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パワーワード ”一眼レフ”

先日の記事「プロカメラマンのカメラに対するこだわり」(https://note.com/cam_fuyuki/n/n4bc4b1c406ae)で書いた職場での証明写真撮影でのこと。
撮影後、機材の片付けをしているところに1人の女性社員がボクのほうへやってきてこう言った。

「やっぱり一眼レフいいですね!私も一眼レフデビューしようと思ってるんですよ。」

この撮影で使ったカメラは「OLYMPUS OM-D E-M1」、つまりミラーレスカメラだったので、「もしかしてこのカメラを一眼レフだと誤解してるかなあ」と思った。
まあそういう誤解はよくあるので、いつもならばわざわざ訂正して話の腰を折るようなことはせずに聞き流すところだが、一眼レフの購入を検討しているようだったので見過ごすこともできず「一眼レフはもう時代遅れ、買うならミラーレス一択だよ。このカメラもミラーレスだし。」と言ったら彼女は驚いた顔をしていた。

前々から思っていたことだが、"一眼レフ"というのはかなり強烈なパワーワードだと思う。
どんなにカメラに疎い者でも、"一眼レフ"という言葉だけは知っており、「写真を突き詰めていけば最後に辿り着く究極のカメラが一眼レフ」という認識が出来上がっているのだ。

カメラを趣味としない一般人だから言葉だけが一人歩きしているのだろうとは思うが、それでもカメラ用語としての"一眼レフ"という名称が一般に知られているというのはそれはそれで驚きに値する。
普通、興味の無い分野であれば名称も何も知らないはず。例えば”プロ用カメラ”とか"本格的カメラ"とか呼ばれても良いはずなのに、なぜか"一眼レフ"という言葉は一般に広く通用する。

もしわざと"一眼レフ"のことを知らないふりをしたら、きっと周囲の人間から「えっ、"一眼レフ"って聞いたことねーの?!うそだろー!」と言われるに違いない。しかし"一眼レフ"とはどういうカメラかと質問すれば「えーっとまあ、すげーカメラのことだよ」というくらいしか返答できないはず。

これはもう、”一眼レフ”という名称が一般人にとってはブランドとして言葉だけが一人歩きしているのだ。詳しく知らないからその言葉でブランド化して見ている。
一方、写真やカメラを趣味としている者にとって、一眼レフと言っても機種はピンからキリまであることは知っているし、そもそも一眼レフの時代は既に終わっているという認識。

似たような言葉としては、"ベンツ"という言葉も似たような位置付けのパワーワードだろう。クルマに詳しくない者ほど「ベンツすげー!」と言うが、実際はベンツも車種はピンからキリまであるし、中古で良い個体を探せばむしろ長持ちするので結果的に安く済む。また、代を経るごとに運転フィールは軽くなり国産車に近くなってきて、もはやベンツらしさは過去のもの。

どんなにクルマに詳しくなくてもベンツという言葉を知らない者はいないだろうが、その実体を知っている者は逆に少ないというところも一眼レフと似ているなあと思う。

<"一眼レフ"と"ベンツ"、どちらもパワーワード>


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