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秘技!!圧の強い上司との仕事をモザイクの仮装世界で乗り切った日々のこと。

その人はパワハラがすぎて職場を去ったと聞いた。真偽のほどはわからないけど、やっぱりそうかとも思う。

私がその人の部下として仕事をしたのは
20代後半だった。

仕事が面白くてたまらない一方で
ストレスの発散の仕方がわからなくて
あれこれ悩んでいた時期でもあった。

職場における上司という存在は
取り分け、若いうちは重要な気がする。
社内の人脈が薄かったり
仕事の裁量が狭かったり
上司に依存する状況が多いからかもしれない。

その上司は少し変わっていた。
博学で苦労人で愛想笑いが特徴的で
偉い人のために身を粉にして働き
でも弱い者には強い態度をとった。

私は悩み、そしてある解決法を実践していた。
誰にも知られずに。
その名も「妄想!!苦手な上司との社内恋愛!」作戦だ。

仮にその人をAさんと呼ぶ。
私はAさんと社内恋愛を秘密にしている仲である(お互いシングルという設定。Aさんは家族がいる)という妄想を常時して、仕事の時間を妄想しながら楽しく過ごすのだ。

国内ならびに国外出張はまるでデート!
残業もデート!
毎日デート三昧!

Aさんのちょっとしたよいところを1000倍ズームくらいにして、逆にいやだなぁと思うところは1000倍に希釈した。
するとあら不思議!

なかなかのいい恋愛対象になる(ほんとかな)、と妄想する(妄想は自由だ!)。

ちょっとしたよいところとは。
作業中は静か
シャツの袖口の長さが絶妙
ブラックユーモアが秀逸
残業中はおねむで半目になってる
自分のあだ名としてかなりキュートな呼び名を名乗ってる

妄想生活は地味に楽しかった。

顔は100%モザイク。
声とか動作もデフォルメされてて残っているのは仕事の設定だけ。
仮想現実の先駆けかもしれない。

手厳しい仕打ちに耐えながら私はこの妄想社内恋愛生活を続けた。
私が他にやりたい仕事ができて異動するまで。

つらい時期を乗り越えたのはこの作戦のおかげだ。

Aさんにぐちぐち嫌味を言われているときは
妄想上口説かれていることになっていたし

Aさんが仕事を無茶振りしてきたときは
妄想上甘えん坊モードでおねだりされていたし

Aさんの尻拭いをしているときは
妄想上楽しいデートをしていたし

頭の中だけで、他人に一切働きかけず悩みを緩和できると知った初めての出来事だった。
2人分生きてるのでエネルギーを消耗するのであまりおおすめできないのが難点だ。

いい思い出だ。

私が異動したあとに残された先輩はその後もネチネチと嫌がらせを受けたとまた別の風の便りで聞いた。

会社を辞めてからもAさんに関する便りは届いた。みんな心のどこかでAさんを心配していたのだろうと思う。いい人ばかりの職場だったからなあ。

それか、私の妄想は実は現実になっちゃっていて、みんな私にわざわざ知らせてくれたのか!?

自分が棘だらけで痛くて近くに誰もいなくても
そっと遠くから誰かが気にかけてくれているかもしれない
、そう思う。

妄想作戦もよかったけど
私も向き合うべきだったのだろうか。
とはいっても、自分の心の方が大事だったから妄想作戦で愉快に過ごすのが精一杯だった。

余計なお世話だろうけど。
何かできることがあったのなら教えて!
妄想の中の私がAさんに語りかけた。

どうかいまは平和に包まれていますように。

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