見出し画像

【名盤伝説】 ” The Manhattan Transfer / Mecca For Moderns” ジャズ・コーラス・グループがポップに変身!モダンサウンドの名盤。

MASTER PIECE マンハッタン・トランスファーの鬼才ジェイ・グレイドンがプロデュースした2作目『Mecca For Moderns (邦題: モダンパラダイス)』(1981)です。

1973年にティム・ハウザーをリーダーとして、アラン・ポールジャニス・シーゲルローレル・マッセーの4人で活動を再開します。1978年に交通事故で負傷したローレルに代わり1979年にシェリル・ベンティーンが加入。同年ジェイ・グレイドンをプロデューサーとして迎えてアルバム『Extensions』をリリースします。ウェザー・リポートの名曲「バードランド」をシンセベースを多用する大胆なアレンジでカバー。ジェイがD.フォスターと組んだAIRPLAYに収録した「Nothin’ You Can Do About It」をジャズアレンジで、そしてテレビ番組「トワイライト・ゾーン」のテーマ曲を「Twilight Zone~Twilight Tone」としてロックアレンジでカバーするなど、ジャズ・コーラスのイメージをこれでもかとジェイの色に染め抜いたアルバムとして大変な話題になりました。

もちろん4人の歌唱力と巧みなコーラス・ワークの素晴らしさは言うまでもありません。4者4様のキャラクターも魅力。ジャズの枠にとどまらず、エンタテイメントとしての可能性に着目した戦略は大成功だったといえます。

一部のジャズ・ファンが離れた一方で、広くポピュラー音楽ファンにアピールし、ジェイの起用でロック・ファンにまで人気は拡大。ジャズの枠を超えたエンタテイメント性豊かなコーラス・グループとして受け入れられたといえます。その年には収録曲「バードランド」が第22回グラミー賞で2部門受賞します。

そんなジェイとのコラボ第二作がこの『モダンパラダイス』です。

ジェイ入魂のプロデュース・ワーク。参加ミュージシャンも東西混成チームでめちゃ豪華です。

Bass – Abraham Laboriel (tracks: A1 to A5, B1 to B3)
Drums – Mike Baird (tracks: A2), Steve Gadd (tracks: A1, A3 to A5, B1 to B3)
Guitar – Al Viola (tracks: B1), Dean Parks (tracks: A2, B3), Jay Graydon (tracks: A1, A2 to A4, B3), Steve Lukather (tracks: A1, A4, A5)
Keyboards, Synthesizer – David Foster (tracks: A5)
Lyricon, Saxophone – Tom Scott (tracks: A3)
Organ, Synthesizer – Greg Mathieson (tracks: A3)
Percussion – Alex Acuna* (tracks: A3)
Piano – David Foster (tracks: A2, A4, A5), Milcho Leviev (tracks: B2, B3), Yaron Gershovsky (tracks: B1, B3)
Piano, Keyboards – Victor Feldman (tracks: A1)
Saxophone – Don Roberts (tracks: A2), Richie Cole (tracks: B2)
Synthesizer – Jay Graydon (tracks: A1, A3), Mike Boddicker* (tracks: A4, B3), Steve George (tracks: B3)
Trumpet – Jerry Hey (tracks: A2)

収録曲
M1 On The Boulevard
M2 Boy From New York City
M3 (Wanted) Dead Or Alive
M4 Spies In The Night
M5 Smile Again
M6 Until I Met You (Corner Pocket)
M7 (The Word Of) Confirmation
M8 Kafka
M9 A Nightingale Sang In Berkeley Square 

M1からいきなりクライマックス。ガッドの鋭いリズムパターンに乗せて縦横無尽に織りなすコーラス・ワーク。いかにもジェイというギターソロもイカしてます。

M2はジャズ・コーラス・グループらしい展開の明るく楽しいポップ・ソング。今でもマントラの代表曲の一つとして人気です。

M4は前作に収録された「トワイライト・ゾーン」の続編のような曲。映画007のテーマをモチーフにしてドラマ仕立てで展開していきます。エンタメ性豊かな新生マントラテイスト全開の快作です。ジェイのアレンジ・アイデアに脱帽です。

M5は箸休めの一曲。作曲はビル・チャンプリン。いかにものデビッド・フォスター風味のストリングス・アレンジに和みます。

M6-M7とジャズアレンジの曲が続いた後、M8がこのアルバムで一番の聞きどころの登場です。ガッドとラボリエルの超絶リズム・バトルが全編で聴ける緊張感たっぷりの名曲。全てスキャットで通すコーラス・グループならではの構成。ジェイによるマントラ・ワールドここに完成!!といった曲のように思います。

そしてアルバムのラストを締めくくるM9は、唯一のスタンダードのカバー(1939年作品)。アカペラで聴かせるロマンティックで優しい名曲。基本はロック畑のジェイのセンスの良さを垣間見る思いです。

このアルバムも大ヒットとなり、第23回グラミー賞で3部門受賞。ポップスとジャズの両部門を制覇した史上初のグループになりました。

続くアルバム『Bodies and Souls (邦題: アメリカン・ポップ』(1983)ではプロデューサーにリチャード・ルドルフを迎え、更にポピュラー層へのアプローチを試みますが、前作の勢いの凄さが影響してか、やや地味な印象はぬぐい切りません。個人的には、この世界観も好きです。

これ以降のアルバムは、通常モードに戻ります。この3作で確立した人気は、これ以降のマントラ本来のジャズ風味のコーラス・ワークも十分に許容範囲ということで、人気の定着したコーラス・グループとして活動が続きます。

グループの創始者のティムが2014年に72歳で亡くなってしまいます。同年トリスト・カーレスが加入してグループは継続しています。声質が変わり、多少のニュアンスは変わりましたが、マントラの素敵なショーは、まだまだ続きます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?