マガジンのカバー画像

そんな日もある サッカー徒然草

3
運営しているクリエイター

記事一覧

そんな日もある

そんな日もある

大敗した日はひたすら惨めな気持ちになるものだ。
スタジアムから駅までの帰り道はいつもより長くて、平塚からの東海道線はさらに長い。

なぜわざわざそんな遠くまで観に行くのか?と聞かれることがある。なぜわざわざ弱いチームを、と。

駅前の崎陽軒でシュウマイ弁当を買う。晴れている日はスタジアムまでゆっくり歩く。小さな商店街はすぐに終わって、国道1号線を渡ればもうあと少し。いつもだいたい試合開始の1時間前

もっとみる
そんな日もある

そんな日もある

新橋で東海道線のグリーン車に乗り込む。そして、中公文庫で出たばかりの、小島信夫の本を後ろのほうから読む。

江藤淳の自死をめぐるエピソードから始まるこのテキストは語り起こしで、「そして、小説は生き延びる」というタイトルだ。小島信夫で、しかも語り下ろしなので、話はあれこれ変わってまとまりはないのだけれど、文節ごとにいろいろなことを考えさせられる語りがおもしろくて、2回読み返す。例えば、「一つの小説で

もっとみる
そんな日もある

そんな日もある

生きていることしか語っていなかった生者もやがて死者になっていく。そして、彼らの言葉だけが残される。死んだ者たちの言葉。かつて生きていた者たちの言葉。当たり前のことなのかもしれないけれど、本を読むことは死者たちの言葉、やがて死者となる者たちの言葉を読むことなのかもしれない。そんなことを考える。

冒頭の、「生きている者は生きていることしか語らない」と言ったのは埴谷雄高だった(と思う)。読んだのは中学

もっとみる