場で学生と教授が共に食事をする

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(画像:地図⑥ Study centre)

学部生が多いカレッジでは、各学部に必要な教科書を一式揃えるために、それぞれ立派な図書館を持っている。一方ダーウインでは、大学院生の専門的ニーズに見合った図書館を作ることが困難であるほか、そもそも大学や学部の図書館が充実しているため、カレッジの図書館がなく、あくまで多少の本を揃えたStudy centreがあるだけだ。このStudy centreは川に面していて、なかなか景色が良い。

以上がカレッジの主要施設だ。他カレッジと比較した無いものリストでいうと、チャペル、サッカー場、テニスコート、バトミントンコート、プール、ボートハウス、大ホールといった施設はない上に、歴史と伝統がない

ただ、敷地が狭い分、徒歩3分以内に全てが揃っており、日常において不自由しない。また、翻せば古いしきたりに縛られることもなく、全体としてリベラルな雰囲気が漂う。例えば、2020年3月にロックダウンで授業がオンラインに移行する中で、学生をカレッジの敷地から強制退去させるところも一部にあったが、ダーウィンではそんなことはなかった。トップダウンでカレッジが学生に命令するのではなく、対等な者同士話し合うことで対応を決めたそうだ。

施設面では、コロナでなければ、他カレッジのスポーツ施設は簡単に借りられるので、さほど不自由しないだろう。そもそも、各々の研究に専念するという意味で、大学院生はダーウィンのような落ち着いた住まいのような雰囲気が合うのかもしれない。

番外編:川に面したカレッジであるからこそ、パント(ベネチアのゴンドラのおようなボート)やカヤックで川を楽しむこともできる(川に面していなくてもパント等を保有するカレッジは多いが、川までの距離があるため、あまり使われない)。

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(画像:Trinity と St John's 付近でのカヤック)

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