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言葉フェチとくらくらする言葉たち

noteで好きな書き手がエッセイを更新していたのでわーいと読んでみた。その人は主に自分の容姿が良くないことにまつわる話を書いているかたで、私はとてもファンだった。

数日前に読んだとき、(その人は肌の色が白いらしいのだけれど)エッセイの中で「こちとら七難隠したくらいじゃどうにもならないブスなのだ。」と書いてあった。くらくらした。

七難隠したくらいじゃとは、もちろん「色の白いは七難隠す」ということわざ由来で、見た目に難点があっても色の白さはそれを補って余りあるというような意味だ。洒落た言い回しにくらくらしたし、その、「こちとら七難隠したくらいじゃどうにもならないブスなのだ。」という言葉の知性と破壊力にうっとりした。

こういう、響きの良さと奥行きと情景が浮かぶ言葉を聞くたびにくらくらするしうっとりしてしまう。

「ネックレスまで付けると装飾過多になるんです」ーーどきどき。
「全ての季節が遺書だった」ーーきゅん。
「君の『結婚がしたい材料』にはしないで」ーーうっとり。
「だって母の体の一部だったから」ーーくらくら

「今日は誰にも愛されたかった」

ーー自分が真似できない言葉を見つけると私はいつもはっとし、くらくらし、ぽうっとしてしまう。

この間なんかも、恋仲になりたい女の子とドライブに行った先でくらくらした。カーシェアを利用し自然豊かな場所に行き、ずんずずんと森の中に入る女の子に恋愛感情的なきゅんをしたあとで車に戻った。帰宅するためにしばらく車を走らせていると、助手席にいくつか植物の種らしきものがあった。

カーシェアなので清潔さは保たないといけない。ということで両脇を森に囲まれた細い道で信号待ちをしたときに外に出すことにしたのだけれど、女の子は「芽が生えるかなぁ」と言って外に出した。

虫がいるかも知れない森を歩きたいと言った彼女にまず恋心を抱いたのに、「芽が生えるかなぁ」でよりくらくらした。私にそのセリフは出てこない。くらくら、くらくら。目眩がするほどくらくらした。

ーーそうして日常的にくらくらした結果、私は病院に行った。ちょっとここ最近、めまいがすごすぎるのだ。確実に何らかの病気だった。

一通り検査をしたあと、異常の見られない私に担当の女性医師は「ストレスでしょうね」と言った。まぁそうだとは思っていた。

仕事や人間関係などのあれこれでくらくらする機会が多すぎた。どちらもすぐには解決しそうにないから、うっとりする言葉でくらくらするのだけは気をつけようと心に決めた。

風邪が流行っているから念のため、と、その九州は宮崎から来たという医師がこう続ける。

「念のため、手をきちんとみごみごしてくださいね」

ーー手をきちんとみごみごしてくださいね。くらくら。

倒れそうなほど目眩がした。

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