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プロカメラマンのカメラに対するこだわり

世間一般的には、プロカメラマンが使うカメラというのは高画質で高級という漠然としたイメージがある。果たして本当にプロカメラマンは単純に高画質で高級なカメラという理由でカメラを選び使っているのだろうか?

ボクはいわゆる本物のプロカメラマンではない。だが、稀に職場上司や顧客の依頼で撮影を行うことがあるという意味では、業務カメラマンという範疇でプロカメラマン的な立場を経験することもある。そしてその立場で感じたカメラに対するこだわりというものが、趣味のプライベートな撮影で感じるこだわりと全く異なることに気付かされたので、ここに書いておこうと思う。

●撮影内容

ボクが業務で撮影するものは、顧客の製品カタログに掲載するための商品撮影、および入館証のための人物証明写真である。プロカメラマンというよりも、写真館的な役割と言える。そしてそれはボクの主業務ではなく、年に1度くらいの稀な業務でしかない。

●今回の撮影内容

今回、たまたま勤務先の入館証が全面的に刷新されることになり、自部門および協力会社の社員約30名の人物証明写真をボクが撮ることになった。2日に分けての撮影となる。
(※いくら人数が少なくても、休暇者などを考慮して必ず複数日でスケジュールする)

<証明写真を撮る>

入館証のための写真であるから、あらかじめ決められた様式があり、それに沿う形でデータを整形し提出する。つまり、画像ピクセルサイズ・氏名パネルの持ち位置・ファイル名のネーミングルールなどである。当然ながら、撮影したそのまま無調整のデータが使えるわけではなく、余裕を持ったサイズで撮ることになる。

なお、ライティングは証明写真ではいつもやっているストロボ2灯。そしてカメラは三脚に固定し、「ちょっとアゴ引いてください」などと姿勢を指示しながら横からレリーズボタンを押すスタイル。

●業務撮影カメラマンの立場になると

業務撮影カメラマンの立場になると、途端に失敗が怖くなる。
今回の場合、もし撮影後に失敗が発覚したとしても、社内撮影業務なので最悪もう一度呼び出して撮り直すことは可能だとは思うが、やはり相手がいる以上は撮り直しは申し訳ないと感じるし、協力会社の人物の撮り直しなら再度ご足労願うことになってしまう。
また構内は基本的に撮影禁止のため施設管理部門へ撮影許可申請を提出し、撮影許可腕章を付けて撮影するので、撮り直しとなればまた申請しなければならない。

実際、今回の撮影後にリストと照合していたら協力会社1名の写真が足りなかったので青ざめたが、先方に確認すると当日は都合がつかず自撮り対応ということだったのでホッと胸をなで下ろした。

以上のことから、カメラマンとしては失敗は何としても避けたいという立場に立たされる。

●今回の業務カメラマン立場での気付き

今回の撮影では、ボクが普段使っているメイン機材のSONYフルサイズカメラは投入しない。機材の盗難や紛失、あるいは破損などが起こらないとは思うが念のため。今回は高画素は必要無いことでもあるし、10年以上前に退役させたカメラ「OLYMPUS OM-D E-M1」で十分。これなら壊れようがどうしようがダメージは無い。

<OLYMPUS OM-D E-M1(これは購入直後の写真なのでまだキレイだが今はボロボロ)>

だがこのカメラを業務撮影として投入するのが初めてであったことから、趣味の撮影とは違う戸惑いもあった。そういう意味では業務カメラマンの立場で見た意外な発見があったと感じる。

①クリック無しのレリーズボタン
ボクは撮影時、「はい撮ります、3・2・1、カシャ!」というふうにカウントダウンして撮る。そうすると撮られるほうもシャッターのタイミングを合わせやすくなる。
ところが今回使用したカメラはレリーズボタンにクリックが無くフェザータッチ。「3・2・カシャ!」と暴発してしまうことが数回起こった。傍目にはわざとフェイントを入れたようにも見えて周囲から笑いが起こったが、撮影するほうとしては予想外なので「わざとじゃないんですよ」と冷や汗をかく。

通常、クリックの無いフェザータッチのレリーズボタンは、手ブレを軽減させるための仕様であり上級機に多い。ボクもそれが個人的にも好きなのだが、証明写真ではシャッターのタイミングを合わせづらく、クリック感はあったほうが良いと感じた。ちなみにボク所有機材の中では、「SONY α7CR」がクリック有り。

②ダブルスロットのメモリカード
趣味の撮影ではメモリカードスロットが2つあっても特段メリットを感じなかった。メモリエラーが発生することはほとんど無いのでメモリカード1枚で事足る。

ところが今回、しばらく使っていなかったカメラに装填されていたSDカードをそのまま使ったせいで接触不良だったのかも知れないが、1度だけカードエラーが発生して撮影結果が保存できなかった。もちろんカードを入れ直して撮り直したものの、それまで撮ってきたカットは大丈夫だろうかとかなり不安になった。

そして撮影後にPCにデータを入れた後も、「もしPCがクラッシュしてしまったら」と思うと、提出用データを送信するまでは怖くてメモリカードの中身を消すことができなかった。

普段は気にもしなかったダブルスロット、正直、これほど「あれば良かったのに」と思ったことは無かった。

③Tvダイヤルの必要性
撮影後に画像を確認してもらう際、拡大表示をしようとして何度も電子ダイヤルをカリカリと回したがなぜか思い通りにいかない。メモリカードの読み込み速度が遅かったのだろうか?
まあそれもなんとか終わり、次の人の撮影をしたところ、上部が暗く写って驚いた。設定を見るとシャッタースピードが1/500秒になっており、ストロボのシンクロスピードを上回っていたのである。原因は、先ほど拡大表示をした際に電子ダイヤルを回していたら勢い余ってシャッタースピードが変わってしまったためだった。このミスは今回3回起きたので頻度としては高い。やはりシャッタースピードは汎用の電子ダイヤルではなく、シャッタースピード専用のダイヤル(Tvダイヤル)としてしっかり設定値をX接点で固定できるほうが安心感がある。撮られるほうも写真嫌いも多いため、設定ミスで撮り直しとなると非常に申し訳ない。

<Tvダイヤル>

●改めてプロ仕様のカメラを見返すと

今の時代はソフトウェアでカスタマイズできる範囲が多いのでそうでもないが、フィルム時代はよくプロ仕様の特注カメラがあった。

例えば報道用に特化したプレスカメラではシャッターダイヤルが高くなっていたり、セルフタイマーが省略されていたり、ストロボ用のホットシューが増設されていたり、巻上げレバーが省略されていたりした。
そういう仕様はプレスカメラマンではない一般カメラマンには何のメリットも無く、ともすれば使いづらいところもある。「なぜにこんなカスタマイズがされているだろうか」と不思議に思ったものだが、今考えると、その立場で撮影するカメラマンが何より重んじているのが確実性だということなのだろう。

プロカメラマンがどれほど失敗を恐れているということが、今更ながらに気付かされた。

<プレス仕様のカメラ軍艦部>

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