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【名盤伝説】 ”渡辺香津美 / KYLYN LIVE” 教授との友情が生んだ屈指のクロスオーバーサウンド

お気に入りのミュージシャンとその作品を紹介しています。日本のフュージョン・ギタリストの帝王渡辺香津美と、坂本龍一とのユニットKYLYNプロジェクトの最終章、ライプ録音『KYKYN LIVE』(1979)です。

17歳の天才ジャズギタリストとしてキャリアをスタートした香津美でしたが、時代のクロスオーバーの流れでジャズの枠に囚われない音楽に関心を寄せていました。
そんな時に同じく若手で売り出し中の坂本龍一と出会います。香津美の1stアルバムで共演したのをきっかけに、二人の本格的なコラボレーションに拍車がかかります。

香津美が全国ツアーをすることとなり、どうせなら一緒に演ろうということでメンバーを募り、期間限定で”KYLYKプロジェクト”がスタートします。「KYLYN」とは「KAZUMI+Y+LYUICHI+Y+NAKAMA」つまり「渡辺香津美&坂本龍一と仲間達」という意味なのだそうです(「Y」は「&」の意味のスペイン語)。

確かに「KAZUMI」と「LYUICH」の文字がデザインされています。

ここで集まったのが、今から見れば奇跡のブッキング。渡辺香津美(g)、坂本龍一(key)、矢野顕子(key,vo)、向井滋春(tb)、清水靖晃(ts)、本多俊之(as,ss)、村上ポンタ秀一(ds)、小原礼(b)、ペッカー(perc)の夢軍団です。

1979年5月にアルバムKYLYNのレコーディングが完了するとすぐに、同じメンバー9人で全国15か所のツアーを敢行。このツアーの最中、六本木PIT INNにて同年6/15〜17の3日間のライブを収録。『KYLYN LIVE』11月25日には2枚組でリリースされたという、あっという間に組んで、あっという間にレコーディングされたのですね。

この『KYLYN LIVE』の収録曲は・・・
M1 「インナー・ウインド」はアルバム『Olive’s Step』から。イントロの印象的なアルペジオが期待感を掻き立てます。後半の香津美のギターと教授のムーグシンセとの掛け合いはライブならではの聴かせどころです。

M2「スナップ・ドラゴン」は高速サンバ調のテンポの良い曲。テーマを弾く香津美のギターの歪みは、完全にジャズの枠を超えています。清水のテナーソロもいかしてます。

M3「ミルキーシェイド」は一転、向井のtbをフューチャーしたスローでブルージーなミディアムバラード。

M4「マイルストーン」はマイルス・デイビスのカバー。オリジナルを超えた完全カバーです。

M5「ザ・リバー・マスト・フロー」は矢野Voで、熱唱ボーカリストのジノ・ヴァネリのカバー。独特な矢野の節まわしで、こちらも完全にオリジナルにを超えています。

M6「在広東少年」は後のYMOに繋がるアレンジ。音を聞いているだけでも、ニコニコと笑いながら歌う矢野の姿が浮かびます。

M7「アイル・ビー・ゼア」も『KYLYN』収録。全員で合唱する「アイル・ビー・ゼア♪」でライブもフィナレーに。

M8「ブラックストーン」は香津美のアルバム『Lonsome Cat』収録。ポンタのシンセドラムがYMOを感じます。ライブアレンジならではソロ回しは、さすが強者揃いのセッションだけに迫力満点です。

M9「ウォーク・テイル」は、いかにものアンコール曲。ウェザー・リポートジョー・ザビヌルのカバー。ポップなナンバーで約1時間半の夢のライブは終了です。最後FOしない完全版のリリースを期待したいところです。

貴重なライブ映像がありました。皆さんお若い!

リアルタイムで聴いていた時は、香津美と教授の関係性など全く知らずに聴いていました。記事にするために改めて調べてみると、何故YMOのツアーに香津美が参加したのかとか、そもそもKYLYNの謂れなど、知らないままで過ごしていたかもしれません。よい機会になりました。

日本のフュージョン前夜、クロスオーバー時代の屈指のライブ盤です。

[追記] 2024.04.01
渡辺香津美が2月下旬に自宅で倒れて、今年の活動を全て中止して治療に専念するという衝撃的なニュースが伝わりました。その内容についての動画ですが、その中で香津美の略歴を紹介していて、KYLYNセッションについても述べられているので、ここにリンクを貼っておきます。一命は取り留めましたが、後遺症が残るかもしれないという重大事態。兎にも角にも回復を願い、お見舞い申し上げます。


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